« なかにし礼の「兄弟」を読む~森田童子は姪だった | トップページ | カルチャーラジオ「老化を防ぐ最新医学」 »

2021年6月 2日 (水)

国難と政治の虚無

今朝の朝日新聞にこんな記事があった。

「(多事奏論)国難と政治の虚無 現場の奮闘、盾にする過ち 高橋純子
 新型コロナワクチン大規模接種の予約システムには「欠陥」がある。そう調査報道した朝日新聞出版と毎日新聞に防衛省が抗議したことに呼応し、あの人が動いた。
210602takahashitajisouron  「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える」(安倍晋三氏のツイート)
 あまりに奇天烈(きてれつ)な難癖に驚き、マスクの下で音読してみる。メガネが曇る。
 大きな穴を見つけたら、「ここに穴があります(気をつけて)」と世間に知らせるのはメディアとして当たり前のことだ。それを愉快犯呼ばわりする前首相のやり口になんだかすっかり慣らされてしまった感があるが、本来とても異様なことである。
 「敵」を名指すことで問題の本質から目をそらさせ、失政をごまかし、仲間内の結束を高めて政権の底支えにつなげる。その便利な敵役に使われてきたのが一部のメディアだ。権力に目の敵にされるのは、不愉快だけれどある意味名誉なこと。寵愛(ちょうあい)されるよりよほど胸を張れる。
 とはいえ「身内」が犯した真正の罪への説明責任を、いまだ果たしておられぬ前首相である。「桜を見る会」前夜祭をめぐる公設第1秘書(当時)の政治資金規正法違反についてホテルの明細書を示す。公職選挙法違反の河井案里氏陣営に自民党が破格の1億5千万円を出した経緯と使途について、当時の党総裁として説明する。それら最低限の責任を放棄したまま放言している前首相は、この国の民主主義にとって「極めて○○な○○と言える」――さて、○に何を入れるべきか。ご意見募集します。
     *
 なにより今回、批判の口火を切ったのが岸信夫防衛相だったことにはもっと関心が払われていい。「この国難ともいうべき状況で懸命に対応にあたる部隊の士気を下げ、現場の混乱を招くことにも繋(つな)がります」
 国難や士気といった言葉を、実力部隊を率いる防衛相がもとより安易に振り回すべきではないと私は思うし、ましてや個別メディアの批判に用いたとなれば警戒心を抱かずにはいられない。自衛隊の「懸命な対応」を、政治が盾に取ってはいけない。ましてや矛にするなどあってはならない。これが防衛省・自衛隊ではなく、たとえば厚生労働省の失態だったら、こんな言い分が通ると踏んだだろうか。普通に謝罪し粛々と対策が練られたのではないか。厚労省の役人であれ自衛隊員であれ現下の奮闘に序列などないはずなのに、なんだろうこれ?
 為政者が何を利用し、私たちは何に利用されようとしているのか、目の前の危機対応に追われて視野が狭まり、より大きな危機を呼び込んではいないか。よくよく注意が必要なことは歴史が教えてくれている。
     *
 コロナ禍にあって思うのは、安倍政権の8年弱はやはり「痛手」だったということだ。政治も行政も批判に正面から向き合わず、うそや詭弁(きべん)の糸で紡いだ無謬(むびゅう)の繭の内にこもり、甘え、甘やかされてきた。この1年余の間、目の当たりにした後手と無軌道はその結果とみるべきだろう。
 ナンバー2として権勢をふるっていた人は首相となったいま、頼りないを通り越して痛々しい。このたび再延長された3度目の緊急事態宣言に際する4月23日の記者会見、(1)変異株への認識が甘かったのでは?(2)自身の政治責任をどう考えるか?と問われた首相の答えは次の通り。長いが引くのでかみしめてほしい。この虚無を。ひとりひとりが引き受けている痛みとの落差を。
 「そうした変異株の対策を行うことが大事だというふうに思っています。ただ、その対策を講じることというのは、基本的な従来の対策をしっかりやること、そういうことの中で対策を、そちらの勢いの方が強かったということだというふうに思います。それで、今回、人流を、このゴールデンウィークを中心として、短期間の間ですけれども止めさせていただく、そういう対策を講じたということです」 (編集委員)」2021/06/02付「朝日新聞」p11より)

高橋純子氏の「多事奏論」は歯切れが良く、いつも楽しみにしている。
今回はナゾナゾがあった。
「それら最低限の責任を放棄したまま放言している前首相は、この国の民主主義にとって「極めて○○な○○と言える」――さて、○に何を入れるべきか。ご意見募集します。」
だって。

自分だったら、「極めて(危険)な(存在)と言える」と入れてみたがどうだろう。

それにしても、「ナンバー2として権勢をふるっていた人は首相となったいま、頼りないを通り越して痛々しい。」という指摘は図星。
前の首相は、言葉多くして内容が無かったが、今の首相は、言葉少なくして、更に内容が無い。その冴えたる物が、文末の記者会見での首相の回答。日本語としても意味不明だし、本当に日本人かと疑いたくなる。

今、毎日カミさんの友人から薦められて、Netflixの「ザ・クラウン」というドラマを夫婦で見ている。エリザベス2世のドラマである。現役の君主をドラマ化してしまうのも、日本では考えられないが、なかなか良く出来ていて見応えがある。
君主は何もしないのが仕事。という。でも首相は七転八倒。
どうも日本の首相は、君主のように「何もしない」のが仕事かと思ってしまう。
そして自己の延命の為に五輪に突き進んでいる。小池都知事も代々木公園騒動も同じ。

逆に、反旗をひるがえし始まっているのが尾見会長。
五輪「何のためにやるか明らかでない」 尾身氏、政府に説明求める
 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は2日の衆院厚生労働委員会に出席し、東京オリンピック開催について、「今の状況で普通は(開催は)ないが、やるということなら、開催規模をできるだけ小さくし、管理体制をできるだけ強化するのが主催する人の義務だ」と主張。その上で、「こういう状況の中でいったい何のためにやるのか目的が明らかになっていない」と述べ、開催する場合は感染予防に向けた政府による丁寧な説明が必要だとの認識を示した。
 尾身氏は「感染リスクを最小化することはオーガナイザー(開催者)の責任。人々の協力を得られるかが非常に重要な観点だ」と指摘。その上で「なぜやるのかが明確になって初めて市民はそれならこの特別な状況を乗り越えよう、協力しようという気になる。国がはっきりとしたビジョンと理由を述べることが重要だ」と五輪開催に向け、菅義偉首相による説明を求めた。・・・」(2021/06/02緒付「毎日新聞」ここより)

外国選手の日本入りも始まった。このままなし崩し的に始まるのであろうか。
何とも、全てが情けない日本の現状である。

<付録>
今朝(2021/06/02)のTV朝日の「モーニングショー」での、玉川さんの発言(9:09)を聞いてなるほどと思った。
相馬市のワクチン接種が迅速なことについて、「結局は準備だということになると、準備を指示するのはリーダーなんですよね。政治的リーダー、要するに行政のトップ、その行政のトップの見識が全てに作用するということだと思いますよ。僕、検査体制にしても接種体制にしても同じだと思います。結局はどこに住んでいるかで決まるんですよ、今。日本では。どこに住んでいるかということは、一体、誰が政治的なリーダーかということで決まる。だから、誰がやっても同じではないんですね。市長にしろ知事にしろ総理大臣にしろ、一体、誰がトップかということで大きく変わってくると。危機になったらそこが肝だということを我々は思い知らされたということなんじゃないですか。」

|

« なかにし礼の「兄弟」を読む~森田童子は姪だった | トップページ | カルチャーラジオ「老化を防ぐ最新医学」 »

コメント

安倍、菅政権には、うんざりです。圧倒的多数を占める自民党政権のため、専制的な政治が行われ、メデイアさえも遠慮している現状。旧民主党政権崩壊から約10年。これを変える最大のチャンスが、半年以内に迫った総選挙です。4月の野党共闘の成果を踏まえ、第1のポイントは、小選挙区での共産党をも含めた野党候補の1本化でしょう。第2のポイントは、昨日の毎日新聞夕刊で、野党応援団の山口二郎法政大学教授が提案しています。コロナ渦の国民の目の前にある大きな問題解決策として、大企業に対する内部留保への課税と言った、与党とは違った政策を思いっきり、前面に大きく出すことです。仮に過半数がとれなくとも近づけば、政治状況は大きく変わります。今回がラストチャンスのように思えます。皆さんはどう思いますか。

【エムズの片割れより】
毎回、選挙での変革のチャンスがあるのに、なぜこの国は、のんべんだらりとそれをしないのでしょう。
内閣支持率をみても、まだ**%も指示している人がいる!とびっくりします。
国民性なのか、何なのでしょうね?

投稿: かうかう | 2021年6月 3日 (木) 15:54

2022年からは、すべての高校生が必修課目「歴史総合」で「日本と世界の近現代史」を学ぶことになる。事件の年号を記憶させ入学試験に出すようなことを止め、太平洋戦争について考えさせるなど、歴史教育も改善するとのこと。最近、テレビの池上彰さんの番組で知りました。
太平洋戦争が起きた原因、結果、教訓を知らない高校生、新聞を読まない高校生が、スマホに夢中になる大人になるのではないでしょうか。
日本の戦後教育が間違っていたのではないか。ニクソン大統領が演説で使用した「サイレントマジョリテイ」、ものを言わない多数は、賛成した大衆である。敢えてこうした教育を進めた指導者は悪人であったといえるでしょう。採点が難しく、時間がかかっても、入学試験の記述試験は必要です。
2022年、高校の授業に新教科目導入、「歴史総合」とは?・・・・で検索してみてください。

投稿: かうかう | 2021年6月 4日 (金) 22:50

 今夜28日のBS-TBSの番組「報道1930」は、立花隆さんの追悼番組でした。保阪正康さんが、2019年に開催されたシンポジウムで、立花隆さんの講演「日本の運命」を紹介していました。その内容の骨子が、最新のサンデー毎日に掲載されています。今なら、下記のHPで見ることが出来ます。
一言で言えば、今日の日本の運命は「ほとんど滅びるのが確実です」とのことです。一読をお勧めします。

 yahooで、
追悼 立花隆は歴史に呼ばれて、この世に生まれてきた 世代の昭和史/40=保阪正康〈サンデー毎日〉
で検索してみてください。

【エムズの片割れより】
ご紹介ありがとうございました。
読んでみました。
なかなか難しい文章ですが「世代の責任」という言葉が印象に残りました。

「日本は滅びるのが確実な状況」は日本人の誰もが薄々気づいていること。
今の日本の政治の世界を見ても、学術の世界を見ても、直近ではコロナ対策・五輪にしても、もうメチャクチャ。
孫世代が本当に可愛そう・・・

投稿: かうかう | 2021年6月29日 (火) 00:15

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« なかにし礼の「兄弟」を読む~森田童子は姪だった | トップページ | カルチャーラジオ「老化を防ぐ最新医学」 »