田上・長崎市長の2019年「長崎平和宣言」
今日は、被爆から74回目の長崎原爆の日。カミさんが、長崎市長の宣言を聞きたいというので、一緒に聞いた。今までに無く心にしみ渡る宣言文だった。
<田上・長崎市長の「令和元年 長崎平和宣言」>
「令和元年 長崎平和宣言(宣言文)
目を閉じて聴いてください。
幾千の人の手足がふきとび
腸わたが流れ出て
人の体にうじ虫がわいた
息ある者は肉親をさがしもとめて
死がいを見つけ そして焼いた
人間を焼く煙が立ちのぼり
罪なき人の血が流れて浦上川を赤くそめた
ケロイドだけを残してやっと戦争が終わった
だけど……
父も母も もういない
兄も妹ももどってはこない
人は忘れやすく弱いものだから
あやまちをくり返す
だけど……
このことだけは忘れてはならない
このことだけはくり返してはならない
どんなことがあっても……
これは、1945年8月9日午前11時2分、17歳の時に原子爆弾により家族を失い、自らも大けがを負った女性がつづった詩です。自分だけではなく、世界の誰にも、二度とこの経験をさせてはならない、という強い思いが、そこにはあります。 原爆は「人の手」によってつくられ、「人の上」に落とされました。だからこそ「人の意志」によって、無くすことができます。そして、その意志が生まれる場所は、間違いなく、私たち一人ひとりの心の中です。
今、核兵器を巡る世界情勢はとても危険な状況です。核兵器は役に立つと平然と公言する風潮が再びはびこり始め、アメリカは小型でより使いやすい核兵器の開発を打ち出しました。ロシアは、新型核兵器の開発と配備を表明しました。そのうえ、冷戦時代の軍拡競争を終わらせた中距離核戦力(INF)全廃条約は否定され、戦略核兵器を削減する条約(新START)の継続も危機に瀕(ひん)しています。世界から核兵器をなくそうと積み重ねてきた人類の努力の成果が次々と壊され、核兵器が使われる危険性が高まっています。
核兵器がもたらす生き地獄を「くり返してはならない」という被爆者の必死の思いが世界に届くことはないのでしょうか。
そうではありません。国連にも、多くの国の政府や自治体にも、何よりも被爆者をはじめとする市民社会にも、同じ思いを持ち、声を上げている人たちは大勢います。
そして、小さな声の集まりである市民社会の力は、これまでにも、世界を動かしてきました。1954年のビキニ環礁での水爆実験を機に世界中に広がった反核運動は、やがて核実験の禁止条約を生み出しました。一昨年の核兵器禁止条約の成立にも市民社会の力が大きな役割を果たしました。私たち一人ひとりの力は、微力ではあっても、決して無力ではないのです。
世界の市民社会の皆さんに呼びかけます。
戦争や被爆体験を語り継ぎましょう。戦争が何をもたらしたのかを知ることは、平和をつくる大切な第一歩です。
国を超えて人と人との間に信頼関係をつくり続けましょう。小さな信頼を積み重ねることは、国同士の不信感による戦争を防ぐ力にもなります。
人の痛みがわかることの大切さを子どもたちに伝え続けましょう。それは子どもたちの心に平和の種を植えることになります。
平和のためにできることはたくさんあります。あきらめずに、そして無関心にならずに、地道に「平和の文化」を育て続けましょう。そして、核兵器はいらない、と声を上げましょう。それは、小さな私たち一人ひとりにできる大きな役割だと思います。
すべての国のリーダーの皆さん。被爆地を訪れ、原子雲の下で何が起こったのかを見て、聴いて、感じてください。そして、核兵器がいかに非人道的な兵器なのか、心に焼き付けてください。
核保有国のリーダーの皆さん。核不拡散条約(NPT)は、来年、成立からちょうど50年を迎えます。核兵器をなくすことを約束し、その義務を負ったこの条約の意味を、すべての核保有国はもう一度思い出すべきです。特にアメリカとロシアには、核超大国の責任として、核兵器を大幅に削減する具体的道筋を、世界に示すことを求めます。
日本政府に訴えます。日本は今、核兵器禁止条約に背を向けています。唯一の戦争被爆国の責任として、一刻も早く核兵器禁止条約に署名、批准してください。そのためにも朝鮮半島非核化の動きを捉え、「核の傘」ではなく、「非核の傘」となる北東アジア非核兵器地帯の検討を始めてください。そして何よりも「戦争をしない」という決意を込めた日本国憲法の平和の理念の堅持と、それを世界に広げるリーダーシップを発揮することを求めます。
被爆者の平均年齢は既に82歳を超えています。日本政府には、高齢化する被爆者のさらなる援護の充実と、今も被爆者と認定されていない被爆体験者の救済を求めます。
長崎は、核の被害を体験したまちとして、原発事故から8年が経過した今も放射能汚染の影響で苦しんでいる福島の皆さんを変わらず応援していきます。
原子爆弾で亡くなられた方々に心から哀悼の意を捧げ、長崎は広島とともに、そして平和を築く力になりたいと思うすべての人たちと力を合わせて、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に力を尽くし続けることをここに宣言します。
2019年(令和元年)8月9日
長崎市長 田上富久
非常に分かり易く、具体的で、いつまでも繰り返し思い出したい宣言文である。
その間、テレビに映し出された安倍総理は、左目を閉じて右目を開け目玉はキョロキョロ。まるで聞いていない風。一方、一緒に映った隣の大島衆院義の熱心に聞いている様子とは対照的。
たぶん首相は、いつものように、一刻も早くこの場から姿を消したいと思っていたのだろう。
特に印象に残った次の言葉を改めて噛み締め、原爆を風化させずに、次の世代につなげたいのものである。
「原爆は「人の手」によってつくられ、「人の上」に落とされました。だからこそ「人の意志」によって、無くすことができます。そして、その意志が生まれる場所は、間違いなく、私たち一人ひとりの心の中です。」
「私たち一人ひとりの力は、微力ではあっても、決して無力ではないのです。」
「平和のためにできることはたくさんあります。あきらめずに、そして無関心にならずに、地道に「平和の文化」を育て続けましょう。そして、核兵器はいらない、と声を上げましょう。それは、小さな私たち一人ひとりにできる大きな役割だと思います。」
(関連記事)
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コメント
音声をはってくださりありがとうございました。聴きました。市長が平和宣言を述べている間の首相の様子、ツイターの動画で観ました。
日常業務の一環としてそれもイヤイヤ感まるだし。言葉もなにげなくはなして(内容とは別にdeliveryのしかた)なにげなくおわった。彼にとっては特別な日でも何でもないそれを表現したかったのでしょうかあのような様子でいて。
【エムズの片割れより】
長崎市長が「(誠意のカケラも無い)首相の参列を拒否!」なんていうことになると、事態は動くかな??
投稿: kmetko | 2019年8月10日 (土) 10:23
四年ほど福島原発災害復興に関わりました。
放射線測定器以外には害を与える物が目に見えない不気味さ
日本は唯一の被爆国として原子力の平和利用の模範となるとの触れ込みで原発を推進してきたけれど、あり得ないと言っていた炉心融溶という深刻な事態が結末。
結論として「核エネルギーは制御できないし後始末も不可能若しくはコスト計算不可能」
ましてこれを武器に使うなど狂気の沙汰ですね。
【エムズの片割れより】
Netにこんな記事がありました。
「安倍首相「アンダーコントロール」のウソ
<IOC総会で東京をアピールする安倍晋三首相=2013年9月7日、ブエノスアイレス>
安倍首相は、滑らかな英語で東京への五輪招致演説をした。首相官邸ホームページにその和訳が掲載されている。福島について言及したのは、開始直後だった。「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません。……」英語では「アンダーコントロール」と言った。え? 立ち並ぶタンクのあちこちから汚染水が漏れてくる。地下水は山側から容赦なく流れ込み、それが汚染されて港湾に流れ出る事態も続く。汚染水はいま、「アウト・オブ・コントロール(制御不能)」じゃないですか。」
投稿: 内倉 功 | 2019年8月10日 (土) 19:17
8月15日、新天皇が初めて迎えた終戦の日。韓国では光復節の祝いの日。安倍首相には
イラン問題を間違えないよう、争いのない世界に向けて努力してほしい。今、NHKTV「二・二六事件」を見終わった。102歳で死んだ父から、反乱軍鎮圧の部隊の兵士として急拠かり出され、武装して雪の中に立っていたことを聞いている。ノモンハン事件当時からの軍人である父はまた、あの戦争に日本は、精神論だけで突入し負けたと自叙伝に残している。番組の最後に、昭和天皇は二・二六事件と終戦の日のことを強く覚えていると解説していた。12月8日が漏れているのはおかしいと思ったのは私だけであろうか。数日前、NHKスペシャル「かくて自由は死せり」を見た。大正デモクラシーが何故10年あまりで軍国主義の日本になってしまったのか。そのプロセスの1つが分かりやすく展開されていた。右派の日本新聞という存在が大きな力を発揮していた。他の大手新聞の動きには説明がなかったが。日本会議と称する団体の支援者が内閣の閣僚の多くを占めている状況は今も変わらない。政府に対し批判的な意見を出さないような大手新聞やTV局。国民も選挙で自民党独裁政治を批判しようとしない。このままで平和な将来を作ってくれるのであろうか。
【エムズの片割れより】
私も「二・二六事件」を見ました。
今日のNHKニュースで、昭和天皇の拝謁記録が見付かり、明日(2019/08/17)のNHKスペシャルで放送されるようです。軍からの下剋上に潰された天皇の姿が描かれるようです。当時30歳代の天皇は、やはり軍を牛耳れず、軍の戦争への道を止められなかったのかも。
投稿: かうかう | 2019年8月15日 (木) 22:30