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2019年2月16日 (土)

「小4虐待、母の「被害」に想像力を」

昨日(2019/02/15)の朝日新聞の「声」の欄に、こんな投稿があった。

「(声)小4虐待、母の「被害」に想像力を
    大学院生 女性(千葉県 24)
 千葉県の小4女児死亡事件を取り上げた天声人語(11日)を読んで絶句した。夫の暴力の矛先が娘に向いている限り自分が被害に遭うことはないと供述したという妻を「信じがたい保身」と非難したのだ。しかし私は、筆者には暴力の本質に対する想像力が根本的に欠けていると感じた。
 私も実の親から虐待を受けた。それゆえ、夫の暴力が妻にどれほどの恐怖をもたらしたか、その本質を想像することができる。もちろん、わが子の命を守れなかった点で母親にも責任はある。しかし、見方を変えれば、虐待を黙認していたとされる母親自身も、夫から暴力を受けた被害者なのだ。
 責任があるならば、たとえ被害者であろうとも責めていい。そんな風潮を作ってはならない。「責任」を強調しすぎると、被害者が萎縮し、周囲に助けを求めることができなくなってしまう。
 だれが悪く、だれを責めるのかから議論を始めてしまっては、結局のところ何の解決にもならない。暴力をなくすためにまずすべきこと、それは、被害者への想像力を働かせることだと思う。」(
2019/02/15付「朝日新聞」p16「声」より)

改めて、「天声人語」を読んでみる。
「(天声人語)「矛先をそらす」
 千葉県野田市の小学4年生、栗原心愛(みあ)さんが亡くなってから半月余りが過ぎた。胸がつぶれるような話ばかりが日々報じられる。娘に虐待を繰り返す父親を、母親も止められなかった。彼女は捜査当局に、こんな内容の供述をしているという▼「娘が暴力を振るわれていれば、自分が被害に遭うことはないと思った。仕方がなかった」。矛先が自分に向かわぬよう娘へとそらしたとすれば、信じがたい保身である。しかし、それと変わらぬ行動を、児童相談所や教育委員会もしていたのではないか▼野田市教委は父親の恫喝(どうかつ)に負け、心愛さんが暴力の被害を記したアンケートを渡した。「精神的に追い詰められて、やむにやまれず渡してしまった」という。その結果子どもがどう追い詰められるかは、考えないようにしたか▼言葉を失うのは、児童相談所の無為無策である。危険があるとして一時保護をしながらも、その後は腰が引けていた。家庭を訪問して父親と向き合うこともなかった。虐待問題のプロとして、介入する権限を十分持っているはずなのに▼二度と繰り返してはならない。昨年の3月、東京都目黒区で5歳だった船戸結愛(ゆあ)ちゃんが虐待死したときにも、叫ばれた言葉である。起きたばかりの悲劇が、教訓にも自戒にもならなかった。鈍感さをもたらした根っこに何があるのか、いまだ明らかになっていない▼検証も対策も、一刻を争う。だれかたすけて。そんな小さな声はこの瞬間も、どこかから発せられているのだ。」(
2019/02/11付「朝日新聞」「天声人語」より)

このところ、この事件の報道が下火になってきたが、ワイドショーなどでの連日の報道合戦はすごかった。そして、そのスタンスはどれも「矛先が自分に向かわぬよう娘へとそらしたとすれば、信じがたい保身である。」。

投稿した女性は「私も実の親から虐待を受けた。それゆえ、夫の暴力が妻にどれほどの恐怖をもたらしたか、その本質を想像することができる。」と書く。
棚の上から、見下げるように「母親なのだから、自分の身を挺して娘を守るのが当然」と決め付ける。そこには、「その場に自分を置いて、考えてみる」という想像力は働いていない。あくまでも、他人事の目線である。

自分なりに想像してみると、マインドコントロールされた自分への暴力が日常化していたとき、その恐怖で娘を含む「他のこと」など、目に入らなくなるのではないか。自分への暴力以外を慮(おもんばか)る余裕など無くなるのではないか。

児童相談所や教育委員会の対応が、想像を絶するほど論外なのは、記者会見で目をキョロキョロしていた自信の無さからも明瞭。しかしこれが全国の現場の普通の状況なのだろう。
この事件が問題になって、何らかの対策が前進すれば、せめてもの救い。しかし、期待は出来ない。
この事件を“論評する”声の全ては、「自殺するくらいだったら、その前に相談してくれれば・・・」という事後の周囲の声と同じ。まったく何の意味も持たない。ただただ「棚の上から目線」で、自分は別世界・・・

ドラマでは見たことがあるが、ほとんどの人が経験しない「家庭内暴力」「DV」。その当事者に自分を置いた時、果たして「母親なのだから、自分が夫の暴力の犠牲者になって娘を守るのが当然」という毎日を送れるのかどうか、いちど想像してみたい。

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