« 「レコ芸」サンプルCDより(23)(1997年-2) | トップページ | 脱水と「ポカリ」に翻弄された話 »

2023年8月 5日 (土)

司馬遼太郎の「坂の上の雲」の世界を堪能

言うまでもなく、司馬遼太郎の「坂の上の雲」は、司馬作品の中でも常に人気ベストワンの小説。しかし、自分の読書メモを見ると、兄貴に勧められて2007年に読み始めたが、2巻の途中で挫折した過去がある。
それだけに、人気があるとは言え、自分にとっては鬼門??

司馬遼太郎に凝りだしてちょうど1年になる。wikiのリストによる長編小説39作品の文庫本109冊はすべて、そして短編小説もほとんど全部を文庫本でそろえた。エッセイその他も買い集め、あまり好きでない対談集を除くと、ほぼ集め終わり、あとは読むだけ。

朝日新聞のムックももちろん全部集めたが、その中でとにかく特集の項目が多いのが「坂の上の雲」なのだ。ムックに項目が多いのは、2009年から2011年までの3年間の年末に、NHKでスペシャルドラマ「坂の上の雲」として放送されたのが原因だろう。
それで、今までは年代順に読んでいたが、この際、頭でっかち(=話題が多い=「坂の上の雲」)を片付ける意味で、「坂の上の雲」にチャレンジすることにした。

さて、恐る恐る読み出した再チャレンジ本だが、これがなかなか面白く、全8冊を3週間ほどで読み終えた。それからムックを全部読破。そしてNHKオンデマンドでSPドラマ「坂の上の雲」を見終わったのが昨夜。
今日は、これらの感想である。

面白い小説は、ストーリー展開が早く、読者を先に先にと誘導する。佐伯泰英の小説が良い例(ここ)。しかし読み終わっても、何も残らない(失礼!)。でも時間潰しには良い。

それに比べて、「殉死」もそうだが、この「坂の上の雲」という小説は、ストーリー展開がユニーク。子規が死ぬところまでは、まあまあだが、日露戦争に入って行くと、戦争の進行に合わせて、色々な切り口から史実を追っていく。まさに史実に基づいたドキュメンタリーで、創作の小説と思って読んでいた読者は戸惑う。でもこの司馬流に慣れると、自分も一緒に史実を追って行く主人公になれる。

51dvoj0bttl それをドラマ化したのがNHKの「坂の上の雲」。今でも鮮明なハイビジョン画像を配信で見られるのは有り難い。
自分も当時このドラマは見た。しかし今回再視聴してみて、断片的な画像しか頭に残っていなく、まさに全体を初めて見た感じ。
wiki(ここ)にあるように、ドラマ化は「戦争賛美と誤解される。作品のスケールを描ききれない」として司馬は許可しなかったという。でもまあエピソードのピックアップの取捨選択の程度はあるものの、ドラマ化はこんなものだろう。小説とは別物として見ると面白い。

放送されてから10年以上になるが、その画面は映画以上に素晴らしい。特に戦争の場面は、TVドラマとは思えない出来映え。wikiにも「制作費も大河ドラマを上回るケタ違いの規模であるとしている。」とある。(Netには「通常の大河は一話あたり6000万円、年間で30億円位だが、このドラマの総制作費は250億円」「予算も単年度では国会の承認が得られず、作品の質を落として作成するか、数年に渡って予算を分散させるかの選択を迫られ、原作者の遺族の意向も踏まえ、3年越しの大作になった」という情報もある)

主役の本木雅弘や阿部寛は格好良い。しかし、正岡子規を演じた香川照之が自分には合わなかった。
それにドラマの方は、子規の登場が非常に多くなっている。

司馬は乃木希典が嫌いだったらしく、小説には「無能」という言葉がたくさん出てくる。203高地の攻防では、陸軍のメンツを重んじる参謀の伊地知幸介をコントロール出来ず、正面突破を繰り返して1万5千もの戦死者を出した。
そして児玉が応援して、やっと陥落。
それでも乃木神社があるのは、殉死の影響か?

ついでに乃木希典を描く「殉死」という小説も読んだが、司馬はやはり乃木を賛美していない。

それにしても、ドラマは14年も経っている今でも楽しめる。これもネット配信のおかげ。

話は飛ぶが、今回、日露戦争について教えて貰って、改めて『日露戦争はロシアからの侵攻の防衛』という背景を知り、日本国憲法の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」という文面に疑問を持った。
先のロシアのウクライナ侵攻を見ても、ロシアの領土拡大という民族の姿勢、そして約束を守らない姿勢は歴史的なものであり、変わらない。そして中国という覇権国家の存在。それらを「公正と信義に信頼」できるものなのか・・・
引き続き司馬遼の「ロシアについて」を読んでみることにしている。

それはそれとして、今数えてみたら、今回集めた司馬遼太郎関係の本は約260冊。相変わらず「全部」という言葉に惑わされている。そのうち105冊を読んだので、まだ4割。
「自分の趣味は“全部”の作品を集めての積ん読」。そして「司馬遼太郎の本を全部読み終えるまでは死ねないな!」と、うそぶいているこの頃の自分である。

|

« 「レコ芸」サンプルCDより(23)(1997年-2) | トップページ | 脱水と「ポカリ」に翻弄された話 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「レコ芸」サンプルCDより(23)(1997年-2) | トップページ | 脱水と「ポカリ」に翻弄された話 »