「企業で働くということ」元東レ経営研究所社長…佐々木常夫氏の話
先日、NHKラジオ第2で放送された「カルチャーラジオ 日曜カルチャー「人間を考える 企業で働くということ」(1)元東レ経営研究所社長…佐々木常夫」(2018/12/02放送)を聞いた。
なかなか面白い話だった。
NHKの番組紹介にはこうある。
「カルチャーラジオ 日曜カルチャー「人間を考える 企業で働くということ」(1)
元東レ経営研究所社長…佐々木常夫
「企業で働くということ」第1回は元、東レ経営研究所社長の佐々木常夫さん。佐々木さんは1969年に東レに入社。6度の転勤を経験し、破綻寸前の会社の再建や様々な事業改革取り組むなど第一線で仕事をしてきました。一方、家庭では自閉症の長男を含め3人の子育て、肝臓病とうつ病を発症した妻を支えるなど多難な生活を強いられました。今回は佐々木さんの経験を通して働くということの意味、仕事についてお話しいただきます。」(ここより)
<「企業で働くということ」佐々木常夫氏の話(60分)>
この番組はNHKのサイトでも聞くことは出来るが(ここ)、その公私ともに凄まじい人生にビックリ。
Netでググってみると、たくさんの情報が検索できる。
公式HP(ここ)によると、そのプロフィールは 「1969年東大経済学部卒業、同年東レ入社。自閉症の長男を含め3人の子どもを持つ。
しばしば問題を起こす長男の世話、加えて肝臓病とうつ病を患った妻を抱え多難な家庭生活。一方、会社では大阪・東京と6度の転勤、破綻会社の再建やさまざまな事業改革など多忙を極め、そうした仕事にも全力で取り組む。
2001年、東レ同期トップで取締役となり、2003年より東レ経営研究所社長となる。
2010年(株)佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表。・・・」
だそうだ。
そして2010年と少し古いが、「なぜそれでも「同期トップ」の役員になれたか」(ここ)という雑誌「PRESIDENT」の記事が面白かった。
「企業人として人にうらやましがられる出世を遂げた一方で、佐々木家には何度も何度も苦しみが襲いかかった。長男の自閉症、長女の自殺未遂、妻の急性肝炎をきっかけとしたうつ病、そして二度にわたる自殺未遂。佐々木は心も体も休む間もなく家事をこなし、家族を守り、責任の重くなる仕事でも人一倍の実績をあげ続けた。傍から見ると超人に見えるが、佐々木自身は「誰でも同じ立場になればできますよ」と淡々と語る。・・・」(ここより)
その実行力とエネルギーは凄まじい。とても凡人には出来ない。
詳細は上のお話を聞いて頂くとして、自ら実践した仕事上の指摘については、まさに的確。
自分も現役生であったら、どれほどの影響を受けるか・・・!
自分の平凡なサラリーマン生活を通して、氏の指摘を思うに、まず、東レという会社の懐の深さを思う。
氏は、いわゆる異端者。変わり者。出る杭・・・。それを排除せず、キチンと評価し、会社の幹部にまで昇進させた社風。なるほど、経団連会長まで排出した会社か・・・
この話の中でも言っていたが、課長になって、自分流に仕事の仕方を変えて残業を減らした。しかし、自分が転勤で居なくなると、どこも長続きせず、元の木阿弥。
それが普通の会社の姿。そんな理想を地で行った仕事ぶりでも排除されなかったのは、普通の会社では有り得ない。
氏の話に出てくる、予め目標を決めて半年ごとに見直すいわゆる「目標管理」という手法。自分も現役時代に随分とやったが、成果につながったかどうかは自信が無い。期が終わった後に自己採点で“○”を点けるため、最初から目標を低く設定する傾向があった。氏の場合は、キチンとしたディスカッションのもとで、それを許さなかったという。
そもそもこれらの手法は、部下に比べて上司の能力が高いことが前提。通常の会社は、幾ら上司だからと言って能力が高いとは言えないため、成り立たない。言われたから仕方が無くやっている、という形だけで終わっている会社がゴマンとあるだろう。
それにしても、氏の指摘はキレが良い。「そんなことを言われたって・・・」と、ついグチも出るだろうが、色々な指摘の中で、自分たちの環境にマッチするアドバイスがひとつでも見付かれば、それは儲けもの。
「今が良い」という固定概念を捨てて、氏のアドバイスが、少しでも参考になれば少なくても少しは良くなる。
氏の本の発行は160万部を超えているという。現役時代に知っていたら色々と読んだと思う。40代の管理職の人には参考になる話だと思った。
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コメント
エムズの片割れ様
素晴らしい方がいるものですね。
感銘の一言です。
エムズの片割れ様の分析?評も流石です。
「氏は、いわゆる異端者。変わり者。出る杭・・・。それを排除せず、キチンと評価し、会社の幹部にまで昇進させた社風。なるほど、経団連会長まで排出した会社か・・」説得力があります。
投稿: りんご | 2018年12月14日 (金) 21:20
佐々木氏のことは新聞で読んだ記憶があるが、肉声からはより強いメッセージが得られます。
投稿: りんご | 2018年12月14日 (金) 21:22
佐々木氏の話を聞いて、この人の脳は方眼紙のマス目の様だと思いました。それも1ミリ以下のマス目ですね。言われていることは理解は出来ても、私の脳のように線が太くなったり丸くなったり、とんでもない角度で曲がっている者にはついていけません。青空に浮かんでいる雲を消えるまで眺めたり、川水の流れをじっと見ていたり、自閉症の息子が泥水で家を汚すのを笑って飽きるまで見て居たり、そんなことが許される社会も大切だと私は思うのです。収益優先か能力を伸ばすかはこれからの社会や企業の大切な課題になると思います。ゆるんだマス目の方が精神が健全に育つような気がするのです。新しい発想が生まれる土台にもなりそうです。要は人間とは何かを考える起業家であって欲しいと思うのです。
投稿: 白萩 | 2018年12月15日 (土) 16:57
白萩様の考察は深いですね。
よくも悪くも瞬間湯沸かし器と言われる私は,ただいい話だ、感動した」の一言でした。
それでも佐々木氏が類まれな素晴らしい経営者でもあることに相違はありません。
事例は異なるが ラジオ深夜便で知った(絶望名言の)頭木弘樹さん以来の感動です。
投稿: りんご | 2018年12月16日 (日) 06:51
人間は無駄の中から芸術とか、文学を生んできたと私は思います。奥様や娘さんの料理が完璧というところに、私はひっかかったのです。
完璧な夫の期待を裏切らない様にの毎日では神経が疲れてしまいます。たまには焼いた魚が真っ黒に焦げたり、卵焼きが黒焦げになったりして家族が笑い転げる家庭で良いと私は思うのです。何でも完璧では神経が疲れ果てます。会社もそうです。仕事が出来る人,出来ない人がいて心のバランスが取れるのです。それを上手に使って成り立たせるのが立派な人だと思います。無駄の効用こそ人間が人間らしく生きて居られ社会だと思っています。無駄こそ生きる力の元になります。完璧主義は人間を破壊しかねません。
投稿: 白萩 | 2018年12月16日 (日) 09:41