宮尾登美子の「朱夏」を読んで
宮尾登美子の「朱夏(しゅか)」を読み終わって、心にずっしりとした何かが座った。
新潮文庫の解説にはこうある。
「渡満、敗戦、引揚げ。死を覚悟した五百三十日の苛烈な旅。
宮尾登美子の原点となった、昭和21年、満州で見た地獄を描く。
『櫂』『春燈』から『朱夏』へ。さらに『仁淀川』へと続く、自伝的長編の第三幕。
果してまだ、日本はあるのだろうか……?同郷の土佐から入植した開拓団の子弟教育にあたる夫、生後まもない娘と共に、満州へ渡った綾子は十八歳。わずか数カ月後、この地で敗戦を迎えることになろうとは。昨日までの人間観・価値観は崩れ去り、一瞬にして暗転する運命、しのび寄る厳寒。苛酷無比の五百三十日を熟成の筆で描き切る。
『櫂』『春燈』から『仁淀川』へと連らなる宮尾文学の一大高峰。」(ここより)
この作品は文庫で700頁にも及ぶ長編。その中に1年半に及ぶ満州からの逃避行が克明に描かれており、読んでいて息苦しくなるほど。
まさにこの作品は体験者でなければ書けない自伝。しかも17歳という若さで赤ん坊を抱えての体験。
巻末の解説にこんな言葉もある。
「『朱夏』は宮尾氏の帰還から数えて34年の歳月を経て書き始められた。宮尾氏は随筆の中で、満州体験は自分の小説の原点であり、この体験を娘に書き残しておいてやろうと決心したのが小説を書く始まりであった、と叙している。」
この小説(体験)の中には先に逃げた関東軍のことは出て来ない。あくまで現地のその時の目線であるため、そもそもその情報が無いのである。情報が何も無い中での地獄。
この小説には数々のエピソードが出てくる。ある意味、日々の出来事の羅列。しかし読んでいて飽きが来ない。どれも胸に迫ってくる。これは実体験から来るリアリティのせいかも知れない。
満州開拓団の逃避行については藤原ていの「流れる星は生きている」が有名で自分も読んだ。またその娘さんの「新田次郎/藤原ていの娘・藤原咲子氏の数奇な人生」(ここ)という記事も昔に書いた。
もう戦争はこりごり。と思っても、今なお世界では日常的に戦争をしている国がある。そしてTVでは、まさに満州からの引き揚げ者と同じように、難民として飢餓に苦しんでいる人たちの姿が流れている。何という世界か・・・!
相変わらず毎日小説ばかり読んでいる。読書リストを付け始めて7年余。800冊近くになった。そして相変わらず、ひとりの作家について読み始めると、つい「全部」読んでみたくなる。
最近は女流作家に凝っている。1年ほど前に高田郁に凝ったが、5月に自分の大好きなNHKのドラマ「蔵」(ここ)の録画を再度見たのをきっかけに、オリジナルの小説を読んでみる気になり、宮尾登美子の「蔵」を読んだ。
これが結構面白かったので、つい他の作品も読んでみたくなり、また集めてしまった。宮尾作品を15冊ほど集めて今読んでいる最中だが、さすがに宮尾登美子の作品は多いため、とても全部は無理だ。
それに昔読んだことを思い出して、山崎豊子の本も10数冊集めてしまった。これも続いて読んでみようかと思っている。
相変わらず、小説三昧の日々ではある。
●メモ:カウント~1460万
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コメント
宮尾登美子作品には、エムズさんと同学年の私も一時期嵌ったことがありました。はい、子供を連れての満州からの逃避行には信じられないような話に驚き!ました。1年半もでしたかね?お風呂に入れなかったとか...人間どんな風にでも生きられる!と強く感じました。仁淀川に行ってきました。高知城まで歩いて子供を連れて行き昼寝をしていた~真似してみようと思いましたが、現在では禁止の張り紙がありました。
「天涯の花」が好きです。キレンゲショウマにも惹かれましたね。。。
【エムズの片割れより】
宮尾登美子ファンが居られるとは嬉しいですね。
そうですか。「天涯の花」が好きですか。
高知までは行けないが、自分も早速読んでみま~す。
(追)
「天涯の花」!一気に読みました。素晴らしい作品ですね。
自伝物とは違う系列で、「蔵」と並ぶ名作ですね。
それが既に廃刊となっているのは、非常に残念です。
投稿: kimihamu | 2025年7月 9日 (水) 18:53
ま!早速に天蓋の花を読んでいただき、気に入って下さって嬉しい限りです。そうなんですよね、それまで読んでいた高知弁のお話しとは違ってこういう小説も書くのだと思いました。
図々しくも、もう一つお気に入りは「柝のね」きの音です。エムズさんのお気に入りはございましたか??
【エムズの片割れより】
今は茶道が舞台の「松風の家」を読み始めました。
「きのね」も買ってありますので次に読んでみま~す。
歌舞伎の世界ですね。
(追:2025/08/04)
「きのね」読みました。
面白いですね。ツツーと読みました。
十一代目市川團十郎の妻「光乃さん」の生涯。
宮尾作品の中でも断トツに面白い!
買い集めた作品(本)で、残るは3つ。
大事に読みま~す。
投稿: kimihamu | 2025年7月21日 (月) 18:56
久し振りに立ち寄りましたら、まぁまぁ「きのね」も完読されたそうで素晴らしいです!
実は私は、ちょっと忘れている所もありますので読み直してみます(^-^)スミマセン。
たまには女流作家もよろかしかったでしょうか?
エムズさんの、読書数にはもう頭が下がります。喜寿の同学年女子ですが、また時々寄らせていただきます。私は音楽でこちらのサイトに出会ったのですが...今後ともよろしくお願いたします♪
【エムズの片割れより】
同じ作家に”はまった”同志が居るのは嬉しいですね。
また、持っていない本を集めてしまいました。
どうやら、ほとんどの作品を読んでしまいそうで~す。
投稿: kimihamu | 2025年8月 5日 (火) 19:39