4K放送の画面は暗い?~REGZAはOK!?
先日の朝日新聞にこんな記事があった。4K放送の画面が2Kに比べて暗いというのだ。
「4K放送、画面暗い? 高精細のはずが…苦情 市販TV、低い輝度/2K映像を変換
昨年12月に始まった衛星放送(BS)の「4K放送」に、視聴者の一部から「画面が暗い」との苦情が出ている。「こんどのテレビは、別世界」など、映像の美しさを売りにした4K放送で、なぜこうした苦情が出たのか。消費者がとれる対策はあるのか。(松田史朗)
首都圏に住む60代男性は、わくわくしながら2018年12月1日を迎えた。居間には58インチの4Kテレビ。チューナーもつけ、4K放送の番組を見始めた。
「あれ、暗いな……」
従来の2K放送に比べ、4K放送の画面が暗く感じた。東京五輪を美しい映像で見たいとテレビ、チューナー、テレビ台に50万円ほど投じた。男性に購入を勧めた電器店に苦情を言い、メーカーの社員に自宅に来てもらったが「修理はできない」と言われたという。 朝日新聞は5月、この電器店の協力を得て、大手メーカーの同じテレビ2台で4K放送と2K放送を見比べたところ、通常の明るさ設定では4Kの方が暗く見えた。明るさ設定が「最大」だと4Kの暗さはある程度改善した。暗く見える原因と対策を追った朝日新聞デジタルの連載記事を8月上旬に配信すると、滋賀県に住む60代男性からも同様の指摘が寄せられた。
男性は昨年、4Kテレビ(約15万円)とチューナー(約3万円)を通販で購入。NHK紅白歌合戦を美しい映像で見られると期待したが、「画面にどうにも鮮やかさがなかった」。
一方で「暗さは全く感じない」「NHKはきれいだが、民放は画像が悪い」といった反響もあり、メーカーや機種によって見え方には差があるようだ。
4K放送を推進する放送サービス高度化推進協会(A―PAB)の電話窓口には、5月末までに5042件の相談があり、うち「画面が暗い」との相談は82件(1・6%)だった。
4Kテレビは6月末までに約685万台出荷されたが、テレビ内蔵型を含むチューナーなどの出荷は約127万台。4Kテレビを持つ家庭の多くは、まだ4K放送を受信していない。
■コスト面に課題
なぜ暗く見えるのか。大手電機メーカーや放送局などに取材を進めると、テレビの性能面と、放送局の映像処理の双方に要因があることが分かった。 一つは、テレビの「輝度(画面の明るさ)」の問題だ。4K放送は従来の2K放送に比べ、表現できる明暗のコントラスト幅が広がる。2Kだと黒や白につぶれてしまうようなところにも精細な映像を浮かび上がらせることができる。
4K放送の映像を作る場合、放送局では、2K放送の10倍にあたる最大1千nit(ニト、輝度を示す単位)のプロ用の「マスターモニター」で編集を行う。
ただ、家庭用4Kテレビの最大輝度は、コスト面の課題などからこれを大きく下回る。映像の専門家やメーカーの担当者によると、市販の4Kテレビの最大輝度は500nit前後のものが多い。ただ、メーカーの多くは機種ごとの最大輝度を公表していない。
最大輝度が低いテレビで4K映像を見ると、映像の「作り手」が見ている元の映像に比べて暗くなるという。映像の専門家でシリコンスタジオ(東京)研究開発室長の川瀬正樹さんによると、液晶テレビのバックライトの性能が上がって従来の3~5倍も明るくなり、2K放送がより明るくなったことも、相対的に4K放送が暗く見える要因になった可能性があるという。
■前倒しが影響か
放送局側の映像処理にも要因があった。民放のBS・4Kチャンネルには、従来の2K放送用の機材で撮影した映像を、4K向けに変換(アップコンバート)した番組が多い。民放も参加する電波産業会(ARIB)が定める「放送標準規格」に沿った編集では、2Kで撮った映像は最大203nit(参考値)で表示されるため、明るくなった2K放送や、4Kカメラで撮影された番組に比べ、暗く見えるという。
BSフジの戸田英男技術局長は「民放は番組の間にCMを挟む。日本広告業協会と日本民間放送連盟の取り決めで、映像の色や明るさに手を加えることはできない」と説明する。
一方、NHKは、4Kの番組はすべて4K用の機材で撮影した映像でつくっているという。
4K放送の導入スケジュールを問題視する声も聞かれた。総務省は当初、20年からの放送開始を想定していたが、東京五輪の決定を受けて「18年」に2年前倒しした経緯がある。
4K映像の編集機材が民放に納入されたのは18年夏、一般家庭向け4Kチューナーが出荷されたのは同10月と放送開始直前だった。複数の関係者によると、家庭用の4Kテレビとチューナーで4K放送を受信したとき、実際に映像がどう見えるのか、ほとんどチェックされないまま放送開始に至ったという。
■購入前、まず見比べて
消費者はどう行動すればいいのか。これから4Kテレビの購入を検討するなら、電器店などで実際に4K放送の番組を見てから判断するのが確実だ。最近はチューナー内蔵型テレビも多い。4K放送と2K放送、あるいは同じ4K放送でもNHKと民放の番組を見比べ、高画質に納得がいけば購入すればいい。
一方、すでに4Kテレビがあって、外付けチューナー(2万~6万円ほど)を買って4K放送を受信するかどうか検討している場合、チューナーによる映像の変化を確かめてから判断するのは難しそうだ。記者が複数の家電量販店に問い合わせると、一般的にチューナーの貸し出しはしていないという。
A―PABは「新4K8K衛星放送」に関するコールセンター(0570・048・001、運用時間は平日9時~17時。通話料視聴者負担)を設けている。」(2019/08/19付「朝日新聞」p2より)
上の記事は、先に朝日新聞デジタルに連載された記事の要約版らしい。
連載の記事の方がより詳しい。
★(ここ)にPDFを置きますので読んでみて下さい。
①「4K放送、画質抜群のはずが「あれ、暗い」 相次ぐ苦情」
②「「4K放送は暗い」問題を検証 従来と比較した結果は」
③「4K放送が「暗い」わけ 専門家に聞いて浮かんだ仮説」
④「4K放送、なぜ「暗い」TVメーカーを直撃 残った疑念」
⑤「4K放送、民放を悩ます費用の壁 潤沢なNHKと温度差」
⑥「「4Kは突貫工事」特殊環境で試験放送、視聴者置き去り」
⑦「「放送開始前、調整しようがなかった」専門家に聞く4K」
⑧「楽しみだった紅白… 4K画質「あきらめろというのか」」
記事を読んでみると、なるほどと納得。しかし、実は自分もREGZAの4Kチューナーとテレビで見ているが(ここ)、暗いと思ったことが無かった。
記事を読んでみると、最大輝度を公表しているのがREGZAだけだと分かった(上のPDFの12/26)。他社は非公開。つまりREGZA以外は、メーカーとして自信が無い証拠かも?
そして局側の対応も面白い。目を引くのがNHKの対応。
「NHKはどうしているのだろうか。「アップコン」の指摘を含めた五つの質問項⽬とともに取材を申し込んだ。
しかし最初に返ってきたのは、たった1枚の⽂書回答。苦情件数の問い合わせには「様々なご意⾒をいただいています」。「暗い」原因については「それぞれの放送で最適な映像になるように調整します」、テレビの輝度の指摘には「メーカーが販売しているテレビについて、NHKではお答えできません」――。事実上のゼロ回答だ。」(上のPDFの17/26)
相変わらずの対応。政治の話と似ているな・・・
ともあれ、技術的な内容に興味がある人は上のPDFをじっくり読んで頂くとして、何より面白かったのは、映像の専門誌での話題のような話を、彼の朝日新聞が取り上げて深掘りしていたこと。そして、記者の熱心さによって、問題の核心に近付いていたこと。
これには、朝日も見直した。まるで、昔の「暮しの手帖」のような切れ味。
こんな企画はぜひ続けていってほしいもの。
それと、なぜ自分が「4Kが暗い」と気付かなかったのか?
自分が持っているREGZAの環境(50Z810Xと、4KチューナーのTT-4K100)では、今見比べても、暗い感じは無いのである。上の記事によると、メーカーの回答は下記だという(同じく12/26)。
「4K放送が暗い」という苦情の有無と件数を聞いた。回答はこうだ。
◇
パナソニック ごくわずか
ソニー ⾮公開
東芝 なし
シャープ 5⽉末までに100件
三菱電機 直近3カ⽉で数件
◇
なるほど、東芝への苦情は無いという。つまりは、自分と同じで、暗いと感じていない。つまりは、輝度があるため?(性能が良いため?)、ユーザーに不満が無いらしい。
それで自分なりに納得した。不満が無いのは、自分だけでは無いのだ・・・と。
思わぬ所で、朝日新聞の切れ味の良さと、REGZAの優秀さを確認してしまった記事であった。
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コメント
何故今頃この記事が出たのか良くわかりません。各メーカーは4Kチューナーのアップデートで、「画面が暗い」症状はほぼ解消されているはずです。この記事を書いた記者は知識に乏しく、下調べも不十分だと思います。
この記事を見ると、まるで4K放送は暗いという印象を与えてしまいそうです。NHK4k放送も暗いというのは、接続やTVの設定に問題があります。そういう点については書かれていませんね。
・HDMIケーブルは、18Gbps対応のものが必要。
・TVのHDMI入力はHDCP2.2対応の端子に接続
・TVのHDMI設定を4K用に設定する。(例えばソニーなら拡張フォーマットに)
私の場合、昨年の12/1の4K放送開始に合わせて、パナの4Kチューナー内蔵BDレコと東芝の4Kチューナーを購入しました。TVはソニーの55インチ4K対応TVです。
NHK4Kは、ほぼ100%がピュア4Kなので素晴らしい画質でしたが、民放4Kはどちらの機器も暗い映像でした。価格COMの書き込みでも各社の4Kチューナーの民放の暗さは数多く指摘されていました。その後東芝機はHDMIのディープカラーを切りにすると明るくなることがわかりました。パナ機はHDR設定の調整で明るくなりました。数か月後各社アップデートで、民放の暗さは解消したと思います。東芝の「暗い」という問い合わせはないというのは、最近はないということでしょう。
最近はNHKは再放送が多くなり、民放はピュア4K放送は増えないのが残念です。9/1からは日テレ4Kが始まりますが(試験電波8/25から発射)、どうなるやら・・・
【エムズの片割れより】
厳しいご指摘をありがとうございました。
もっとも、自分は民放の4Kはまったく見ていません。アップコンの番組を見ても仕方が無いので。
もっぱらNHKですが、最初から暗いと感じたことは無かったですね。
しかし、初期のチューナーのファームのドタバタは、大変でしたね。
自分もメーカーに、何度改善の要望を出したか・・・
9月から日テレも始まるのですね。でも期待薄ですね。
民放でピュア4K番組が少なのは、採算が取れないのでしょうね。
投稿: classical.s | 2019年8月22日 (木) 12:35
「4K放送が暗い」という苦情の有無と件数ですが、メーカーは実際の数字を発表していない可能性があります。なぜなら、例えばA社が正直に200件以上あったと言えば、新聞記事に「A社は何と200件以上もあった」書かれてしまうと、まるでA社の製品は悪いようなイメージになってしまうからです。非公表としているのもそういうこともあるのでしょうね。
私も民放のアプコン番組は見ませんが、数少ないピュア4K放送の中には意外に良いものもあります。
日テレ4K放送は、他社より9か月遅れた分少しは増しかも知れません。下記参照して下さい。番組内容は日々更新されています。
https://www.bs4.jp/4k/
投稿: classical.s | 2019年8月23日 (金) 06:16