太宰治の「日の出前」の朗読
毎週楽しみにしているNHKラジオ深夜便(月)AM1時からの「ラジオ文芸館」。
先日聞いた太宰治の「日の出前」が印象に残った。
<ラジオ文芸館:太宰治の「日の出前」>
この作品は、新潮文庫「きりぎりす」に収録されているもので、当初「花火」という題名で1942(昭和17)年10月1日『文芸』10巻10号に掲載され、実際にあった事件(昭和10年の「日大生殺し事件」?)をもとに書かれた小説だという。(全文は青空文庫の(ここ)で読める)
「内容は、子殺し。成人した息子を、有名画家の父親が殺した。しかも、計画的に。息子は医者になれという父の命令に背き、チベットへ行って事業をやりたいなんていう。家から金を持ち出し、良くない友人と遊ぶ。妹の大切な着物や、父の作品まで持ち出して、お金にかえて遊ぶ。女中を妊娠させて、不実なことを言う。母親の頭にみそ汁をかぶせたりする。無頼の作家や左翼の活動家とつきあい、警察に逮捕されたりする。息子の悪行に疲れ果てた父は、息子に保険をかけ、月夜、井の頭公園の池に浮かぶボートに一緒に乗って…」(ここより)
この話を聞きながら、改めて家族というものを考えた。
ある人は、家族ほど怖ろしい物は無い、と言う。他人なら縁を切ることが出来る。しかし、家族はそうは行かない。親と子、兄弟・・・。何かがあれば、法などによっても、どこまでも追いかけてくる。逃げようにも逃げられない。よってこの物語のように子殺しなどに至るケースも有り得る。
前に読んだ、なかにし礼の「兄弟」(ここ)は、弟が兄の悪行に、どことん付き合って、負債を返した珍しい例?
最近はあまり聞かないが、昔は「金属バット事件」や「長崎佐世保高1女子殺害事件」など、悲惨な事件があった。この所、あまり聞かないのは良いこと。
しかし、根源の家庭内暴力は、密かに家庭という閉鎖社会に埋もれているのかも・・・
上野千鶴子さんの、結婚はリスク、というのも分かる。若者がリスクを避けるのも分かる。結婚や家庭が必ずしもハッピーにつながるとは限らないことも事実。
でもたった一度の人生。チャレンジするのも一法。
今夜、今まさに国民の反対を押し切って東京五輪の開会式が始まった。
圧倒的に有利な日本が、金メダルラッシュになるのは当然。その当然の事態に、果たして国民がうかれて、首相が狙う内閣支持率のアップにつながるのかどうか?
そこまで国民はバカでは無いと思いたいものだが・・・
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コメント
聴かせていただきました。たいへんおもしろかったし文学の香もしていました。悪の暗闇に堕ちた息子。父親はこのようなことができるけれど、母親にはできないでしょう。このような作品もかいていたとは存じませんでした。ありがとうございました。
【エムズの片割れより】
確かに太宰治の作品では異色かも!?
投稿: kmetko | 2021年7月27日 (火) 14:21