上野千鶴子さんの「在宅ひとり死のススメ」を読んで
だいぶん前だが、NHKラジオ深夜便で、『「旅立ちもおひとりさまで」社会学者…上野千鶴子』(2021/04/22放送)を聞いた。
今年1月刊の「在宅ひとり死のススメ」という本についての話だが、話を聞きながら、何故か読んでみたくなって買ってしまった。
まずは、そのお話を聞いてみよう。
<NHKラジオ深夜便「旅立ちもおひとりさまで」社会学者…上野千鶴子>
朝日新聞にこの本の紹介があった。
「(売れてる本)『在宅ひとり死のススメ』 上野千鶴子〈著〉
■不安から勇気へのノウハウ
東京で一人暮らしをする私の家族(親と兄弟)は、全員北海道に住んでいる。コロナ禍で、「何かあっても遠方の家族には頼れないんだ」と思った時、「老後」の不安がリアルなものとして押し寄せてきた。今は40代。このまま老いて、子も配偶者も金もない高齢者になった時、ひどい目に遭わされたり安楽死させられたりするのではないか。老後の不安はそれに尽きる。 本書は、そんな「おひとりさま」第一人者の上野千鶴子氏による「家で一人で死ぬノウハウ」だ。
まず励まされるのは、「独居高齢者の生活満足度のほうが同居高齢者より高い」というデータ。さらに、「子無しおひとりさまは満足度がもっとも高く、悩み度が低く、寂しさ率が低く、不安率も低い」という調査結果も紹介されると俄然(がぜん)勇気が湧いてくる。
そんな本書の第3章のタイトルは「施設はもういらない!」。高齢者イコール施設入所という思い込みを鮮やかに否定する著者は、施設経営者らに尋ねる。「あなたが要介護になったら、ご自分が経営していらっしゃるこの施設でお世話を受けたいと思いますか?」。一人をのぞいて、その答えは「ぎりぎりまで家にいたい」。持ち家もあるのだから、わざわざ賃料を払って施設に入るのではなく、そのお金を自費負担サービスに充てればいいという著者の主張に納得だ。 それでは、在宅で死ぬにはいくらかかるのか。80代の方の自己負担額は死の直前3カ月で月額7万~8万円。自費での夜間ヘルパー代を入れての額だ。看取(みと)りのコストは病院が最も高く、次に施設。在宅が一番安いというから驚く。「家で死ぬ」なんて、よほどのお金持ちか孤立の果ての孤独死くらいだと思ってたけど、実は違うのだ。
徹底して「自分はどうしたいか」という目線から書かれた終末期のノウハウ。最期は単身世帯という人も多いからこそ、重要な一冊だ。 雨宮処凛(作家・活動家)」(2021/04/17付「朝日新聞」ここより)
この本のスタートは、“ひとり暮らしの方が、夫婦二人暮らしよりも、満足度も高く、悩みも少ない”ということ。このデータは、なかなか面白い。しかし、このデータは、“女性のひとり暮らし”を主に意味しているのだろう。そもそも老人の一人暮らしは、平均寿命から言っても、女性が圧倒的に多いのだから。
この本で気になった所を抜き書きしてみると、
「満足のいく老後」の三条件
①慣れ親しんだ家から離れない
②金持ちより人持ち
③他人に遠慮しないですむ自律した暮らし」(p33)
「サ高住のサービスの品質管理はほとんど野放し状態です。最近ではサ高住でも看取りをしてもらえるようになりましたし、評判のよいサ高住があるのもたしかです。事業者かたくさん参入すれば、そのおいたで競争が起きて淘汰されていくでしょう。それでよいのですが、それなら何も自宅を離れて賃貸住宅で集団生活をしなければならない理由もなさそうです。家賃を払わなくてもすむ自宅で、サ高住と同じく訪問介護・訪問看護・訪問医療の3点セットを外付けすればよいだけですから。」(p66)
「高松市での高齢者介護のシンポジウムに参加したとき、この見守りネットワークに参加している民生委員さんの発言が印象的でした。その方は、「見守りは監視とすれすれ」と発言しました。そういえば戦時中には向こう三軒両隣とか「隣組」という相互監視システムがありました。プライバシーのない息の詰まるような監視社会です。
もし孤独死がそんなに不安なら――ほとんどの場合、それは残された側の面倒を避けたいというエゴイズムのあらわれですが――高齢者の居室に監視カメラかセンサーをつけておけばよいのです。24時間ぴくりともセンサーが反応しなかったら、ドアを蹴破ってでも中に入ればよいでしょうが、これこそ究極の監視社会でしょう。
これも心配しなくてもすみます。ほとんどの高齢者がいやおうなく経過するフレイル期に、介護保険のお世話になるからです。要介護認定率は年齢とともに上昇し、平均寿命を超えた90歳以上では、女性83.0%、男性67.0%。7、8割以上の高齢者が介護保険のお世話になって死ねます。要介護認定を受ければ、ケアマネがつき、訪問介護が入り、デイサービスのお迎えが来る。週に2回でもひとの出入りがあれば、「1週間以上経過して発見される」という事態は避けられます。」(p91)
(フレイル=加齢に伴い身体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態)
「「ボケこそ恵み」と言ったのは、京都の「わらじ医者」こと、早川一光さん。認知症者には過去と未来がなくなり、現在だけがあります。死別の哀しみも、予期される死への恐怖もなくなることでしょう。」(p166)
まあ他にも色々あるが、際限無いので・・・
誰も、連れ合いが居る居ないに拘わらず、最後は”おひとりさま”。普通男が先に逝くので、その通りになれば良いのだが、問題はカミさんに先立たれたとき。この時は、恐怖。だから、連れ合いを亡くした男は、平均3年で後を追うという。
我々も、同年代。その時を考える時期。残されたときにどうするか。老人ホーム入る?独居で自宅に止まる?しかし、ボケたら????
という不安に、上野さんは明快に自分なりの解をこの本で示されている。
これが自分の正解かどうかは分からない。しかし、なるほど、とうなずく言葉も多い。
しばらく本棚に置いておいて、たまに読み直そうか。自分の考え方がどう変わっていくのか・・・
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コメント
ありがとうございます。さっそく聴かせていただきました。「デフォルトでおひとりさま」の上野さんのお声は耳にやさしく一級のエンターテイナーです。とくにラジオでは。
【エムズの片割れより】
上野さんは、”おひとりさま”のシンボルになっていますね。
投稿: kmetko | 2021年5月10日 (月) 09:46
「旅立ちもおひとりさまで」を聞かせていただきました。妻に6ヶ月前に先立たれた85才の一人暮らしとして、身につまされる問題でした。現在は一人暮らしですが、85才にもなれば体はあちこち部品が壊れかけているポンコツで、つい2週間前も心房細動が発生して色々検査を受けています。1年ほど前に要介護の認定を申請しましたが認定されませんでした。近くに住んでいる三女が気にかけてくれていますが、介護が必要になった場合に対応できないという理由で施設への入居を勧められています。妻は亡くなる前認知症で5年ほど自宅で私一人で介護しましたが、終わりの頃は一瞬も目を離せない状態になり、施設に入居して2年間介護のプロのお世話になり他界しました。自分の番がきた現在、自宅での一人暮らしで、一日黙ったきりで、夕食は宅配の弁当、朝昼はあるもの少し口にするような生活ですが、施設に入り、三食食べさせてもらい、人との接触もあり、体調の不調にも対応してもらえる状態のほうが自分も、気にかけてくれる子供も安心だと思います。コロナが一段落としたら施設入居する予定です。上野先生のお話は有難く聞かせていただき望ましいと思いましたが、現実に実現するには条件があると思います。自分のことばかりで申し訳ありませんが、感想を書かせていただきました。
【エムズの片割れより】
自分の10年先を想像してしまいました。
たぶん自分もひとりになったら一日中声を出さず、声が枯れていくのでしょう。
前にお袋を施設に入れたときに「こんな所に入れて、何もする事が無いじゃ無いの」と言われて、徐々に認知症が進みました。
施設に入っても、テレビばかり見ているのでは無く、何か自分の趣味を自発的にする事が大事な気がしています。
自分も将来、施設に入ったとき、食事は頼ったとしても、生活は自分の生活をしたいものだと思っています。
投稿: nobby | 2021年5月14日 (金) 12:57