「早回し全歴史-宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる」を読む
デイヴィッド・ベイカー(著)、御立英史(翻訳)の「早回し全歴史-宇宙誕生から今の世界まで一気にわかる」という本を流し読みしてみた。
自分としては、ネット広告に反応するのはとても珍しい。先日、タブレットと遊んでいて、この本の広告が出て来たとき、つい反応してしまった。
本の広告にこうある。
「★話題沸騰! 発売即、大重版! ★「ビッグバンからAI時代」まで138億年を一気読み! ★さらに、「現代から宇宙の終わり」まで未来の予測可能なシナリオも! ★17か国で続々刊行、世界的ベストセラー! ★「生命とは何か?」「人類とは何か?」「世界とは何か?」を巨視的な視点から理解できる、全人類必読の書!」
本屋で実物を見て買ったのでは無く、Netで購入したので、「文字の羅列ではイヤだな」と思っていたが、送られて来た本を開いて一安心。
事実を淡々と記述する内容は、無味乾燥の教科書に似ているが、章のタイトルの多用と重要単語の太文字の多用で、読み易い。
こんな書き出しで始まる。
「本書は、宇宙に存在するすべてのものを貫く歴史的変化の連続性をたどる試みである。 ビッグバンに始まり、単純な水素ガスの集積から生命が生まれ、進化し、複雑な人間社会が構成されて今日に至るまでの、138億年のストーリーを語る試みである。
歴史を知ることで、私たちはただ一度の人生ではなく、多くの人生を生きることができる。・・・」
この「歴史を知ることで、私たちはただ一度の人生ではなく、多くの人生を生きることができる。」という言葉が自分は好き。
内容的には、NHKの色々なドキュメンタリー番組で見ていた内容と似ていたので、それほど違和感は無かった。
そして宇宙はこうして始まる。
「138億年前、小さく、熱く、白い点が現れた。肉眼ではもちろんのこと、現代のもっとも強力な顕微鏡でも見ることができない小さな点だった。
そのとき、はじめて時空連続体と、その中に閉じ込められた超高温で超高密度のエネルギーが出現した。その外には何もなかった。宇宙にあるすべてのものを形づくるすべての要素がその中にあった。それらの要素はその後の数十億年間、粘土の塊が自在に形を変えるように、何度も姿を変えながら無数のものを形づくった。
歴史の絶対的な始まりは、ビッグバンから10のマイナス43乗秒が経過したときである。」
絶対温度で142ノリニオン(10の30乗)ケルビンである。
「ビッグバンのほんのわずかのちに(10のマイナス35乗秒後に)宇宙はグレープフルーツほどの大きさに膨張していた。肉眼でも見えるサイズだ。温度は11.3オクティリオン(10の27乗)ケルビン以下にまで冷えた。「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」の四つの働きに一貫性が生まれた。
このとき以来、宇宙は物理の諸法則に支配されている。」
「ビッグバンの10のマイナス32乗秒後、宇宙は1メートルほどの大きさになり、宇宙の建設における力仕事か終わった。宇宙のメカニズムが動きはじめ、時を刻みはじめた。
ここまでの最初の一瞬で、私たちの運命は全宇宙の構造に刻み込まれた。ここから先が「歴史」である。」
「次の10秒間で宇宙は10光年の大きさになった。温度は50億ケルビンまで下がりつづけ、純粋なエネルギーが凝集して生まれた小さな粒子が渦を巻いて飛び交った。」
「次の3分間宇宙はさらに膨張を続けて1000光年を超える大きさになったが、情け容赦のない放射線が、そのすみずみにまで満ちていた。」
「宇宙はその後、何万年ものあいだ膨張と冷却を続けた。
ビッグバンから38万年経過したとき、宇宙のサイズは1000万光年を超え、温度は3000ケルビンまで冷えていた。」
「現在、私たちが知っている宇宙は930億光年の規模まで広がっている。宇宙が誕生してから138億年しか経っていないのだから、光がまだ地球まで届いていないほど遠くに、何十億年も前に生まれた無数の星や銀河があるということになる。地球から見ることのできる宇宙は「観測可能な宇宙」と呼ばれるが、その向こうに、私たちが見ることのできない多くのものがあるのだ。」
もっとも興味が引かれたのは、「ビッグバンの前」何があったのか?
それは人間は理解出来ないという。
「人間の脳はビッグバンを理解できない
宇宙はどのようにして始まったのかという実存的な問いを考えはじめると頭が痛くなるが、それは無理もない。私たち人間の脳や知覚は、直感的に理解できる物理法則が支配するようになってから以後の宇宙の中で進化してきたので、それ以前の事象を了解するのが難しいのだ。
人間の脳は、種として生き残るのに必要な範囲で、世界を本能的に理解できるように進化してきた。物は高い所から低い所に落ちる。原因があって結果がある。卵がニワトリになり、ニワトリが卵を産む。そういうことなら私たちは直感的に理解できるが。そんな世界に収まらない事象については、時問をかけて考えなければ理解できない。」
「「ビッグバン以前」には何があったのか?
ビッグバン以前に時間は存在しなかった。したがって「ビッグバン以前」というものはない。ビッグバンの前にも何かがあったという考えは、子どもが父親と母親を引き合わせたと考えるようなもので、論理的に不可能である。
ビッグバン以前には宇宙も存在しなかった。ビッグバン以前には、何かが起こる空間がなかった。ビッグバン後、宇宙は顕微鏡でも見えないほど小さなサイズから現在の930億光年の大きさにまで拡大した(さらに拡大を続けている)。
空間はビッグバン後に生まれたものだ。ビッグバン以前は、何かが動けるような空間はなく、何らかの変化が生じるような場もなかった。変化がなければ何も起こらず、歴史もない。時間によって計られる意味あるものは何も存在しない。
要するに、ビッグバン以前に空間はなく、変化もなく、動いたり形を変えたりするものもなかった。
もしビッグバン以前に何かが存在していたとすれば、それは人間にとっても、人間が知っている宇宙の基本法則にとっても、理解する手がかりさえない異質なふるまいをする何かであるはずだ。そこには、原因があって結果があるという順序も、過去・現在・未来という時の流れもない。
よって、私たちの歴史はビッグバンから始まったのである。」(「早回し全歴史」p27~42)
なるほど・・・・
さて話は変わるが、こんな記事もある。
「「火山大噴火」で人口が激減する」
DNAの変化を調べると、人類の遺伝的多様性は第二次大移動以前に劇的に縮小していることがうかがえる。考えられる理由の一つは7万4000年前にスマトラ島(現在のインドネシア)のトバ火山で起こった超巨大噴火である。当時火山があった場所は、いまはカルデラ湖になっている。
トバ火山の爆発は、広島型原爆なら150万発分の威力、あるいは、いま世界が保有する核兵器の総和の少なくとも3倍の威力があった。この噴火は、未曾有の量の岩石を空に吹き上げ、瓦礫とマグマを大陸規模で撒き散らした。
南アジアと東アジアを覆い尽くした火山灰の層は、平均15センチもの厚さになった。火山灰はインド、アラブ、さらに東アフリカまで降り積もった。大量の火山灰が大気中に放出され、すでに氷河期に突入していたこの時期、空は暗くなり、太陽光が遮られた。
その結果、地球全体が10年間にわたって冬になった可能性があり、人口は1万人まで減少したかもしれない。3000人程度にまで減っていた可能性もある。
ひとことで言えば、現在の人類は、わずか数万年前以後、せいぜい1万人程度の人びとから増え広がっていったということである。」(「早回し全歴史」p186)
1万人から現在の80億人に増えたというのはオドロキ・・・
そして狩猟世界ではこんなことも・・・
「「暴力」が蔓延する日常
狩猟採集時代には、それ以後のどの時代よりも暴力が日常的に広がっていた。旧石器時代の遺骨を調査したところ、意図的な暴力が死因と考えられる痕跡がある骨の割合から、“殺人率”はおよそ10%と判明した。そのような死体はほとんど男のものであった。この殺人率はどんな近代国家より高い。それどころか過去5000年のどの社会よりも高い。」
「ケガや病気はしばしば死に直結した。食料の乏しい地域に入ってしまったら飢餓の危険にさらされた。骨が折れたり、傷口が化膿したり、虫歯になっただけでも死に至ることがあった。乳幼児の死亡率も高く、5歳までに50%の子どもが死んだ。さらに、狩猟採集民は食料を確保するために移動しつづけなければならなかったので、嬰児殺しの割合も約25%と高かった。」(「早回し全歴史」p194)
ずいぶんと、長々と転記してきた。まあこれらが、この本をめくって、自分が「ヘエ~」と思った箇所。
それにしても、あらゆる所に、時の人口が記載されているが、よくも算出したものだ。
ともあれ、まだ松本清張に凝っている(現在86冊も文庫を買い込んでしまった)この頃だが、ちょっと浮気して読んだ本ではあった。
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