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2018年12月28日 (金)

「著作権、死後70年に延長」~一部権力者だけの意向で!?

先日のIWC(国際捕鯨委員会)から脱退と同じく、著作権の延長についても、国民的議論を避けるように、そうっと水面下で?成立してしまったという。

美術・文芸・音楽著作権、30日から死後70年に延長
 日本の美術・文芸・音楽作品の著作権の保護期間=キーワード=が30日、環太平洋経済連携協定(TPP)発効に合わせ、欧米並みの死後70年に延びる。延長は約半世紀ぶり。過去の作品を利用した新たな創作がしにくくなるなど、文化の発展を妨げるのではないか、という懸念の声も上がる。(木村尚貴)

 ■歓迎 権利者「世界の潮流、子孫も養える」/残念 利用者「公共財産」化遅れ、使用に壁
 「生涯をかけて描いた作品で、子々孫々まで養える安心感がある」。「銀河鉄道999」の漫画家松本零士(れいじ)さんは、延長を歓迎する。欧米との差をかねて疑問に思っており「日本もやっと世界の潮流に合わせた形になった」と話す。
181228chosakuken  TPP発効で、1968年に亡くなった作者の著作権はぎりぎり消滅を回避した。68年没の画家藤田嗣治(つぐはる)の著作権を管理する仏の「フジタ財団」の担当者も、「非常に満足している」という。「作品の使用料で、藤田の仕事を保護したり、藤田の妻の遺志だった、若者支援の芸術プロジェクトを続けたりすることができる」
 一方、著作権が消滅した「パブリックドメイン」(PD)の書籍をテキストファイルにし、ネット上でフリー公開してきた「青空文庫」の管理人、大久保ゆうさんは「新しく社会の公共財産になる作家が、2039年までいなくなる」と残念がる。未公開のPD作品はまだ膨大にあるため、年500点程度の公開ペースは維持するつもりだという。
 文化は、過去の作品を利用することで新たな作品が生まれたり、逆に元の作品が再評価されたりする面もある。強い著作権は作品の利用をちゅうちょさせる。
 あるベテラン演出家は、かつて三島由紀夫の戯曲を遺族の許可を得て上演した際、セリフや設定を変えてはならないという条件がついたことを思い出す。「縛りは相当きつかった。時代にあわせた設定変更などは柔軟に認めないと、作品自体が使われなくなるかもしれないと思った」。自ら脚本も書くこの演出家は体験を踏まえて言う。「自分の死後も、作品は上演してほしい。自分の芸術を理解しない縁者などに権利が渡った場合にどう扱われるか分からない以上、臓器移植カードのように、著作権をどう扱うのかという意思表示を準備しなくては」
 延長すると、著作権を継いだ人間を追跡できず、使われなくなる「孤児著作物」が増える恐れもある。作品の利用で経済的な価値を生む著作権は、分割や譲渡もできることが拍車をかける。
 青空文庫は、保護期間内にある作品も、作者や著作権継承者の申し入れがあれば公開を進める方針だ。実際に存命中の作家から申し入れが増えているという。

見送りが一転、TPP合わせ 「手続き、国内議論を回避」批判も
 保護期間は、著作権の国際ルールを定めるベルヌ条約の1948年改正で、作者の孫世代までカバーできる50年を基準として義務化された。だが「平均寿命が延びている」などとして、90年代以降EU諸国や米国が相次いで70年にした。
 コンテンツ大国は、輸出先の国の保護期間が延びれば、使用料収入が増えるため、米国は日本に繰り返し延長を求めていた。TPP交渉では、米国が途中離脱し、延長は加盟国の義務にならなかった。加盟国で50年だったニュージーランドなどは見送る一方、日本は欧米の動向や一部権利者の声を踏まえ、延長に踏み切った。
 延長を巡っては、文化政策の方向性を決める2010年の国の委員会などで賛否の議論を尽くし、見送られた経緯がある。だが今回、政府はTPP関連法案の一項目に延長を盛り込み国会に提出。国会では大きな議論にならないまま、可決成立した。延長に反対してきた福井健策弁護士は「義務ではなかったのに、政府はするっと通した。国外で合意し、国内議論を回避したポリシーロンダリング(政策洗浄)的な手続きだ」と批判する。

 ◆キーワード
 <著作権の保護期間> 日本では映画の著作物をのぞき、原則作者の死後50年までだった。他人が期間内の作品を使う時は、作者や遺族など著作権を持つ人・団体に許可を得ることが必要で、場合によっては対価として使用料が発生する。無断利用は刑事罰の対象。
 作者の死後も保護期間がある理由は、「権利を継いだ遺族などが収入を得られるとなれば、作者の創作意欲も上がるため」などと説明される。」(
2018/12/24付「朝日新聞」p25より

前に「著作権の70年延長は疑問だ」(ここ)という記事を書いた。12年前である。ここでも書いたが、自分は延長に反対。理由は前書いたと同じ。
上の記事で「2010年の国の委員会などで賛否の議論を尽くし、見送られた経緯がある。」とあるように、国内では見送られたが、TPPによってアメリカに(ディズニーに?)押し切られた!? そしてTPPからアメリカが脱退したので、ニュージーランド同様に元に戻すかと思いきや「今回、政府はTPP関連法案の一項目に延長を盛り込み国会に提出。国会では大きな議論にならないまま、可決成立した。」

その手法を「ポリシーロンダリング(政策洗浄)的な手続き」と指摘されているが、改めて「ポリシーロンダリング」をググってみると、wikiにはこうある。
ポリシーロンダリング(英: policy laundering)とは政治的決定や立法、条約制定の当事者を隠蔽し、そのプロセスを不透明化する行為のことで、マネーロンダリングから派生した用語である。国内で規制を行うために前もって国際条約を締結しておき、それに基づいて国内法を整備する手法は、典型的なポリシーロンダリングである。責任の所在を曖昧にする、本来の目的を隠蔽する、あるいは立法の手続きを迂回するために行われる。」
「非公開で策定された国際条約はポリシーロンダリングによく利用される。いったん条約が策定されてしまえば、どの部分を誰が追加したか部外者には分かりにくいためである。全ての当事者が条約のどの部分に関しても、妥協の結果として追加に同意したが本意ではなかったと主張できるため、責任の所在が曖昧になる。」

今回、成立の推移を見逃した野党、メディアの責任も大きいが、何よりも、国民の目に触れないまま、スルッと法律が出来てしまうことが怖ろしい。まさに権力者の胸先三寸。

昔の自分の記事の繰り返しだが、上の記事で、「(70年間への延長で)子々孫々まで養える」と喜ぶ発想が理解出来ない。自分の成果が「子々孫々まで」となると、まさに江戸時代の「お家」の話になってしまう。個人の実力より、お家の世襲で豊かさが決まる社会。カースト制を思い出す。

先日、南青山の児童相談所建設で「ブランド価値が下がる」と地元住人が反対しているというニュース。
「ネギを買うのも紀伊国屋。DV被害者はすごく生活に困窮していると聞いている。そういう方たちが生活するのに大変。一般の人でも大変な物価高の中で大変ですので、ふさわしい場所なのか疑問」
「この周辺のランチ単価を知ってますか?1600円ぐらいするランチ単価のところで、なんで親が施設に子どもを連れてくるんですか。ここじゃなくてもいいじゃないですか。世界的ブランドがここまで集まってるのは青山しかないんですよ!!」(
ここより)

こんな“お金持ち”の人の中には、自分の努力では無く、著作権のような先祖の遺産でノウノウと暮らしている人が居るのでは無いかと思ってしまう。
IWC脱退と同じく、一部権力者だけの意向で、社会が変わっていく今の世の中。
何としても止めねば!

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