土屋賢二の「もしロシアが攻めてきたら」
iPad で週刊文春を眺めていたら「もしロシアが攻めてきたら」というエッセイがあり、楽しく読んだ。
<ツチヤの口車 1236>
「もしロシアが攻めてきたら 土屋賢二
ロシアがウクライナに侵攻して以来、ニュースを見ると胸が痛む。子どもの涙を見ると胸がつぶれそうだ。
そのたびに義憤にかられ、志願兵になって戦いたいと思う。だが何キロもの装備を身につけて歩くだけの体力がないのが残念だ。もっと残念 なのは、もし体力があったら志願兵になろうという気が起きるかどうか疑問だということだ。
NATOもアメリカも、ロシアが弱小国なら即座に叩き潰しただろうが、軍事大国だと、後方支援にとどまり、傍観するだけだ。弱そうな男が暴れていたらまわりは袋だたきにするが、暴れているのが暴力団なら傍観するのと同じだ。
降参すればいいと言う人もいるが、降参すれば、最悪、何十万何百万もの人が粛清・投獄され、それ以外の男は徴兵されて他国への侵略の最前線に送られる。国土は永久に返らず(北方領土を見よ)、母国語は禁止、学校ではロシア語で捏造した歴史を教え、言論統制、強制労働、不妊手術を強いられ、隣人の告げ口ひとつで粛清される可能性がある。同胞や子孫を新疆ウイグル自治区や北朝鮮みたいな所に住ませたいのか。
プーチンは借りた飛行機は返さない、外国企業の資産は接収する、借金はルーブルで払う(チャラにする)、見えすいたフェイクニュースを流すなど、あらゆる手段を使って信用を落とそうと努力しており、「降伏すれば……してやる」という約束が信用できるはずがない。
信用を落としたのは本人だけではない。犬好きに悪い人はいないと言われているのに、プーチンは犬好きだ。武道から礼を学んだはずなのに、礼のかけらもない。犬好きと武道の信用も落とした。
NATOやアメリカが介入しない理由の一つは「核保有国相手に戦うと核戦争になりかねないから」というものだ。その理屈ならロシアは核をちらつかせればNATO参加国でも日本でも侵略し放題ということになる。もし日本がこの理屈で孤立無援の事態になったらどうするだろうか。
真っ先に逃げるかと妻に聞くと、「とどまって戦う!」と言う。火炎瓶を投げ、落とし穴を掘ってでも、戦うと言う。
意外だった。妻は駅のホームの端も歩かないほど用心深い。妻の用心深さを知ったとき、「借しまれない人間ほど自分の命を大切にする」「悪い奴ほど命を惜しむ」という格言を作ったほどだから、妻の戦闘宣言は意外だった(プーチンも極度に用心深いらしい)。
妻に怖くないのかと聞くと、「やられる気がしない」と答えた。闘争心が恐怖心に勝っている。その上、妻には自分を棚に上げる性質がある(自分のことを書いたエッセイを読んでも、まるで他人事なのだ)。
わたしのいる老人ホームで、九十代の女性入居者に聞くと、「戦争は絶対にイヤだ。第二次世界大戦のとき、さんざん無差別空爆やら原爆やらでどれだけ怖い思いをしたことか」と回想する人もいれば「夫が生きていて、逃げないならわたしも逃げない」という人、「夫に関係なく逃げる」という人もいる。
老人ホームの三十代の男性スタッフに聞くと、「逃げます」と即答した。「ちょうどいい戦力になるのに」と言うと、「それでも逃げます」と断言した。
この男は、ロシアがこの老人ホームを攻めたら入居者を置いて逃げるハラだ。
だがみんなが逃げても心配はいらない。この施設には妻がいる。ロシア兵が攻めてきたら、妻が金槌を腰に差し、火炎瓶を作り、包丁を研いでいる姿を目撃するだろう。その脇には、妻の命令で兵糧用にジャガイモを洗っているわたしがいるはずだ。」(「週刊文春」2022年3月31日号より)
このウィット。土屋賢二!?ん??聞いたような名前・・・
と思ったら、前に自分が凝ったことがある人だった。
このblogを検索すると、「哲学者 土屋賢二氏とは?(日経のコラムから)」(2006年6月19日)(ここ)と「土屋賢二氏のウィットに感服」(2006年9月19日)(ここ)の二つの記事が見つかった。まさに16年前に当blogを始めて、数日後の記事だ。
wikiで見ると、氏は1944年生まれというから、自分よりも3つ上なだけ。
上の記事で「わたしのいる老人ホームで」というのが気になった。
ん??自分より3つ上なら、今は77歳。それで、もう老人ホーム??
検索すると(ここ)のページがヒットした。2019年07月04日発売の週刊文春の同じ「ツチヤの口車1103」で、「老人ホームに入居することにした」というエッセイを書いていた。当時75歳。ほぼ今の自分と同じ歳・・・
解像度が悪いので読みにくいが、老人ホームに入る事にした理由が書いてある。①子どもがいない ②書類が難しい ③根が軽率である ④わたしは物体である以上、死ぬまでの間、何らかの場所に存在しなくてはいけない だそうだ。
「わたしが決めたのは、百以上の一般居室がある大規模な介護付き有料老人ホームだ」とあるので、相当立派なホームなのであろう。
立派な老人ホームというと、亡くなった叔父を思い出す。子供がいなかった親父の直ぐ下の弟の叔父は、現役時代はずっと町田に住んでいた。貸家を持ってたが、定年と同時に、自宅など全てを売り払って、熱海の山の上にある温泉付の老人ホームに移った。
2000年に、伊豆に旅行した帰りに寄った事があったが、そのとき、入るのに一人4000万円かかったと言っていた。夫婦で入居費8000万円・・・
その叔父も、既に92歳で亡くなった。叔母は現在93歳。健在かどうかは、最近確認していないので分からない。
でも、老人ホームに30年以上住んだとすると、十分元は取ったのかも知れない。
先日、久しぶりに定例の同期4人でコーヒーを飲む会があった。出てくる話は、そろそろ皆、後期高齢者になるので、免許の更新で「認知機能試験」があるぞ!という話ばかり。
あれよあれよと言う間に、我々も後期高齢者だって!!ビックリ!
老人ホームも他人事では無い!?
でもウチのカミさんは、「アナタは老人ホームに入ると悲劇。味の濃い物が好きだし、周囲とうまくやれない!!」という。
先日、隣のご主人が1月から脳溢血で入院中だと聞いて、これまたビックリ。
人間、いつ何が起こるか分からない。
でも、低空飛行でも、何とか変化が少なく、平凡な日々が過ぎる事を祈るばかり・・・
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