「賛成意見を水増し」著作権DL違法化~作為的な文化庁
まさに想像を絶する日本の官僚である。いったいこの国はどうなってしまったのだろう。官僚が作為的に自分たちの意見に沿った法律を作ろうとする。日本は、とても民主国家とは言い難い国になってしまったようだ。
今日(2019/03/04)の朝日新聞デジタルにこんな記事があった。
「「賛成意見を水増し」DL違法化、専門家が文化庁を批判
法改正を進めるために賛成意見を水増しして与党に報告し、海外での先行事例も恣意(しい)的に選んで都合のいいところだけ紹介している――。 権利者の許可なくインターネットに上げられたと知りながら漫画や写真、論文などをダウンロードすることを全面的に違法とする著作権法改正を進めようとしている文化庁が、自民党に正確ではない説明をしたと指摘する「検証レポート」が3日、明治大学知的財産法政策研究所のホームページで公表された。
自民党の文部科学部会などは先月こうした説明などをもとに法改正を了承したが、反対意見も根強く出ている。党の最高意思決定機関である総務会は1日の会合で、関係者への説明不足などを理由に異例の了承先送りを決めたばかり。与党に不正確な判断材料を提供していたとの指摘は今後の議論に影響を与えそうだ。
今回の検証は、違法とする行為をもっと絞り込むように緊急声明で求めていた著作権法の専門家らの一部が行った。法改正について議論した昨年10月から今年2月までの文化審議会の会合でどんな意見が出たのか、自民党議員らに説明するために文化庁が配った資料を入手して分析したという。その結果、自民党への説明で主に以下の問題点があったと指摘した。
賛成意見を水増しした
文化庁は、法改正の方向性をまとめた2月の文化審議会著作権分科会でどんな意見が出たのかを紹介するため、発言者の名前を伏せて「慎重な意見」を三つ、「積極的な意見」を七つ、説明資料に載せた。
慎重な意見については、8人の委員の連名で慎重な検討を求める意見があったことも付記されてはいたものの、分科会の議事録と照らし合わせると、法改正に「積極的な意見」のうち【学者】の発言とされた四つが、1人の2回にわたる発言を論旨ごとに四つに分割したものだったという。
また、文化庁が示した方向性に賛同している委員の意見は余すところなく紹介しているのに、「慎重な意見」を出した4人の意見は省略し紹介すらしていない▽紹介した慎重派2人の意見についても重要な部分を省略している▽別の慎重派2人の意見の一部を切り取って、積極派であるかのように誤解させている――とも言及。全体として「積極的な意見は少数派であるにもかかわらず、多数派であったような誤解を誘っている」と指摘した。
「政策判断を行う上で、審議会における議論の状況を正確に把握すべき立場である与党に正確な情報が提供されていない点は、立法過程における極めて重大な問題をはらんでいる」と批判している。
「諸外国の取り扱いも踏まえ」法改正するとの説明←比較対象国の選定がフェアでない
文化庁が配布資料で、ドイツやフランス、カナダなどの「諸外国」を引き合いに出し、著作権侵害物のダウンロードを全面的に違法とすることが国際的な潮流だと読めるような説明をしていることについても、「比較対象国の選択がフェアではない」と指摘した。
米国や韓国、台湾、シンガポールなど、公正な利用と認められれば権利侵害にはならない「フェアユース」の規定を持つ国もたくさんあり、軽微なスクリーンショットやコピー&ペーストなどは適法と考えられているためだ。こうした国々について「なぜ参考にしないのか、理由が不明」だと疑問視。ドイツなどの実情についても都合のいいところだけを紹介した「つまみ食い的な比較」と切り捨てた。
今回の検証レポートは、「これまでの文化審議会の歴史において極めて異例の形で報告書のとりまとめが行われた」とも指摘。文化庁は審議会での審議結果を忠実に法改正案に反映したと主張しているが、審議会の報告書などを無視していると厳しく批判している。
自民党総務会の1日の会合では、今国会で法改正案を成立させる必要性については一致したものの、「(関係者への)説明不足だ」との意見が相次いだ。日本漫画家協会も、違法範囲を絞り込むよう求めていることなどを踏まえ、加藤勝信総務会長は記者会見で、「漫画家の利益を守るのが今回の措置なのに理解が得られていない」と話し、改正案への理解を求めていくよう促している。(上田真由美)」(2019/03/04付「朝日新聞」ここより)
この記事で紹介されていた「明治大学知的財産法政策研究所のホームページ」の「検証レポート」(ここ)をざっと読んでみた。
「2019年3月3日
明治大学知的財産法政策研究所部会資料検証WGによる検証レポート(「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する自由民主党文部科学部会・知的財産戦略調査会合同会議(平成31年2月22日)配布資料の検証レポート)を公表します。
〔基本的な考え方・Q&A関係〕(PDFへのリンク)
〔文化審議会著作権分科会意見概要〕(PDFへのリンク)」
素晴らしいレポートである。まさに大学が、自分たちの中だけに止まらず、世の中に影響を与える研究だ。
しかし、この動きをどう読み解く?財務省や厚労省のように、政権に対して忖度し、ヘイコラするのが日本の現在の官僚かと思っていたが、どうしてどうして、したたか。当の自民党をも騙そうとする文化庁は、たいしたタマである。いやはやお見それしました?
会議という議論をまとめて議事録を作る際、それをまとめる人は、幾らでもお手盛りが出来る。自分の意見に合う意見は全面的に載せ、合わない意見は省く。
前に、自分が経験した自治会でのアンケートのことを書いた(ここ)。自治会のある役員が、自治会の名を借りて、自宅前の道路を居住者以外は通行止めさせる、という請願を出そうとした。それに反対する意見を出したら、意見は載ったものの、その役員に都合の悪い部分は全部削って載せていた。
今回の文化庁もそれと同じ。自分の意見を通すために、一つしか無い事実(会議での意見)を、まさにねじ曲げている。事実を消し去ろうとしている。
これを「恣意的」というのだと思った。しかし、どうも違うらしい。
広辞苑を引くと、
「し‐い【恣意・肆意】気ままな心。自分勝手な考え。「―的な解釈」」とある。
では「意図的」?
「い‐と【意図】①考えていること。おもわく。つもり。「敵の―を見抜く」②行おうとめざしていること。また、その目的。「早期実現を―する」「―的なごまかし」」
では「作為的」?
「さくい‐てき【作為的】‥ヰ‥ わざとこしらえるさま。また、故意にそうしたことが明らかで不自然なさま。「―な文章」」
どうも「作為的」が正しいらしい。
まあ、こんな言葉の意味を考えなければいけない世の中ではダメ。税金で食べている役人が、自分たちの意志を通そうと、政治家をだまして法律を作ろうとしている国など、想像を絶する。
まっとうで、ウソの無い正直な国に! 明治大学知的財産法政策研究所に拍手!!
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