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2021年12月19日 (日)

「アップルの年収は7400万円超!?」~それが幸せ?

もうビジネスの世界と縁を切ったはずだが、どうも気になる。
こんな記事を見付けた。相変わらずのコピペで申し訳ないが・・・

アップルの年収は7400万円超!? 米企業の強烈な稼ぐ力とその源泉
         野口 悠紀雄(一橋大学名誉教授)

 付加価値は賃金の源だ。従業員1人当たりで見ると、アップルはトヨタの8倍超。だから、アップルの賃金がトヨタの8倍になってもおかしくない。こうなるのは、アップル が新しいビジネスモデルを採用しているからだ。

日本の賃金はなぜ低く、上がらないのか?
 日本の賃金は、アメリカの6割位だ。そして韓国とほぼ同じになっている。最近は韓国に抜かれつつある。

 なぜこんなことになってしまうのか? これを改善するにはどうすればよいのか? 岸田内閣は、企業に賃上げを要請すると言っているが、それでこの状況を改善できるのか? 
 以下では、企業が生産性を高めない限り、賃金は上がらないことを指摘する。

 これを確かめるために、トヨタ、サムスン、アップルの財務状況を調べてみよう。これらは、時価総額がその国最大の優良企業だ。国の平均的な状況を表わしているわけではないが、その国の状況を象徴的に表わしている。

■アップル従業員の年収は7400万円超?
 まず、従業員1人あたりの年間粗利益を見よう。

 (注:以下の計数は2020年度のもの。2020年の平均的な為替レートでドルに換算してある。トヨタ自動車〈連結ベース〉の2021年3月までの年度につき、Yahoo! Finace 〈以下、Yahoo〉のデータでは、Revenueが31.32兆円だ。一方、同社決算短信での営業収益は27.2兆円で、一致しない。ところが、有価証券報告書によると、金融収益も含む営業収益は29.9兆円であり、Yahoo のデータとかなり近くなる。ここでは国際比較を行なうため、Yahoo のRevenueを売上として用いる)。

211219apple  「粗利益」とは、売上から売上原価(原材料費等)を引いたものだ企業の「稼ぐ力」を示す。「付加価値」とも呼ばれる。以下では、この言葉を用いることにする。なぜこれを見るのか? 賃金は、ここから支払われるからだ。つまり、企業が賃金を支払うための原資だ。これが増えなければ、賃金は上がらない。

 (注:前記期間でのトヨタにつき、YahooでのGross Profitは、4.83兆円だ。一方、有価証券報告書では、売上原価が23.1兆円で金融費用は1.4兆円。この合計を前記29.9兆円から引くと5.4兆円となる。YahooのGross Profitと約6000億円の差があるが、国際比較のため、Goss Profitを付加価値とする)。

 従業員1人あたりの付加価値を実際に計算してみると、トヨタは12.3万ドル、サムスンは25.1万ドル。それに対してアップルは99.2万ドルと、トヨタの8倍以上にもなる(表参照)。

 付加価値のうちどの程度が人件費になるかは、企業によって違うが、トヨタ自動車の場合を参考として、他社の平均給与の円換算値を推計した(注:トヨタ自動車の有価証券報告書によると、2000年度における同社の従業員1人あたり平均給与は858万円。これは、同社の一人あたりGross Profit 1320万円の65%に当たる。他社については、この比率を1人あたりGross Profitに乗じて、1人あたり平均給与を推計した)。

 すると、アップル場合は7400万円超という「とてつもない」額になってしまう!  もしそうなら、日本人がアップルで4年間働けば、日本で40年間働いたのと同じことになる。あとは、日本に戻って遊んで暮らせるだろう。

 いくら何でもこれはおかしいと思って、何度も計算をチェックしたのだが、間違いない。これは現実なのだ。

 なぜこのような「とてつもない」ことになるのだろうか? 
 ひとつの理由は、アメリカの場合、一企業内でも、大きな所得格差があることだ。経営者が驚くほどの高額所得を得ている。また、一般従業員でも業績によって、信じられないほど巨額のボーナスを得る場合がある。

 ただ、それだけではない。以下に述べるように、納得的な理由がある。

■アメリカの生産性が高いのはファブレス化したから
 なぜアップルの従業員1人あたり付加価値は巨額なのか? 
 まず、1人当たりの売上高が大きい。アップルは237万ドルで、トヨタの80万ドル、サムスンの71万ドルの3倍程度になっている。

 こうなるのは、スマートフォンという高額商品を、世界のきわめて多数の人に販売しているからだ。しかも、それは、他の企業が容易に追随できないものだ。

 それだけではない。売上に対する付加価値の比率も高い。アップルは41.8%だ。これは、トヨタ15.2%の倍以上だ(サムスンは34.9%)。このために、従業員1人当たりの付加価値が、上で見たようにトヨタの約8倍という「とてつもない」額になってしまうのである。

 アップルの場合、売上に対する付加価値の比率が高いのは、原材料費などの比率が極めて低いからだ。こうなるのは、アップルは製造を行なっておらず、設計と販売に特化しているからだ。こうした企業を「ファブレス」(工場なし)という。

 ところで、ファブレスは、アップルに限ったことではない。半導体のNVIDIAも、設計に特化したファブレス企業だ。また、テスラの付加価値は、ハードウエアよりはソフトウエアで生じている。アメリカの製造業は、モノづくりから情報に向けて大きくシフトしているのだ。

 日本や韓国には、こうした企業はあまり現れていない。国全体の平均賃金において、日本や韓国がアメリカの6割程度しかならないのは、産業構造のこのような違いによる。

 なお、日本の賃金が低いのには、以上で述べたことの他に、もう一つの理由がある。それは為替レートだ。日本円は、いま購買力平価より円安になりすぎているために、日本の賃金が低く評価されているのだ。これも重要な問題だが、ここでは触れない。

■トヨタとサムスンのどちらに将来性があるか?
 トヨタは、盤石の強みを持つ企業のように見える、しかし、将来はどうだろうか? サムスンと比較してみよう。

 従業員1人あたりの時価総額を見ると、サムスンは132万ドルで、トヨタ67万ドルの倍近くになっている。時価総額は、企業の将来を表わす指標だ。これで見る限り、サムスンのほうが将来性があるということになる。本当にそうだろうか? 
 すでに見たように、1人あたりの売上高はトヨタが80万ドル、サムスンが71万ドルと、トヨタの方が多い。しかし、売上のうちの付加価値の比率は、トヨタは15.2%なのに、サムスンは34.9%と倍以上になる。サムスンは、原材料費をあまり使わずに利益を上げられる生産活動を行なっているのだ。

 さらに、自動車とスマートフォンの違いがある。自動車産業は、これから大きく変貌する。EVになり、自動運転になる。自動運転になるという点では自動車も情報化する。その中でトヨタがどのような位置を占めるかはわからない。実際、テスラは、時価総額ですでに、トヨタを抜いている。

 それに対して、サムスンが作っている製品は、スマートフォンや半導体だ。それらは、今後ますます重要性を増していく。

 製品に将来性があるという点で、サムスンはアップルと同じだ。それが、1人当たり時価総額におけるトヨタとの差に表われているのだ。

■アップルと東芝はどこが違ったのか?
 ビジネスモデルの選択は、企業のあり方そのものに、極めて大きな影響を与える。ここでは、アップルと東芝を比較することにしよう。

 20年ほど前、アップルも東芝も、同じようにPC(パソコン)を作っていた。東芝は、それに加え、テレビなどの家電製品も作り、さらに発電機などの重電機器も作る巨大な総合電機メーカーであった。それに対してアップルは、マニアックな人たちしか興味を持たない小さな企業だった。

 ところが、いまや、一方は世界一の時価総額を誇り、他方は3分割に追い込まれている。

 日本のように企業間の人材流動性が低い社会では、企業がこうした状況に追い込まれると、従業員は大きな危機に晒される。賃金どころか、そもそも働く機会が失われる危険がある。

 なぜこのようなことになったのか? 
 まず、従業員1人あたり売上を見ると、東芝はアップルの10分の1しかない。東芝はさまざまな製品を作っているが、高い価値のものがない。それに対してアップルは、他のメーカーが作れない製品を、集中して作っている。

 そして、売上のうちの付加価値の比率が、東芝はアップルの半分程度でしかない。さらに配当にあてる比率が低い(表には示していない)。だから、株価が上がらない、だから、株主から不満がでた。

 その結果、従業員数はほぼ同じなのに、東芝の時価総額は174億ドル。アップルの2.6兆ドルとの間に、150倍近くの差がついてしまった。

■賃金を上げるには、生産性向上が不可欠
 賃金を上げるためには、その原資が必要だ。それは、従業員1人当たりの付加価値(生産性)だ。賃金を上げるには、生産性を引上げるしか、解決策はない。

 変化する世界のなかで、旧来の事業を続けていれば、生産性は向上しない。日本の賃金が上がらないのは、当然のことなのだ。

 そして、将来にわたって日本の労働者を守るには、時代の変化に応じて企業のビジネスモデルを変えていくことが必要だ。それを怠る企業は、淘汰されてしまう。これも当然のことだ。

野口 悠紀雄(一橋大学名誉教授)
1940年、東京に生まれる。東京大学工学部卒業。大蔵省入省。エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、現在、一橋大学名誉教授。」(2021/12/19付「現代ビジネス」ここより)

もはや先進国から脱落した日本。その背景をこの論を読んで納得。

しかしちょっと疑問もある。
「アップルの場合、売上に対する付加価値の比率が高いのは、原材料費などの比率が極めて低いからだ。こうなるのは、アップルは製造を行なっておらず、設計と販売に特化しているからだ。こうした企業を「ファブレス」(工場なし)という。」とある。

東洋経済の記事によると、
「全世界で販売されるiPhoneの半分は、中国河南省鄭州市にあるフォックスコンの製造拠点「鄭州科技園」で生産されている。同社の開示資料によれば、鄭州科技園には3区画に分かれた工場群に90本を超える生産ラインがあり、繁忙期のピークには約35万人の従業員が生産に携わる。

この数カ月、鄭州科技園では給与に臨時ボーナスを上乗せして従業員を募集している。7月下旬に掲出された募集要項によれば、18歳から45歳までの一般従業員の給与は諸手当込みで4000~4500元(約6万8200~7万6725円)。そこに加えて最大で9500元(約16万1975円)の「繁忙期激励ボーナス」を支給するとしている。」(2021/08/24付「東洋経済」ここより)

ファブレス以外の普通のメーカーは、製造部門を持つ。当然、製造部門の人員も上の表の「従業員数」に入る。アップルは、製造を中国や台湾のEMS(電子機器の受託製造サービス)に外注する。当然、そこで働く数万人という人数は入っていない。
製造にも技術が伴い、ノウハウも必要になる。アップルが外注出来るのは、その外注先にその製造に対するノウハウや技術があるから。逆に言うと、中国の安い給料で働く人でも製造出来る設計になっているということ。それもアップルの技術の成果。

昔、悪名高くなってしまった日産のゴーン社長が、V字回復を遂げたとき、日産の「救世主」ともてはやされた。その時、世の経営者は「車だけ作っている会社とは違う」と言い訳をしたもの。
アップルはそれ以上だ。スマホだけ?を作っている。言い方を変えると、その1機種のために15万人も人をかけている!
究極の一本足打法。それをどう見るか?

総合メーカーは、時期の事情で、ある特定部門の業績が悪くなって、他の部門でカバーしていた。半導体のような短期ビジネスと重電のような長期ビジネスの、いわゆるBU(ビジネスユニット)のデコボコでバランスを取るようにしていた。
そのビジネスモデルももう崩壊しているらしい。

今日、ブリジストンが8000人規模のリストラをするというニュースが流れた。国内では社員の1割が、事業の売却先に移籍するという。
効率一辺倒の企業。そして、そこで働く人たちの運命。

短期的には、アップルの社員はうらやましい。サムスンの社員は、そしてトヨタの社員はうらやましい。
それは確かだが、長期的にみて、働く社員にとって、それが絶対的に幸せだろうか?

7400万円の年収はすごい!でも、果たしてそれが必要か?
韓国の競争社会で勝ち取ったサムスン社員の地位は、本当に幸せをもたらすか?
どうも疑問に思う。

ブリジストンの例を引くまでも無く、会社は社員を守ってはくれない。それだけは確か。
ある人が言っていた。「普通に食べられば、安くてもそんな給料で良いじゃないの」。
そんな考え方も確かにある。植木等では無いが、「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」!?
我々凡人が、平穏に暮らすには、公務員か、はてまた業務独占資格でも取って自分で身を守るしかないか?
自分にとっては、もう別世界の出来事だが、年収7400万円と、ブリジストンのニュースで、ちょっと考えてしまった。


●メモ:カウント~1360万

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