ドイツ民謡「昨夜見た夢」と、ドラマ「冬の雲」サントラ「苦しき夢」
“TBS「冬の雲」の主題歌「苦しき夢」”という記事を書いたのが2007年12月29日のこと(ここ)。もう11年も前だ。
先日、この歌の原曲を初めて聞いた。ドイツ民謡「昨夜見た夢」という歌だった。
<ヴェルニゲロ-デ少年少女合唱団の「昨夜見た夢」>
“Ich hab die Nacht geträumet”
Ich hab' die Nacht geträumet
Wohl einen schweren Traum;
Es wuchs in meinem Garten
Ein Rosmarienbaum.
Ein Kirchhof war der Garten,
das Blumenbeet ein Grab,
Und von dem grünen Baume
Fiel Kron und Blüten ab.
Die Blüten tät ich sammeln
In einem goldenen Krug,
Der fiel mir aus den Händen,
Dass er in Stücke schlug.
Draus sah ich Perlen rinnen
Und Tröpflein rosenrot.
Was mag der Traum bedeuten?
Herzliebster, bist du tot?
「昨夜見た夢」
(訳詞:宇野道義)
昨夜私は夢を見ました
重苦しい夢を
庭のマンネンロウの木が
大きくなっていました
庭は墓地で
花壇が墓
そして青々とした木から
花びらが舞い落ちたのです
舞い落ちた花びらを
金の壺に集めたのに
それは私の手から落ちて
こなごなに壊れてしまいました
その壊れた壺から零れ出たのは
真珠とばらのように赤い雫でした
この夢はなんの暗示でしょう
あゝ 恋しい方 あなたが死んだ
知らせなのでしょうか
この歌について、CDの解説にはこうある。 「昨夜見た夢
この曲はA.ツァルナックが1820年に編んだ『ドイツ民謡集』に収められているが、その旋律のせいだろうか教養階級を中心に広まった。旋律は古くからあり、1777年にF.二コライの編集した『素敵な小年鑑』に記録されている。第1節で出てくるマンネンロウの木は芳香のある常緑灌木で、愛・生死の象徴と言い伝えられている。」
前に挙げたが、この民謡の旋律を借りたTBSテレビドラマ「冬の雲」の主題歌「苦しき夢」を改めて聞いてみよう。
<ドラマ「冬の雲」サントラ「苦しき夢」>
「苦しき夢」
作詞:門馬直衛
ドイツ民謡
(語り)(芦田伸介)
愛とは 春の日の花のように
美しく、香り高きものであろうか
愛とは 夏の日の太陽のように
誇り高く、きらめくものであろうか
愛とは、秋の日の落葉の下に泣く虫のように
せつないものであろうか
愛とは 冬の日の、その青空の
夕べの夢は 苦しき夢
園に繁れる 満天紅
一夜のうちに 冬とかわり
緑の枝に 花は散りぬ
黄金の瓶に 花を摘めば
この手を滑り 花は枯れぬ
夕べの夢は 何を告ぐる
愛しの君に 変りなきや
この歌詞を原詩を念頭に聞いてみると、なかなかの名訳(作詞)であることが分かる。
実は前の記事に頂いたコメント数は75件で、当サイトで最も多い。つまりは、当時多くの人が見たドラマだったらしい。
自分はこのドラマを見ていないが、Netでググってみると、このドラマはTBSの「木下恵介 人間の歌シリーズ(4)」として、1971/01/14~1971/08/26に放送されたものだという。
当時、自分は会社の独身寮にいて、6畳2人部屋。もちろんテレビも無かった。談話室にTVはあったが、縁が無かった。
Netで「Ich hab die Nacht geträumet」でググってみると、色々な歌手による歌が聞く事が出来る。つまりは、ドイツでは非常に有名な歌らしい。
しかし、やはりこのヴェルニゲロ-デ少年少女合唱団の澄んだ歌声は別格だ。
新しい音源の発見は、いつになっても楽しいものである。
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TBS「冬の雲」の主題歌「苦しき夢」
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コメント
エムズの片割れ さま
「冬の雲」のスレッドの反響は凄いですね。斯く言います私も20歳ぐらいに夢中になってテレビに噛り付いていました。当時の俳優さんたちのその後は素晴らしい活躍をされて、まさにオールスターのドラマでした。ドラマの始まりでコローの様な印象派の絵画をバックに芦田伸介のナレーションから始まる「苦しき夢」のコーラスはずっと脳裏に浮かびます。
本家のドイツ民謡をアップしていただき有難う御座います。こちらも心に響くコーラスですね。
【エムズの片割れより】
本当に、今さらながら可能なら見てみたいドラマです。
出演者のリストを見ると、確かに蒼々たるメンバーですね。
投稿: azm_tka | 2019年2月12日 (火) 20:17
エムズの片割れ 様
何年か前に「ふるさとの」の記事について坂本博士がいいと書いたものです。「昼の憩い」は「昼のいこい」だとさとされました。久しぶりに「冬の雲」で探ってみましたら懐かしいここの記事が一覧にありました。来てみましたが,すばらしい。涙が出ました。
私は近ごろは室内楽(今はメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲)を聴いています。もっと前はシューベルトの歌曲もよく聴いていました。少年少女合唱団の最上の歌声はほんとにいいですね。
芦田伸介さんのドラマ冒頭の語りの最後の「その青空の」の余韻の深さを今でも覚えています。かつては日本にも鑑賞に値するドラマがありました。いま私が観るテレビドラマは「鬼平」と「剣客商売」です。おそらく同じスタッフが作っていると思われます。内容はともあれ,作り込みの丁寧さはいまではほかに見られません。「特捜最前線」もそうでしたが。
話がずれてしまいました。いいものを公開して下さってありがとうございました。
【エムズの片割れより】
嬉しいコメントをありがとうございました。
投稿: 誰何 | 2020年2月 1日 (土) 21:12
エムズの片割れ 様
前の投稿の追伸と思ってお読みください。
私が冬の雲サントラの「苦しき夢」に惹かれるのは,門馬直衛の詩が文語体であることも大きな要素かもしれません。
ここ二,三十年でクラシックの曲名が恣意的に変えられてきました。ラヴェルの「逝ける王女のためのパヴァーヌ」を「死せる王女の・・」あるいは「亡き王女の・・」,シューベルトの「美しき水車屋の娘」を「美しい水車小屋の娘」,同じく「死と乙女」を「死と少女」など。殺風景極まりなくその曲の持つ人間味が無残に削がれています。
今国会のあべの答弁を聞いていると頭に血がのぼり,ここに後藤田正晴がいればと歯噛みしながらここに来て,「ああ,後藤田さんは文語体の人であったなあ」とふと思い,急に書きたくなりました。
「追伸」ではありませんね。ひと様のブログで勝手なことを書くことになってしまいました。すみません。
投稿: 誰何 | 2020年2月 5日 (水) 13:17