曽原紀子:作「櫛くし」の朗読~家族を失って・・・
先日、NHKラジオ深夜便で、曽原紀子作「櫛くし」(2019/07/08再放送)の朗読を聞いた。
ちょっと共感する所があったので、挙げてみる。
「NHKラジオ文芸館「櫛くし」2019年7月8日放送
作:曽原紀子(2018年6月11日のアンコール)
50歳を目前にした会社員の主人公。
子宮筋腫の手術を前に、20年ぶりに、別れた夫に会うため京都に向かう。
待ち合わせたのは、6歳で逝った娘ともども通った思い出の寺。
息苦しいほどに見事な紅葉の中で、主人公が確かめたかったこととは――。」(NHKのここより)
<曽原紀子:作「櫛くし」の朗読>
この放送の中に、作者のメーッセージで、こんな言葉があった。(37分頃)
「主人公の私は、娘を無くし、家庭を無くし、子宮を失おうとしています。日常生活は常に失うことの恐怖に充ちています。しかし、喪失への怖ればかりを考えていては、私たちは生きていくことは出来ません。失わないようにすることも大事な事ですが、何かを失ったとしても、黙って歩き続けることが生きると言うことであり、その中でまた見えてくるものもあると信じています。」
話は飛ぶが、こんなニュースがあった。
「遺族、厳罰求め署名活動 池袋暴走3カ月 娘の動画公開
東京・池袋で乗用車が暴走し、松永真菜(まな)さん(31)と長女莉子(りこ)ちゃん(3つ)が死亡した事故から十九日で三カ月になるのを前に、松永さんの夫の会社員男性(32)が十八日記者会見し、運転していた旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(88)への厳罰を求める署名活動を始めたと発表した。今秋までに街頭やインターネットを通じて署名を集め、東京地検に提出する。
男性は会見で、莉子ちゃんが昨年六月の父の日の二日前、似顔絵をプレゼントしたときの動画を公開し「愛する二人との日常がとても幸せでした。交通事故は誰かの日常や命を奪ってしまう」と強調。「今後、被害者と遺族がいなくなるように、加害者には厳罰を望みます」と話した。
警視庁は、飯塚元院長を自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で書類送検する方針。同罪で有罪になれば、七年以下の懲役や禁錮などが科される。男性は「心情的には七年は長いとは思えない」と明かし、「できるだけ重い罪で起訴してほしい」と求めた。
署名活動の詳細や署名用紙はインターネットの「東池袋自動車暴走死傷事故 遺族のブログ」で公開。男性は八月三日午前十時~午後四時、莉子ちゃんとよく遊んだ南池袋公園(豊島区南池袋二)で署名を募る。(福岡範行)」(2019/07/19付「東京新聞」ここより)
上の「櫛」の物語のように、病気で家族を失うのは仕方が無いとしても、池袋事件のように、家族を殺した犯人が、逮捕もされず、今ものうのうと日常生活を続けていることは、やはりおかしい。
幾ら現役時代にエラかった人でも、犯罪者は同じ扱いを受けて当然。
残された夫が怒るのも分かる。そして、国家権力に対しては、署名活動という手段に訴えるしか無いという、今の日本の現実。
自分も署名(ここ)しようかな・・・
改めて、家族を失った人について、思いをはせて聞いた朗読ではある。
| 0
コメント
テレビのニュースで見ましたが、かわいいお嬢ちゃんと奥様にはもう会えないのです。
絶望の松永さんのためにできることがあるのですから、用紙をダウンロードして署名しました。
【エムズの片割れより】
我が家でも、カミさんと二人で署名することにしました。
投稿: リスト | 2019年7月20日 (土) 10:51
目が悪くなって長い小説が苦痛になり、今では短編も殆ど読めなくなっています。久々に小説を聴きました。この人の文章は素直でごちゃごちゃしていなくていいですね。昭和30年代を境に若い作家の文章がどうも読みづらくなったような気がします。昔の作家は文章が上手かったといつも思っていましたが、この人の文章は素直に頭に入ってきました。探せば素直に読める小説があるのですね。読んでいる人の声も良いですね。静かな気持ちになれました。有難うございました。
【エムズの片割れより】
NHKラジオ第2に「朗読」という番組があります。
でも、長編はなかなか理解が難しい・・・。
投稿: 白萩 | 2019年7月20日 (土) 13:42