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2021年6月27日 (日)

「令和落首考 2021年前半」

恒例の「令和落首考 2021年前半」。やはりコロナ・ワクチン・オリンピックが主題のようだ。

令和落首考 2021年前半 山丘春朗

 〈中国もロシアも嗤(わら)う民主主義〉

 〈後手後手と無策で続く過去最多〉

 トランプ米大統領の支持者らが議事堂に乱入して5人が死亡した1月7日(日本時間)、日本では新型コロナウイルス感染症の第3波に伴う緊急事態宣言が首都圏に出されました。

 めでたさも中くらい、とさえ言えない新しい年の始まりでした。

 〈怒り持て新聞を繰る切なさよ〉

 以来きょうまで、この句のような腹立ちにとらわれた人は多かったのではないでしょうか。早くも過ぎていった半年を朝日川柳で振り返ります。

   ◎  ◎  ◎

210627asahi  松の内に東京の1日の感染確認は2千人を超え、全国では8千人に迫りました。〈この一年何してたのと問うコロナ〉。「ちぐはぐ感」ばかりだった政治への不満と皮肉です。感染者は各地で最多となりました。〈都道府県対抗みたい昨日今日〉。帰省もかなわず〈ふるさとの感染数も見る日課〉。

 医療現場は逼迫(ひっぱく)し、崩壊の危機が連日ニュースに。「自宅療養」という名の「ほったらかし」が問題になりだします。〈感染後入院叶(かな)う果報者〉〈運がいいなどと言われて入院し〉。そんな庶民を尻目に、感染・無症状で即入院という某元大臣もいましたっけ。

 春。第4の波が関西方面からわき上がります。〈ホラ貝が鳴る大阪の春の陣〉。リバウンドは風雲急。〈縄ほどき又(また)縄をなう浪花流〉は見通しの甘さへの批判です。日々上昇する棒グラフに〈まだ誰も知らぬ第4波の高さ〉。

   ◎  ◎  ◎

 頼みの綱のワクチン接種は先進諸国に比べて大きく出遅れます。〈ジェンダーとワクチン接種下位競う〉。接種率はOECD37カ国中の最下位(4月末)。ちなみに世界経済フォーラムによる男女平等の報告書では日本は156カ国中120位でした。

 海外頼みのワクチンの数量が当初は少なかった。〈ワクチンは雀(すずめ)の涙が主成分〉。高齢者への接種予約が始まるとアクセスが殺到します。〈寝て待てぬ果報もあると知る接種〉

 〈さすりつつ待ってる腕に予約なし〉と大勢が嘆く一方、首長みずから先に接種したり、地元の名士らが優先接種を要請したりするケースが明るみに出ました。〈まっ先に逃げた船長思い出す〉〈悲しきは偉い方ほど身勝手で〉。沈没船の船長は一番あとで避難するもの。地位ある人ほど内なる規律の高さを求められるはずなのに、逆向きの話となれば民心はすさみます。

   ◎  ◎  ◎

 目を転じれば、菅義偉首相の息子が勤める放送関連会社などによる総務官僚の接待漬けが露見しました。〈何食わぬ顔して食らうウリスモモ〉〈それにしてもよく群がると笑う蟻(あり)〉。1回で7万4千円もの酒食を供された人もいて、我らあきれました。情けない役人とは違って〈春宵(しゅんしょう)の手銭(てせん)の酒の旨(うま)さかな〉は川柳子の意気でしょう。酒は身銭で飲むべかりけり、なのです。

 そしてオリンピック。

 2月、東京五輪大会組織委の森喜朗会長の女性を蔑(さげす)む発言への批判が広がりました。〈森さんは女は黙って五輪とや〉〈男とは時間かからぬイエスマン〉はどちらも女性から。〈家事もせず「森けしからん」わが亭主〉も女性でした。男よ自分を棚に上げるなと。

 3月、感染拡大の中で聖火リレーが始まりましたが、辞退者が相次ぎ〈走る人走らぬ人も言い訳し〉。あくまでも開催で押す政府は「安全安心」を空疎に唱えるばかり。日本の事情をかえりみる気配のないIOCの独善には〈バッハ言う国破れても五輪あり〉。

   ◎  ◎  ◎

 オリンピックに「五輪」の言葉をあてたのは読売新聞記者の川本信正さんだったそうです。もう80年以上の歴史があります。数ある「略語」の中でも簡潔にして秀逸、国民的財産のような一語でしょう。くっきりと座りのいい3音は、新聞の見出しにも、句づくりにも、ありがたみは格別です。

 その2文字が朝日川柳で今大会ほど後ろ向きに詠まれたことがあったでしょうか。〈そもそもが動機不純の五輪なり〉〈失政を五輪で隠す夏来たる〉〈始まれば感動すると侮られ〉

 中止か延期、せめては無観客を求める民意や専門家の懸念を退けて、かくも祝祭感を欠く五輪まで1カ月を切りました。〈辛(つら)いのは五輪が嫌いになる自分〉。苦く同感する人もいることでしょうね。 (「朝日川柳」選者)」(2021/06/27付「朝日新聞」p8より)

先進国中、ワクチン接種の最下位を行く日本。それなのに、五輪開催に突き進む政府。国民やマスコミも、もう諦めたのか、「中止」という言葉があまり出なくなってきた。
しかし、五輪による感染再拡大の懸念は大きく、とうとう天皇まで懸念を表明される事態に。

先日まで、NETFLIXで「ザ・クラウン」全40話をカミさんと一緒に見た。エリザベス女王が、毎週1回首相と会談するが、前提として君主は首相を支持。しかし心中は、そうで無い場合も多く、言葉を選びながら首相に話をする。なかなかツライ立場・・・
天皇も同じだろう。国民の事を考え、何かを言いたいが、政治的発言が許されていない、もどかしさ・・・

このドラマで、こんな場面があった。非難囂々の首相を辞めさせるように女王に進言があったとき、「それは次の選挙で、国民が判断すること」と。

7月4日は都議選がある。ここで都民が政治をどう判断するのか? そして秋の衆院選で、国民が今の政権をどう判断するのか?

五輪では、その提携病院が、五輪関係者のために、あらかじめベッドを空けておくようにと、要請があったとか。コロナ患者で埋まっているベッドを・・・

もし、五輪選手が感染して病院に入院し、閉め出されて自宅待機で死ぬことになった日本人が発生した場合、五輪が日本人を殺したことにならないのか??
それで無くても、自宅待機で孤独死している人が居るというのに・・・

明るい話題は、大谷選手の米国での活躍ただ一つ。
他に明るい話題は無かったかな~~~
1年半経って、いまだに世界的に終息が見えないコロナ渦。
半年後の「令和落首考」で、どんな句が挙がってくるだろうか??

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