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2021年7月 9日 (金)

大村智氏の「母を語る」

先日、図書館から「ラジオ深夜便 母を語る 特選集」を借りてきて読んだ。予約してから2ヶ月経って、やっと借りられた。
この本についてAmazonにはこう紹介がある。
210709hahawokataru 「NHKラジオ深夜便にて、著名人が自らの母を語る人気コーナー「母を語る」を再録。遠藤ふき子アンカーが自ら厳選した20編を紹介。
谷川俊太郎、山田洋次、林真理子、山折哲雄、なかにし礼、上野千鶴子、宮田亮平、吉永みち子、姜尚中、三浦雄一郎、さだまさし、宮本亞門、萩本欽一、五木ひろし、野村萬、半藤一利、立川志らく、大村智、大野和士、氷川きよし」

自分が「ラジオ深夜便」を聞き出したのは、(ここ)によると、2007年11月。
一方、遠藤ふき子アンカーの「母を語る」は、1995年4月~2019年12月までの24年で、220人をインタビューした、とある。
よって多分自分は、このうち12年間分は聞いているはずだが、読んでみてほとんどが新鮮。つまり全部忘れているわけだ。(まあ覚えている方がおかしいか!?)
この20編の中で、ちょっと気になったのが。ノーベル賞受賞者の大村智氏の「母を語る」(2017年1月17日放送)。

「――大村さんご自身は、将来何をしようとお考えだったのですか。
大村:長男でしたから、おやじの後を継いで農業だなと、ろくに勉強もせずスキーと卓球に明け暮れていました。父は私が後を継ぐことを望みつつも、これからの時代は農業だけでは立ち行かないと思っていたんでしょう。高校三年に進級したころ、私が盲腸で入院していたときに珍しく本を読む姿を見た父が突然、「智、勉強するつもりなら大学へ行かせてやるぞ」と言いだしまして。
 それまで大学進学など考えてもいませんでしたから、めんくらいつつも急に目の前が開けたような気がしましてね。同級生に慌てて、「おい、大学ってどこにあるんだ?」と聞きました(笑)。すると、山梨大学が甲府にあるという。甲府なら通えるぞと、猛勉強しました。あの体力と集中力は、スキーをはじめ、スポーツが培ってくれたものでしょうね。
 卒業生の七、八割は教職に就く学部でしたから、在学中は漠然と、中学か高校の先生になるんだろうなと。で、またスキーにのめり込んでいました。ですからね、弟たちがいまだにぼやくんですよ。「兄貴はおふくろの恩給をみんな滑っちゃった」と(笑)。弟たちがねだってもだめなのに、私がねだるとスキー合宿の費用を出してくれたりしたのでね。
・・・
――大学卒業後、東京で定時制高校の先生をされていた問に、転機が訪れたそうですね。
大村:昼間の仕事を終えてから一生懸命勉強する生徒たちの姿を見ていると、心穏やかではいられなかったんです。スキーに明け暮れてろくに勉強しなかった自分はどうなのだと。生徒たちに教えられて、「もう一度勉強し直そう」という気持ちになっていきました。
・・・
――教師を続けながら、東京理科大学の大学院で学ばれた五年間、お母さまとしては、はらはらなさっていたでしょうね。
大村:「料理を作ってやる」なんて言い訳しながら、様子を見にきていましたけどね。選択としては、高校の先生を続けるか、研究者の道に入るか。父も心配だったのでしょう。息子のためにいろいろ調べたようです。結論は、高校の先生を続ければ校長ぐらいにはなれるかもしれないが、智の経歴では大学に残ってもせいぜい講師どまり。なぜなら、日本はそういう社会だからと。そこで私の中に反骨精神が芽生えまして、「だったら、日本じゃなく海外を相手にすればいい」。そう言って研究の道に進みました。
・・・
210709oomura―― いいお母さまですね。
大村:そう思います。教員時代、母は日記に、「教員の資格とは免状ではなく、自分自身が絶えず進歩していることだ」と書いているんですよ。母のこの言葉を原点に、世の中のためになるような勉強を続けます。今は忙しくてなかなかできませんが、ビニール袋は絶えず持ち歩いていて、機会あるごとに土を採集するようにしていましてね。研究の心構えを研究室の人に知ってもらうためにも、私か率先してやらなければね。」(「母を語る 特選集」p102~より)

大村氏については、当サイトでも「熱帯救った日本の菌 大村智さんの発見、抗寄生虫薬に」(2013/07/13ここ)と「ノーベル賞受賞者・大村智氏の話「2億人を熱帯病から守った化学者」」(2015/12/15ここ)の2回取り上げているが、氏の学歴について、改めて認識した。
上記のように、氏のエンジンが掛かったのが高校3年の春。そして行った大学が山梨大学の教員養成学部。それは知らなかった。そして定時制高校の先生から改めて大学院に行って、研究者の道へ・・・
まさに非エリートの道で、ノーベル賞に到達!こんな人生もあるんだ・・・

探したら、2017年の上の放送が残っていた。

<ラジオ深夜便「母を語る」大村智(2017/1/17放送)>

放送を聞きながら本のページをめくっていくと、編集者の苦労が良く分かった。つまり、話はあっちこっちに飛ぶ。それをまとめてある流れの文章に組み立て直す。これは結構大変な作業。

ともあれ、改めて氏の偉大さを認識した。

(関連記事)
熱帯救った日本の菌 大村智さんの発見、抗寄生虫薬に 
ノーベル賞受賞者・大村智氏の話「2億人を熱帯病から守った化学者」 

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