ラジオドラマ「幽霊シッター」~逃げ場が無くなった時
だいぶん前だが、FMシアター「幽霊シッター」(2019/09/14放送)を聞いて、なぜか心に残った。
<FMシアター「幽霊シッター」>
NHKのサイトにはこう解説がある。
「第47回創作ラジオドラマ大賞佳作受賞「幽霊シッター」
【NHK FM】2019年9月14日 午後10時~午後10時50分(全1回)
【作】渡辺由佳 【音楽】榊原大
【あらすじ】
2018年度放送作家協会とNHK共催の脚本コンクール「創作ラジオドラマ大賞」佳作作品のドラマ化。
香苗(35)は夫と別れ、生後9ヶ月の赤ん坊・若葉を連れて、いわくつきのアパートに引っ越してきた。ある夜、娘の夜泣きに手こずっていると、なんと見たこともない女が子どもをあやしているではないか。女はこの部屋に居ついている幽霊の成美(享年28)だという。
最初は幽霊シッターに警戒する香苗だったが、成美の有能なシッターぶりに心を許し、二人はいつしか強力タッグに。香苗の職場復帰後初のプレゼンも、成美の助けで何とか乗り切ることが出来た。
しかし、ある日、香苗は20年以上前の成美の死にまつわる悲しい事実を知ってしまう。そして、香苗は成美のために少しでも役に立ちたいと奔走するのだったが…。」(ここより)
この物語の原点は、子育てで、母親が自分の時間が全く無くなったこと。そして悲劇は起こる・・・。少しだけホットしたくてトイレにこもったとき、赤ちゃんが・・・
話は飛ぶが、同じくNHKラジオ深夜便「シリーズ 心の健康からだの健康~人生を全うさせる希望の力」医師…玉地任子(2017/12/5初放送、2019/10/04再放送)でこんな話があった。
在宅ホスピスの苦労と、夫の看取りの経験である。
<「人生を全うさせる希望の力」医師…玉地任子 より>
例によって、この番組をテキスト化しているHPから、この部分を引用すると・・・
「夫は元気で東京の病院に通っていましたが、平成23年5月、お寿司を食べていたら、喉になにかつかえる様で苦しいと言った4日後に、スキルス胃がんで肝臓に転移していると言われてしまいました。
必死に出来ることはしないといけないと思いました。(在宅治療)
夫は9月に亡くなるが7月まで仕事をしていました。
昼夜逆転があり、寝ようと思う頃夫が目が覚めて、いらいらしたり背中さすったり足を揉んだりして、私を寝させてくれませんでした。
穏やかだった人が凄い形相になったり、耐えられなくなり、亡くなる前の2カ月は凄く苦しみました。
悩みながら(もやもや感があり)も穏やかな別れをしました。
がんと分かった後も、主人は仕事をしている時には何ともないように患者に優しく元気に仕事をしていて、吃驚しました。」(ここより)
人間も死を前にすると、人格までも変わってしまうようだ。これは歌人の河野裕子さんの場合も同じだったらしい(ここ)。
しかし、ガンなどの場合は、将来(終わり)が見えている。しかし、介護や子育ての場合は、終わりが見えない。だから心が追い込まれる。特に夫などの協力者がいない場合は・・・
逃げ場が無くなったときの、人間の状態について、つい考えてしまった。
何とも、切ない幽霊の物語である。
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