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2020年10月17日 (土)

(今こそ!読みたい)夏目漱石!?

今朝(2020/10/17)の朝日新聞にこんな記事があった。

(今こそ!読みたい)夏目漱石 教室で出合う「国民的作品」

 “国民作家”といえば? そう聞いたところ、夏目漱石の支持率は68%で、2位以下の芥川龍之介(60%)や川端康成(47%)、司馬遼太郎(同)を引き離しました。その背景は、「こころ」や「坊っちゃん」が国語教科書の定番教材になっていることが大きいと考えられます。今後はどうなるでしょうか。

201017souseki1  今こそ読みたい作品のトップは「坊っちゃん」。「親譲りの無鉄砲」で「江戸っ子」の「おれ」が、東京の物理学校(現・東京理科大)を卒業後、数学教師として赴任した四国の中学校で、陰湿な赤シャツ教頭らと対決する。「おれ」を唯一かわいがってくれた「下女」の「清」というほろりとさせる存在も出てくる。何度も映像化され、中学校の教材としても定番だ。
 勧善懲悪ともいえる世界観で、支持された理由は、ドラマ「半沢直樹」が大ヒットした背景とも重なるようだ。
 「鬱屈(うっくつ)した世の中。坊っちゃんと一緒に憤慨したり、清にあきれられたり、普通に楽しみたい」(東京、57歳女性)、「明治文学にしては珍しくスカッとした。こういう時世だからこそ、何かスカッとするものが読みたい」(東京、27歳男性)。

 2位「吾輩は猫である」はデビュー作。擬人化した猫の視点で書かれ、〈吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生(うま)れたか頓(とん)と見当がつかぬ〉という導入部はあまりにも有名だ。だが、中編の1位に比べて読破率はぐっと下がる。
 「タイトルはめちゃくちゃ有名。書き出しも知ってる。なのに読んだことがない」(奈良、43歳男性)、「中学生の時、文章が難しくて読書好きであったのが読書嫌いになった。リベンジしたい」(大阪、59歳男性)。
 俳句雑誌「ホトトギス」に掲載された短編が評判となり、書き継がれて長編となった。落語のパロディーのような話を織り込むユーモア小説だが、〈呑気(のんき)と見える人々も、心の底を叩いて見ると、どこか悲しい音がする〉と猫に語らせるなど、哀切も漂わせる。しかも衝撃のバッドエンドが待ち構えている。
 「学生時代に読んだ時はユーモラスで面白いとしか思わなかったが、今はその裏にある悲しさや理不尽さが理解できるようになったと感じる」(大阪、66歳男性)、「猫好きにあのラストはつらい。『吾輩』執筆時の作者自身の私生活を書いたとされる『道草』を読んで、どうしてあの終わり方なのかヒントを得たい」(大阪、48歳女性)。
     *
 そして、3位「こころ」。「岩波文庫 読者が選ぶこの一冊」(2013年)で1位、「新潮文庫ロングセラーTOP20」(20年)でも1位と、漱石の不動の代表作と言える。
 1960年代から、高校国語の教科書がこぞって採用する定番教材に。「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の3部構成だが、抜粋されるのは、「先生」が「私」への遺書で、自分と妻、自殺した友人Kの関係について打ち明ける「下」にほぼ限られている。
 「高校時代、読書感想文を書かされたが、時間切れで真ん中の『両親と私』は飛ばして読んだ。今度こそちゃんと読んでみたい」(東京、62歳男性)、「高3の現代国語で一部を勉強し、文庫を購入して読んだ。言葉は人を殺す凶器になってしまうこと、そして自分を殺す凶器にもなってしまうこと、考えさせられた。今ならどう読むか」(大阪、55歳女性)。
 現在まで多様な解釈論争を生み出した問題作でもある。「三角関係」に西洋文明と東洋思想に引き裂かれた著者の心情を読み込んだり、語り手の「私」が「先生」の死後、「奥さん」と結ばれていると推測したり。最近では、「先生と私」「先生とK」の関係に注目し、BL(ボーイズラブ)小説として読み直す試みまで登場している。
 それもこれも、教室で必ず出合う「国民作家」の「国民的作品」であればこそ。だが、今後はといえば、先行きは暗い。
 高校で学ぶ国語は、22年度実施の新学習指導要領に基づいて再編され、論理的・実用的な文章を扱う「論理国語」と、文学的な文章を扱う「文学国語」という選択科目が登場することになっている。受験への配慮などから「論理国語」が優先され、「文学国語」を採用する高校は少なくなるとみられる。
 「『国民作家』というのも、高校の国語が小説軽視の方向に向かうと無くなってしまうんだろうか、と不安になる」(兵庫、54歳女性)、「文学に重きを置かない国語教育のあり方が続けば、『国民作家』という概念自体が成り立たなくなる」(千葉、63歳男性)。

 ■新聞小説作家だった
 「吾輩は猫である」や「坊っちゃん」で作家としての地位を固めた夏目漱石は1907(明治40)年、東京帝大講師などの教職を辞して、朝日新聞に入社し、専属作家になった。これ以降、ほぼすべての作品が朝日新聞紙上に発表された。
 『漱石と日本の近代』(新潮選書)や『漱石入門』(河出文庫)などの著書がある早稲田大学の石原千秋教授(日本近代文学)によると、新聞小説作家だったことが、漱石が今も国民的に見えることと関係しているという。
     *
 朝日新聞社が漱石に期待したのは、中・上流階級が集中して住み始めていた東京・山の手での読者獲得。そのため、小説のほとんどが山の手を舞台とした。
 「当時の山の手の富裕層の関心事の一つが、明治民法下での遺産相続問題。登場人物の多くが相続をめぐる問題を抱えています。近代化はいわば日本の山の手化。豊かになった戦後の日本で、漱石の描く家庭がそんなに古く見えないのは、山の手というマーケットを意識していたからです」
 一方、漱石作品のなかで「こころ」が高校国語の定番教材化したのは、著者の意図と関係なく、友を裏切ってはならぬというようなモラルを生徒に教えるのに、都合が良かったからだとみる。しかし、漱石自身は自分で結論は書かず、読者にゆだねた作家だと、石原教授は言う。
 「今後、漱石が忘れ去られてしまうことに懸念があるとすれば、すぐに結論が出ないことに人々がますます関心をなくすこと。そういう社会は息苦しい」(坂本哲史)

 <調査の方法> 9月中旬にアンケートを実施。1324人が回答した。夏目漱石の長中編小説や短編集、随筆26作品から選んでもらった。11位以下は(11)倫敦塔(12)硝子戸の中(13)彼岸過迄(14)道草(15)行人――と続く。」(2020/10/17付「朝日新聞」b2より)

<(今こそ!読みたい)夏目漱石 >
①坊っちゃん(1906年)

②吾輩は猫である(1905年)
③こゝろ(1914年)
④三四郎(1908年)
⑤それから(1909年)
⑥草枕(1906年)
⑦門(1910年)
⑧夢十夜(1908年)
⑨虞美人草(1907年)
⑩明暗(1916年)
⑪倫敦塔(1905年)
⑫硝子戸の中(1915年)
⑬彼岸過迄(1912年)
⑭道草(1915年)
⑮行人(1912年)

夏目漱石はよく「文豪」と称される。他の作家ではあまり聞かない。広辞苑で見ると、

ぶん‐ごう【文豪】‥ガウ
 文章・文学にぬきんでている人。文章・文学の大家。「明治の―」

とある。
日本人にとって特別な存在。しかし作品数は意外と少ない。wikiによると、中長編小説は15作品、短編小説は9作品である。

当blogは“ベストテン”が好きなので、こんな記事もつい気になるのである。
そう言えば、前にも同じようなことを書いた事があったな・・・と振り返ってみると、13年前にも「「夏目漱石展」に行った」(2007/10/27)(ここ)という記事で、採りあげていた。

「次世代に伝えたい夏目漱石の作品は?」
朝日新聞(2007/10/24 P29)に、ネクストエージランキングと称して「次世代に伝えたい夏目漱石の作品は?」という記事が載っていた。
下記は、50歳以上12,097人の複数回答である。

①吾輩は猫である(1905年) 8825人 ②
②坊っちゃん(1906年)   8421人 ①
③こころ(1914年)     4483人 ③
④三四郎(1908年)     3471人 ④
⑤草枕(1906年)      2282人 ⑥
⑥それから(1909年)    1579人 ⑤
⑦虞美人草(1907年)    1188人 ⑨
⑧明暗(1916年)     609人 ⑩
⑨道草(1915年)     467人 ⑭
⑩門(1910年)      415人 ⑦

右の順位は、上の記事での順位である。このランクは50歳以上の人が対象なので、ちょっと違うかな!?

しかし、漱石の作品は、何度チャレンジしても、挫折する。今までちゃんと読んだのは、「こころ」「それから」「門」くらい。「猫」など、何度挫折したか・・・。ストーリーがなく、面白くないのである。

でも、これだけの大家。日本人と生まれたからには!?一通り読んでみる??
そこで、藤沢周平、山本周五郎に続いて、漱石の全作品読破にチャレンジしてみようかな・・・と思った。
本棚を見たら、昔買って“積ん読”している文庫が7冊見つかった。面白くないことを前提に我慢して読んでみるか・・・

ところで話は変わるが、上の記事にある「新潮文庫ロングセラーTOP20」とは何だろう?とググってみた。するとこんな順位だそうだ。

<新潮文庫ロングセラーTOP20>ここより)
(※初版刊行~2019年3月末の累計発行部数)

1位 こころ/夏目漱石(著)
2位 人間失格/太宰治(著)
3位 老人と海/アーネスト・ヘミングウェイ(著)、福田恆存(訳)
4位 坊っちゃん/夏目漱石(著)
5位 異邦人/カミュ/著、窪田啓作/訳
6位 友情/武者小路実篤(著)
7位 雪国/川端康成(著)
8位 破戒 /島崎 藤村 (著)
9位 斜陽/太宰治(著)
10位 塩狩峠/三浦綾子(著)
11位 悲しみよこんにちは/フランソワーズ・サガン(著) 河野万里子(訳)
12位 金閣寺/三島由紀夫(著)
13位 潮騒/三島由紀夫(著)
14位 変身×カフカ/フランツ・カフカ/著、高橋義孝/訳
15位 伊豆の踊子/川端康成(著)
16位 車輪の下/ヘルマン・ヘッセ/著、高橋健二/訳
17位 点と線/松本清張(著)
18位 黒い雨/井伏鱒二(著)
19位 三四郎/夏目漱石(著)
20位 あすなろ物語/井上 靖(著)

ここでも漱石は3作品入っている。やはり教科書の影響は大きいようだ。

上のリストでは、さすがに自分も10冊以上は読んでいた。びっくりしたのは、「友情」や「破戒」が入っていたこと。これらは、高校時代に読んだ本。内容から、とっくに過去の忘れ去られた作品だと思ったいたが、まだまだ現役のようだ。

ともあれ、TVのニュースは、不愉快なものばかり。
TVを消して、読書の秋を堪能しようかな!?

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