「天と地と」の小説と映画の違い
海音寺潮五郎の小説「天と地と」を面白く読んだ。ついでに、昔WOWOWで録っておいた角川映画の「天と地と」も見てみた。そして、そのストーリーの違いにビックリ。
wikiでは小説も映画も同じ「天と地と」の項目に載っているが、これは別項目にすべきかも・・・?
つまり、映画はクレジットで「原作 海音寺潮五郎(角川文庫)」と謳いながら、ストーリー展開は全く違う。
原作では山本勘助は登場しない。武田の女武者八重も登場しないし、裏切り者の大熊朝秀も印象が無い。しかし映画では大活躍!
この映画は1990年に公開された(旧)角川春樹事務所製作の、いわゆる角川映画。製作費は50億円とも55億円とも言われており、合戦シーンはカナダで500頭馬と3000人のエキストラを集め、1日8000万円、総額25億円をかけた。とwikiにはある。
よって映画の大部分は合戦シーンを見せるものであり、物語への比重は小さい。よってストーリーは、原作を遠く離れる。
念のため、と思って見始めた映画だが、バカバカしくなって半分ほどで見るのを止めてしまった。(でもこれを書くため、いちおう最後まで見たが・・・)
一番バカバカしく思ったのが、宇佐美定行の寝返りと一騎討ちシーン。小説では重要な育ての師、そして最後まで重要な軍師として活躍しているが、映画では寝返って、はてまた謙信と一騎打ち!
見せ場の川中島での武田信玄との一騎打ちでは、川の中で長々とした両者の馬上でのチャンバラが続く。
史実かどうかは分からない。角川春樹が、小説とは別に、他の史料から引用してきたのなら、まだ分かるが、どうも原作を無視して、とにかく映画として受けるように、改ざんしたとしか思えない。脚本に角川春樹も名を連ねているので、あるいはプロデューサー角川の意向かも??
著作権者としての原作者の意向はどうなのだろう?こんなストーリーの変更を著者は許すのだろうか?
もちろん本人はとっくに亡くなっているので、継承者の承諾のもとに作られたのだろうが、あまりの原作の変更(改ざん)に、OKを出したのか疑問。
司馬遼太郎は自作のドラマ化や映像化に非常に慎重で、「街道をゆく」や「坂の上の雲」では到底自分の意図を表現できないだろうと、生前許可を出さず、没後に奥さまからやっと映像化の許可が出たという。
小説などの原作と、映画やドラマは「別もの」という。しかし原作を読んでから映像モノを見ると、違和感だけが残る。
よって、これからは原作を読んだ後に映画やドラマは見ないことにした。
小説から離れて、映画単独として見応えがあればそれはそれで良かったが、今回はそれも無く、角川春樹という権力者の独りよがりが観音寺潮五郎の名作を潰した感があって残念だった。
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