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2020年5月31日 (日)

「不可解な謎」日本のコロナ対策

コロナ自粛生活も、とりあえず一段落?
摩訶不思議な日本のコロナ対策の結果だが、先日、海外から見た日本の評価の"まとめ”のような記事があった。

「不可解な謎」 欧米メディアが驚く、日本のコロナ対策

 日本は新型コロナウイルスの流行抑止に成功していたのだろうか。各国のデータを分析し、人口10万人当たりの感染者数や検査件数、死者数を比べた。当初は日本の検査体制や、強制力のない緊急事態宣言の効果を疑問視していた欧米メディアは、現在の状況を驚きとともに伝えている。

200531asahi  朝日新聞は主要7カ国(G7)について、それぞれ10万人当たりの累計感染者数と感染の有無を調べる検査件数を比較した。検査件数は各国の政府発表に基づいた。米国は各州の発表をまとめた民間の集計値を用いた。また、累計死者数は、世界的にみて比較的被害が抑えられているアジア・オセアニア地域の国々を選び、10万人当たりの人数を比べた。

 この結果、日本はG7で、10万人当たりの感染者数が13.2人で最も少なかった。一方、検査数も最少の212.8件で、最多のイタリアの約4%だった。英国は1日20万件の検査をめざし(日本の目標は1日2万件)、自宅などへ約80万件分の検査キットを郵送している。実際に個人が検査したかが不明なため、今回の比較時に郵送分は含めていない。ただ、含めた場合は1.5倍近い5013.0件まで増える。

 また、10万人当たりの死者数は、アジア・オセアニア地域の多くの国々で日本の0.64人より少なかった。たとえば、初期の水際対策が奏功した台湾の累計死者は7人で、10万人当たりでは0.03人だった。

 英オックスフォード大に拠点を置き、各国の感染データなどを集計している団体「Our World in Data」によると、日本は5月23日時点で100万人当たりの感染者数が世界208カ国・地域のうち多い順から136番目。同じく死者数は94番目だった。中東を除いたアジア地域で日本よりも死者数が多かったのはフィリピンとモルディブだけだ。

 一方、欧州疾病予防管理センター(ECDC)がまとめた各国データを朝日新聞が集計したところ、日本は、G7の中で最も感染拡大の速度を抑え込めていた。感染者が人口1千万人当たり1人以上になってからピークに達するまで、米国やフランス、ドイツが35日前後だったのに対し、日本は52日だった。

 また、G7で1日当たりの新規感染者数の推移をみると、最も多かった時期で、米国やイタリアは1千万人当たり900人を超えていたが、日本は50.9人(4月17日)だった。

 新型コロナウイルスを抑え込んだかに見える日本の状況を、海外メディアは驚きと共に伝えている。強制力のない外出自粛やPCR検査数の少なさにもかかわらず、日本で感染が広がらなかったことに注目し、「不可解な謎」「成功物語」などと報じている。

何から何まで間違って…でも
なぜ日本の感染拡大は広がらなかったのか、欧米メディアが注目しています。専門家はどう考えるのでしょうか。

 米誌フォーリン・ポリシーは日本の新型コロナ対策について「何から何まで間違っているように思える」と指摘した上で、それでも現状は「不思議なことに、全てがいい方向に向かっているように見える」と伝えた。「中国から大勢の観光客を受け入れてきたことを考えると、この死者率の低さは奇跡に近い」「日本がラッキーなだけなのか。それとも優れた政策の成果なのか、見極めるのは難しい」との見方も示した。

 「不可解な謎」と題した記事を配信したのは、オーストラリアの公共放送ABCだ。公共交通機関の混雑ぶりや高齢者人口の多さ、罰則を伴わない緊急事態宣言を「大惨事を招くためのレシピのようだった」と表現。「日本は次のイタリアかニューヨークとなる可能性があった」と指摘した。

 海外ではこれまで、英BBCが「ドイツや韓国と比べると、日本の検査件数はゼロを一つ付け忘れているように見える」と報じるなど、日本のPCR検査数の少なさを疑問視する報道が相次いでいた。米ブルームバーグ通信はこの点について、「第1波をかわしたのは本当に幸運」「(第2波が来る前に)検査を1日10万件できるように準備しなくてはならない」という専門家の話をまとめた。

 英ガーディアン紙は「大惨事目前の状況から成功物語へ」とのタイトルで、日本人の生活習慣が感染拡大を防いだとの見方を伝えた。マスクを着用する習慣▽あいさつで握手やハグよりお辞儀をする習慣▽高い衛生意識▽家に靴をぬいで入る習慣などが、「日本の感染者数の少なさの要因として挙げられる」と指摘している。

 日本の専門家もこうした日本人の文化や習慣が感染拡大を防いだ一因とみる。東京医大病院渡航者医療センターの浜田篤郎教授(渡航医学)は「日本人の清潔志向とマスク文化が、第1波の抑え込みに一定の役割を果たした可能性がある」と話す。

 一方で、第1波を免れた分、第2波の拡大が懸念されるとして注意を呼びかける。「感染者が少なかったということは、免疫を持つ人が少ないということ。第1波より感染者が増える可能性がある」という。

 PCR検査数の少なさについては「やらなかったのではなく、できなかった」と指摘。「検査数を増やせば、症状が軽い陽性患者も出る。当初は宿泊施設での患者の受け入れもできず、病院で収容していたら間違いなく医療崩壊していた。第2波が来るまでに患者の収容体制などを整え、検査数を増やせるよう準備しておく必要がある」と話す。」(2020/05/26付「朝日新聞」ここより)

上の記事では、「米誌フォーリン・ポリシーは日本の新型コロナ対策について「何から何まで間違っているように思える」と指摘した上で、それでも現状は「不思議なことに、全てがいい方向に向かっているように見える」と伝えた。」という評価が面白い。

最初から散々言われていたPCR検査数の少なさ。これは「やらなかったのではなく、できなかった」だという。
200531tbs 従って、指標は、アジアにおける10万人当たりの死者数であろう。すると、日本は決して誇れる数字では無い事が分かる。日本0.51人に対し、韓国0.51人、中国0.32人、台湾に至っては0.03人なのである。(2020/05/31 TBS「サンデーモーニング」より)

一方、これらの“日本の実績”に対して、こんな見方もある。

(夏の手前で)日本人は勝手にやってきた 保坂和志

「政府が無能なのに、コロナ対策がなぜかうまくいっている」

 最近みんな、そう思っているんじゃないか? しかし私の友達で、日本人のメンタリティー(心性)に関して一家言ある男は、

「無能なのに、じゃなくて、無能だからこそ、うまくいってるんだ」

 と言った。日本人は放っておけば、勝手に努力して、勝手にせっせと働いて、勝手にあれこれ工夫する、そういう人たちの集まりなんだと。

 日本人は「お上」なんかアテにしないで自分たちで適当に助け合ってなんとかしてきた。日本人の心の中には、国家とか政府とかという概念がそもそもない。逆に言うと、近代国家に相応(ふさわ)しい政府に国民が育ててこなかった。

 彼のこの荒っぽい日本人観が私は好きだ。別の視界が開ける。

「日本の選手は規律正しくて従順」というのは、サッカーでもラグビーでも、外国人が監督に就任して必ず最初に言う言葉だ。ラグビー日本代表のエディ・ジョーンズ前ヘッドコーチはこのあいだのインタビューで、もう一歩踏み込んで、こう言った。「日本人は上に言われるから規則に従うのでなく、もともと日本人には規則に対する強い敬意があるのです」

 明治初期に日本に来た外国人たちは、まず町が整然としていることに驚き、次にどの田畑も手入れが行き届いていることに感心した。エディ・ジョーンズの発言にそれを重ね合わせると、発言の射程はぐんと遠くなり、「規則」は「法則」「摂理」「ものの道理」という意味を帯びてくる。

「無能だからこそ、うまくいっている」と言った友達は、日本人が勝手に努力して勝手に働くことを喩(たと)えて、「猫が暇さえあれば毛づくろいしてるのと同じ」と言った。いい喩えだ。私は掃除も片付けもしない怠け者だが、小説だけは毎日書いている。「創作活動は大変ですね」と言われるが、勝手にやってるだけだから大変ではない。

 最近は「お坊さんが毎日お経を読むように毎日書く」と言っている。出来不出来など関係ない。とにかく毎日書く。創作方面に行ったり研究活動したりしている知り合いはみんなそうだ。周りからは大変そうに見えるが、それが一番好きだからやってるだけだ。

 それならば、国は何をすればいいか? これを機に一気にベーシック・インカムにするのがいい。一律十万円の給付を毎月続けるのだ。家計に余裕のある人は寄付なりクラウドファンディングなりするだろう。

「国が自動的にお金をくれたら、働かなくなってギャンブルばかりする」なんて心配はない。そんなことするのは一部で、大半はマイペースで働き続ける。課された労働でなく、喜びとしての仕事をそれぞれが見つける。

 これこそ、コロナ以後の大転換。コロナが人類に与えた、試練と恩恵だ。(作家)」(2020/05/30付「朝日新聞」b9より)

とにかく今回の新型コロナの世界中を巻き込んだ大混乱。たぶん人生に一度あるかないかの大事件。
政府や自治体のリーダーたちの実力がバレてしまった出来事となった。
我々主権者は、それらを見て、今後どう行動するかが問われている。

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