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2024年6月11日 (火)

船橋聖一の「絵島生島」を読む~手仕事屋きち兵衛の「風の桜衣」

船橋聖一の「絵島生島」を読んでしまった。
言うまでも無く、江戸時代の「絵島生島事件」を扱った歴史小説。
自分がこの話に興味を持ったのは、手仕事屋きち兵衛さんの「風の桜衣」という歌を聞いてから。
改めてWAVで聞いてみよう。

<手仕事屋きち兵衛の「風の桜衣(はなごろも)」>

「風の桜衣(はなごろも)」
   作詞/作曲:手仕事屋きち兵衛

山里を染めて咲く 小彼岸桜(こひがんざくら)
風を呼び 風に乗り 空に流れ行く
かなしい程に 澄んだ青空の中
はじけ散る 桜吹雪(はなふぶき) 春景色
いつ誰が名付けたか 高遠桜嵐(たかとうはなあらし)

山里の人は言う あれはあの女(ひと)の
切なさと哀しみが 染め上げたのだと
道理(みち)を忘れた 恋におぼれた罪と
裁かれて落とされて 流された
あの女(ひと)のはかなさを 飾る桜衣(はなごろも)

山里に流された その女(ひと)は絵島
美しい女(ひと)ゆえの 恋の濡れ衣
女盛りの花を 散らした絵島
泣き濡れて あきらめて手を合わす
山里の赤い桜(はな) 絵島の物語り
山里の赤い桜(はな) 絵島の物語り

この歌にある「美しい女(ひと)ゆえの 恋の濡れ衣」という歌詞。
この「濡れ衣」という言葉から、この事件に興味を持った。

先日、松本清張の「大奥婦女記」という本を読んでいたら「絵島・生島」という短編があった。それを読んでから、またこの事件の興味に火が240611esimaikusima 点いた。しかしwikiを見ても、この事件を扱った小説が少ない。唯一見付かったのが船橋聖一の「絵島生島」という小説。
この小説は1953年9月1日から1954年11月17日まで、東京新聞に連載されたという。1953年というと昭和28年。
確かに古い。だから今ではなかなか手に入らない。平成19年に新潮文庫で復刊されたが、中古本もなかなか無いようだ。
しかし読んでみると、歴史小説だけあって、古さは感じない。
内容的には、清張の小説はこの船橋聖一の小説のエキスを書いた感じ。

それにしてもこの小説、月光院(家継の生母)と側用人・間部詮房、そして絵島と生島のドロドロした愛欲場面が多い。そして宮路というスパイの暗躍。あまり天英院(家宣の正室)の陰謀の場面は少ない。
宮路の絵島を陥れるシーンは、どうもキライなので読み飛ばした。(昔は良く見た韓ドラも、イジワルの場面がきらいになって、今は全く見なくなった)
この事件で捕まった大奥は百数十名というから凄まじい。wikiによると関係者1400名が処罰されたというから、まさに粛正事件。

この小説で、船橋聖一は各所で昔の史料を引用している。さすがに、よく調べて書いたのだと思う。
もちろん歴史上の事件は、人により解釈が異なる。陰謀論と色々な史料・・・

船橋聖一の解釈として?この事件に関し、こう書いている。
「 世の中にかかる習ひはあるものと
  ゆるす心の果てぞかなしき

世の中の人のすることを、自分もしてみただけのことで、このようなひどい目にあったのも、もともと心の油断であろうがと詠んだ絵島が一首の歌には、よく端的に、その心情がうつされているように思われる。
奥女中の芝居見物が御法度であることは、誰知らぬものはなかったにせよ、当時宿下りの御守殿が、たとえ表人風に身をやつすとは云え、誰の目にもそれとあらわにわかるような態度で、半ば公然と芝居小屋に出入することは、一種の慣習として元緑正徳の一般的な風俗図絵でもあった。偶々、絵島もそのヒソミに倣い、しかも深入りして、生島新五郎と夫婦の契りを結んだのではあるが、彼女にすれば、当時流行の色子買いでも、おやま狂いでもなく、奥女中大年寄の地位をかなぐり捨てても、恋しい男の胸に飛びこんで行こうと云う一筋の熱情だったのである。それが今、大奥からの追放となり、縄目の恥にさらされ、危く死一等をまねかれたとは云え、すんでのことにこの首が飛ぼうとさえしたのだ、と思うと、絵島はこんな理不尽な御政道に心から服する気になれなかった。やはり、世人の噂ずる如く、間部詮房による側用人政治が、腐敗の極に達していて、これを粛正するための前提に、自分らが槍玉に上がったと考えて、あやまりはないだろう。」(新潮文庫「絵島生島(下)p400より)

権力者どおしの陰謀。
さてさて、次の首相は誰になるのだろう?

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