黒澤明監督の作品を全部見た~「七人の侍」と「用心棒」のテーマ
黒澤明監督の作品を“ほぼ”全部見た。
最近、“全部”に凝っている。主に本だが、“藤沢周平を全部読むぞ!”みたいに・・・
今回のきっかけは、「カルチャーラジオ NHKラジオアーカイブス「声でつづる昭和人物史 黒澤明」」(2021/05/03・10・17放送)を聞いたこと。
この番組の中で、保阪正康氏が、黒澤作品は全部見ている。と言っていた。それを聞いて自分も、“日本を代表する映画監督の黒澤明の作品くらい、どうせヒマな年金生活者、全部見ても良いかも・・・”と思い立って見た、というわけ。
まずこの番組を挙げておこう。
<カルチャーラジオ「声でつづる昭和人物史 黒澤明」(1)>(2021/05/03放送)
<カルチャーラジオ「声でつづる昭和人物史 黒澤明」(2)>(2021/05/10放送)
<カルチャーラジオ「声でつづる昭和人物史 黒澤明」(3)>(2021/05/17放送)
黒澤明監督の作品は31あるという。
1.「姿三四郎」(1943年・東宝、1時間19分)
2.「一番美しく」(1944年・東宝、1時間25分)
3.「続姿三四郎」(1945年・東宝、1時間23分)
4.「虎の尾を踏む男たち」(1945年・東宝、58分)
*5.「明日を創る人々」(1946年・東宝、1時間21分)
6.「わが青春に悔いなし」(1946年・東宝、1時間50分)キネマ旬報2位
7.「素晴らしき日曜日」(1947年・東宝、1時間48分)キネマ旬報6位
8.「酔いどれ天使」(1948年・東宝、1時間38分)キネマ旬報1位
9.「静かなる決闘」(1949年・大映、1時間35分)キネマ旬報7位
10.「野良犬」(1949年・東宝、2時間2分)キネマ旬報3位
11.「醜聞」(スキャンダル)(1950年・松竹、1時間44分)キネマ旬報6位
12.「羅生門」(1950年・大映、1時間28分)ヴェネツィア映画祭金獅子賞、キネマ旬報6位
13.「白痴」(第一部・愛と苦悩、第2部・恋と憎悪)(1951年・松竹、2時間46分)
14.「生きる」(1952年・東宝、2時間23分)ベルリン映画祭銀熊賞、キネマ旬報1位
15.「七人の侍」(1954年・東宝、3時間27分)ヴェネツィア映画祭銀獅子賞、キネマ旬報3位
16.「生きものの記録」(1955年・東宝、1時間53分)キネマ旬報4位
17.「蜘蛛巣城」(1957年・東宝、1時間50分)キネマ旬報4位
18.「どん底」(1957年・東宝、2時間17分)キネマ旬報4位
19.「隠し砦の三悪人」(1958年・東宝、2時間19分)ベルリン映画祭銀熊賞、監督賞、国際映画批評家賞、キネマ旬報2位
20.「悪い奴ほどよく眠る」(1960年・東宝、2時間31分)キネマ旬報3位
21.「用心棒」(1961年・東宝、1時間50分)ヴェネツィア映画祭主演男優賞(三船敏郎)、キネマ旬報2位
22.「椿三十郎」(1962年・東宝、1時間36分)キネマ旬報5位
23.「天国と地獄」(1963年・東宝、2時間23分)キネマ旬報2位
24.「赤ひげ」(1965年・東宝、3時間5分)キネマ旬報1位、ヴェネツィア映画祭サン・ジョルジュ賞、ヴェネツィア市賞、国際カトリック映画祭事務局賞、モスクワ映画祭映画労働組合賞
25.「どですかでん」(1970年・東宝、2時間6分)モスクワ映画祭ソ連映画人同盟特別賞、アデレード国際映画賞・監督賞、ベオグラード国際映画賞、キネマ旬報3位
*26.「デルス・ウザーラ」(1975年・日本ヘラルド、2時間21分)モスクワ映画祭金賞、アカデミー外国語映画賞、ヴェネツィア映画祭サン・ジョルジュ賞、キネマ旬報5位
27.「影武者」(1980年・東宝、2時間59分)カンヌ映画祭グランプリ、英国アカデミー賞監督賞・衣装デザイン賞、セザール賞外国語映画賞、ベオグラード映画芸術賞・作品賞・美術賞、キネマ旬報2位
28.「乱」(1985年・東宝=日本ヘラルド、2時間38分)アカデミー賞衣装デザイン賞、ニューヨーク批評家賞作品賞、全米批評家賞作品賞・撮影賞、英国アカデミー賞外国語賞、キネマ旬報2位
29.「夢」(1990年・ワーナー、1時間59分)キネマ旬報4位
30.「八月の狂詩曲」(1991年・松竹、1時間38分)キネマ旬報3位
31.「まあだだよ」(1993年・東宝、2時間14分)キネマ旬報10位
このうち、5.「明日を創る人々」と26.「デルス・ウザーラ」は見ていない。動画配信では見られないようだ。それを除く29作品は、U-NEXT(ここ)で見ることが出来る。
(U-NEXTの「31日間無料トライアル」(ここ)を利用すれば、1日に1作品を見ても、無料期間で見られる。)
前に見て良く覚えている作品は除いて、今回は、制作年順に20作品を見た。見ながら「これは前に見たことがあったな」という作品もあったが・・・。
さて、見た感想だが、まさに玉石混交(玉石混淆)。誰もが知っている有名作品はさすがに名作だが、特に初期の作品は、あまり見る価値は無い、と思った。今回見た20作品に点数を付けたら、5点満点中、5点が3つ、4点が6つ、3点が4つ、2点が4つ、1点が3つだった。
だいたい、1点や2点の作品は、見ていて途中で見るのを止めてしまうので、今回は“我慢して見た”ということ。
何せ、初期の作品は録音が悪いせいか、セリフの滑舌が悪く、言っている言葉が聞き取れない。そして、ドストエフスキー原作の作品も、良く分からなかった。
そして原爆や放射能がテーマの作品が「生きものの記録」と「八月の狂詩曲」の2つ。
黒澤明監督は1998年に亡くなっているが、2011年の福島原発事故の時代に生きていたら、何を言ったか・・・
やはり人生は正規分布? 初期の作品は良く分からない映画でも、段々良くなって行って、ピークを迎え、そして段々と落ちて行く。そんな感じで見た。最後の「まあだだよ」は、先日亡くなった小林亜星も登場して、到底黒澤映画とは思えなかった。
そして、どの監督も同じだろうが、役者が固定化してくる。お気に入りの役者が決まってくるのだろう。でもそれが段々と鼻につく・・・。
自分は、黒澤明監督はチャンバラ物が得意、と思っていたが、どうして、現代物もたくさん作っていた。時代劇は11??
今回改めて見直したのは「悪い奴ほどよく眠る」。たぶん2度目だが、サスペンス物で、なかなか見応えがあった。
昔を思い出すと、母親に連れて行ってもらった記憶があるのが「七人の侍(1954年)」と「用心棒(1961年)」。当時、まだ小さかったので、内容は良く分からなかった。しかし、その後何度見たことか・・・
その当時、ソノシート(ビニール製のレコード)で、映画テーマ集を買ったが、この2つも入っていた。
<映画「七人の侍」のテーマ>
<映画「用心棒」のテーマ>
そろそろ、「全部見るぞ!」「全部読むぞ」は止めにしようかと思っている。駄作を我慢して見るのは時間のムダ。やはり死ぬまでの限られた時間。名作に絞った方が良いのかも。
前々からカミさんから「誰でも駄作も名作もある。全部見る、という目的が分からない。単なる達成感としても、意味ない」と言われていたが、まあそれが正解かも・・・ね。
少なくとも、映画監督で「全部見るぞ」はもう無いな・・・
黒澤明監督と過ごした1ヶ月であった。
●メモ:カウント~1340万
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コメント
私も黒澤明監督作品はほとんど観ています。
初期と晩年の作品はあまり好きではありません。
名作が多いですが、残念ながら画質に不満があります。NHK-BS4Kで「羅生門」と「乱」は4K放送されましたが、今後他の作品も4K化して欲しいと願っています。
先日、WOWOWで高倉健特集がありましたが、「夜叉」と「鉄道員(ぽっぽや)」が、WOWOW4Kで放送され、なかなかの高画質でした。黒澤作品もNHKだけでなくWOWOWにも4K放送に期待したいです。
【エムズの片割れより】
ドキュメンタリー番組は別にして、自分はドラマなどの4Kには懐疑的です。
自分は録画再生が普通なのですが、常にPanaのレコーダーの1.3倍で見ています。
しかも、字幕付で。
4Kですと1.3倍再生が出来ないのでもどかしい・・・
よって、ドラマはもっぱら2Kで見ます。
映画は4Kの価値はありますが、分からないのが、昔のNTSCの番組の4K化。
44.1Kbpsで録った音楽をハイレゾ化できないのと同じように、NTSCの映像を4K化とは、どんなことをしているのでしょう?
原画がフイルムなら分かりますが、どれほど改善されるのでしょうか?
投稿: classical.s | 2021年6月17日 (木) 19:44
黒澤映画(フィルム)の話ということでコメントしたのですが・・・
>自分はドラマなどの4Kには懐疑的です。
そうですか?画質の感じ方は人それぞれですから。
ところで、4KTVや4KレコのHDMI設定は、高速通信モード(18Gbps)に設定していますよね?
>4Kですと1.3倍再生が出来ないのでもどかしい・・・
ソニーの4Kレコは可能になったようです。
>昔のNTSCの番組の4K化
画質の向上はないでしょうが、そのままだとビデオテープの劣化も進むので、アーカイブが目的ではないでしょうか。
【エムズの片割れより】
HDMI設定は、標準になっていたので、高速通信モード(18Gbps)に変更しました。
これで少しは画質が向上するのかな??設定はほとんど標準のままなので・・・
ドラマは4Kよりも、2Kの1.3倍の字幕付の方が自分にとってメリットがあると思っているだけで、画質の差ではありません。
SONYは4Kが1.3倍再生が出来るのですか?
自分は、TVはREGZA、レコーダーはPanaと決めているのでSONYは研究したことがありません。
何やかや言っても、結局五輪は開催されるらしいので、4Kのチャンネル録画が出来るDIGAが欲しいかな・・・と考え始めました!?
4Kは再放送ばかりなので、意味ないのかな??
投稿: classical.s | 2021年6月17日 (木) 23:12
>高速通信モード(18Gbps)に変更しました。
これで少しは画質が向上するのかな??
4KHDR番組で差が出ると思います。そもそも高速通信モードにしないと、4Kレコや4Kチューナーを4KTVにHDMI接続した場合、HDR番組はSDRになってしまうと思います。
>SONYは4Kが1.3倍再生が出来るのですか?
私もレコーダーはパナしか所有していませんが、ソニーの新型4Kレコでは可能になりました。
https://www.sony.jp/bd/products/BDZ-FBW2100_1100/feature_6.html
【エムズの片割れより】
色々とアドバイスありがとうございます。
ところで、4Kの全録の「DMR-4X1000」「DMR-4X600」はどう評価しますか?
NHKのBS4Kの全録(チャンネル録画)の為だけに、入手しようかな・・・と迷っています。
投稿: classical.s | 2021年6月18日 (金) 22:59
>ところで、4Kの全録の「DMR-4X1000」「DMR-4X600」はどう評価しますか?
済みませんが、個人的には興味ないです。
現在パナの4Kレコ2台使用しているので。
投稿: classical.s | 2021年6月19日 (土) 06:37
黒沢映画といえば、1番初めに見た映画は、子供のころ、親に連れられて(あるいは親はあまり映画など見る人ではなかったので、近所の家族が見るとき一緒に連れて行ってくれたのかもしれない)映画館でみた「羅生門」と「生きる」でした。「生きる」についていうと、志村喬がブランコにゆられながら「いのち短し、恋せよ乙女・・・」(ゴンドラの歌)と歌いながら死んでいく最後の場面が強烈な印象として私の頭の中に残っていました。ただ、これが何という映画のどの場面だったか長い間わかりませんでした。この映画を2度目に見たのが1980年代。アメリカの大学にいたとき大学のキャンパスに「生きる」という黒沢映画がやってくるというので見にいって、最後の場面になったとき、あの映画の光景を子供の時に見たことを思い出しました。吉井勇作詞の「ゴンドラの唄」は、森鴎外訳のアンデルセンの「即興詩人」の中のベネチア民謡からとったものだといわれていますが、そうだとすると、アンデルセンのそのベネチア民謡とは?塩野七海さんはその著「わが友マキアヴェッリ--フィレンツェの存亡」の中でイタリア・フィレンツェの支配者メディチ家のロレンツォ・デ・メディチによって、謝肉祭のために書かれた「バッカスの歌」から来ているのではないかと推測しています(中公文庫の135-137ページ)。最も有名な、この歌の一番は
青春とは、なんと美しいものか
とはいえ、みるまに過ぎ去ってしまう
愉しみたい者は、さあ、すぐに
たしかな明日は、ないのだから
となっている(塩野七海訳)。ロレンツォのこの歌はフィレンツェにとどまらずにヴェネチアでも大流行し、ずいぶんと後になっても、謝肉祭には欠かせない歌になっていたらしいので、これが「即興詩人」の中のベネチア民謡となっていったのでしょうか?このロレンツォの詩と吉井勇の「ゴンドラの唄」の
、
いのち短し、恋せよ乙女
紅きくちびる、あせぬまに
熱き血潮の、冷めぬまに
明日の月日は、ないものを
とを比較してみてください。塩野さんの推測が正しいとすると、ルネサンス時代のフィレンツェで生まれた歌が「ゴンドラの唄」となって日本の大正時代に流行したことになります。
【エムズの片割れより】
なかなか高尚なコメントを頂き、何ともコメントできません!?
投稿: KeiichiKoda | 2021年6月20日 (日) 10:03
最近亡くなったジャーナリスト・評論家の立花隆さんの著書に「武満徹・音楽創造への旅」(文芸春秋社、2016/2/22第一刷)という本があります。この本が出たあとで、日経新聞に音楽学者の岡田暁生氏の書評が載りました。少し引用すると、「驚くべき本である。700ページを超える(注。2段組みで781ページ)書物をこれだけ夢中になって読み通したのは久しぶりだ」とあり、後半には「圧倒されることはまだある。音楽を専門としない者がこうしたインタビューをする場合、土俵を文化史一般に引き移すことにより専門知識の不足を補おうとする誘惑は小さくないはずだが、立花はこの本の焦点を現代音楽の創作のど真ん中、つまり「調性」の問題に持ってくるのだ。伝統的なヨーロパ・クラシック音楽の語法の柱である「ドミソ」の和音と「ドレミファ・・・」の音階に対して現代の日本の作曲家としてどう対決するのか。受け入れるのか否定するのか。日本的なものへの回帰をよしとするか否か。旋法、対位法、12階技法、ソナタ形式、偶然性といった専門タームが容赦なく飛び交う領域に、立花は平然と踏み入り、それでいてダイアローグはまったく破綻を見せない。」と書いています。立花さんは「知の巨人」と呼ばれて、あらゆることに精通する博覧・博識の人ですが、音楽とくに現代音楽にも造詣が深いのはちょっと驚きでした。この本の第1章の中の「武満作品との出会い」というところで、立花さんは早い時期(大学へ入学したころ)から、現代音楽の数少ない聴衆の一人で、1960年9月に朝日新聞とNHKの共催で、3日間にわたって日本と外国の現代音楽の代表的作品を一挙に演奏しようとした「当時としては破天荒な試みであった」東京現代音楽祭にも通い詰めたという。このころにまだ一般にはほどんど無名だった武満徹の作品に出合い、「武満徹という作曲家が作り出す音に絶えざる関心を持ち続けてきた」ので、「文学界」編集部から武満徹を長時間インタビューして彼の創作の秘密を聞き出してくれないかという依頼を受けたとき、喜んで引き受けたのだという。先日(6/30)のNHKクローズアップ現代「立花隆・秘蔵の未公開資料」の中で利根川博士はノーベル賞受賞後のインタビューに関して自分の書いた専門の論文をすべて読んで臨んだ立花さんにはたいへん驚いたと言っていましたが、武満氏のインタビューにも徹底して準備して臨んだようで、武満氏をして「ぼくはあの人(立花さんのこと)だったら、何か問われたら全部しゃべってしまおうと思っているんです」といわしめたようです。武満氏がかかわった黒沢映画の映画音楽についてこの本から紹介しようと思ったのですが、立花さんが急逝したので前置きが長くなってしまいました。
【エムズの片割れより】
立花隆さんの本は、正直読んだことがありませんが、TVなどで知る限り、勉強の虫。
現代音楽にも精通していましたか・・・
当サイトでも、立花さんのことを挙げたことがありましたが、これを機に、立花さんの著書を何か読んでみようと思っています。
投稿: KeiichiKoda | 2021年7月 7日 (水) 08:32