「間違えやすい慣用表現 ベスト20」
今日(2018/09/29)の朝日新聞の「be」にこんな記事があった。
「(beランキング)間違えやすい慣用表現 反省モードは今すぐ解除を
<間違えやすい慣用表現 ベスト20>
①間が持たない 545票
○間が持てない=時間をもてあましてどうしたらよいかわからない。三省堂国語辞典(三国/第7版)では「間が持だない」も記載
②押しも押されぬ 529票
○押しも押されもせぬ=どこへ出ても圧倒されることがない/誰もが認める。「押すに押されぬ」(厳として存在する)と混同?
③怒り心頭に達する 496票
○怒り心頭に発する=心から怒りがこみあげる。「頭に来る亅を連想する言葉だが、「心頭」に頭の意味はないという
④足もとをすくう 485票
○足をすくう=相手のすきをつき、卑劣な方法で失敗させる。三国では「足をすくわれる」の項目で「足もとをすくわれる」とも
⑤過半数を超える 478票
○半数を超える、過半数を占める=全体の半数を超える。読者からは「選挙報道での誤用が目立つ」との指摘が多く寄せられた
⑥愛想を振りまく 448票
○愛嬌を振りまく=好感の持てる言動や表情をする。三国では「愛想をふりまく」の用例も
⑦恨み骨髄に達す 403票
○恨み骨髄に徹す=人を恨む気持ちが骨のしんまでしみとおる/深い恨みを抱く
⑧思いもつかない 397票
○思いもよらない=想像や予期をしていない/まったく思いがけない。「思いつきもしない」と混同?
⑨乗るか反るか 382票
○伸るか反るか=成否は天にまかせ、思い切って物事を行う様子。三国では「俗に『乗るか反るか』とも」
⑩熱にうなされる 372票
○熱に浮かされる=高熱のためにうわごとを言う/夢中になって分別を失う
⑪上や下への大騒ぎ(正:上を下への大騒ぎ)368票
⑫うしろ足で砂をかける(後(あと)足で砂をかける)346票
⑬屋上屋を重ねる(屋上屋を架す) 344票
⑭'微に入り細にわたって('微に入り細を穿(うが)って)338票
⑮薄皮をはぐように(薄紙を剝ぐよう)332票
⑯合いの手を打つ(合いの手を入れる)320票
⑰的を得た(的を射た) 316票
⑱二の舞いを踏む(二の足を踏む・二の舞を演ずる)311票
⑲したづつみを打つ(舌鼓(したつづみ)を打つ)296票
⑳火ぶたが切って落とされる(火ぶたが切られる)293票
*(かっこ)内はエムズが勝手に追記
<調査の方法> 朝日新聞デジタルの会員登録者を対象に8月、アンケートした。「大修館 最新国語表記ハンドブック」などを参考に選んだ77の慣用表現から、「間違えやすいと思うもの」をいくつでも選んでもらった。回答者数は1256人。21位以下は「寸暇を惜しまず」「雪辱を晴らす」「嫌気がする」「明るみになる」「新規巻き返し」「目鼻が利く」など。
「チェックしながら自信がなくなってきた」(千葉、48歳女性)、「間違って使っていたことにショック」(大阪、59歳男性)。77の間違えやすいといわれる慣用表現を並べたアンケート。協力していただいた皆さんに、ご負担をかけたようです。反省してもらうことが目的ではなかったのですが……。
反省モードに陥ったという声はまだまだある。
「言い間違いの多い人生だったのかもな、と気づいた」(東京、45歳女性)、「今から思えば穴があったら入りたくなる。恥ずかしい」(岡山、50歳男性)、「自信がなくなってこれからは話せなくなりそう」(宮城、65歳女性)。
間が持たない/間が持てない。アンケートを作成しておきながら、その区別がいまだにおぼつかない記者は、ただただ恐縮するばかり。実はある人から「どっちでもいい」と言われ、開き直ってしまった面もある。ある人って? 後段で登場してもらおう。
本来、慣用表現の慣用とは、習慣として世間に広く使われること。文化庁が毎年実施している国語に関する世論調査からは、「本来とは違う言い方」が広く浸透していることが分かる。
今回1位の「間が持たない」を使う人は61.3%(2010年度)、2位「押しも押されぬ」が48.3%(12年度)、3位「怒り心頭に達する」が67.1%(同)。そうなると、次のような感じ方、考え方をする人がいても当然と思える。
「『間が持たない』って言っています。『間が持てない』って言ったら、反対に間違っていると言われるかもしれません」(長野、55歳女性)、「半数以上の人が使い、それで意味が通じ合うのであれば、それはもはや間違いではないと思う」(埼玉、64歳男性)。
アンケートでは、間違った慣用表現をどう感じるかも尋ねた。「気持ち悪い」「許せない」と、否定的に捉える人は計31%だった。
「いい年して日本語を間違うのは、だらしない服を着る以上に恥ずかしい」(山口、54歳女性)、「間違った表現でも意味が通じればいいという風潮は、おかしな行動でも大衆が認めればやっていいことにつながる、と考えるのはうがち過ぎ?」(宮城、51歳女性)。
一方、「意味が通じれば良い」「言葉は時代によって変わる」など現状肯定派は計63%にのぼる。
「言い間違いは日本語の乱れと感じてきたが、間違ったままそれが当たり前になっている表現も多いと知り、仕方ないと受け入れた」(岡山、68歳女性)、「三省堂国語辞典(三国)の編纂(へんさん)者の1人である飯間さんは『的を得る』という表現を載せるため、250年前の文書にまであたって、あやまりではないと証明したという。言葉は生きていて変遷するものでは」(京都、76歳男性)。
■正しい?誤り? 実はどっちでも
ある人が出てきた。be3面「街のB級言葉図鑑」でおなじみ、飯間浩明さん(50)である。アンケート結果に目を通してもらうと、ちょっと困った顔になった。
「どっちでもいいと思えるものが多いですね。そもそも私は『間違い/正しい』という観点で見るべきではないと考えています」
たとえば「間が持てない」。「間が保てない」の意味だが、「持たない」も「保てない」の意味がある。実は「間が持たない」を見出しにする国語辞典も。「押しも押されぬ」は文法的な誤りを指摘されるが、「負けず嫌いなど、文法的におかしいのに定着した言葉はいくらでもあります」。
上位に入った表現は、見出しにはならなくても、俗用などとして辞典が公認しているものも多い。
「多くの人が使うようになった言葉には必ず合理的な根拠があるものです。正誤についてはいろいろな説があるので、参考にとどめておく程度でいいでしょう」
反省モードは今すぐ解除願います。 (坂本哲史)」(2018/09/29付「朝日新聞」b2より)
この記事を読みながら、自分も混乱。何よりも、まったく使っていない(知らない)慣用表現も多い。いやはや日本語は広い・・・
自分は、「相手に通じれば良いではないか」派だな・・・
正しい使い方をしても、逆に相手が「間違っている」と思うかも知れない。幾ら文法的に誤っていようが、言葉は生きているので、そう堅く考えなくても良いように思う。
それにしても、この朝日の記事は不親切で、⑪~⑳は正しい用語が書いていない。仕方が無いので、Netでググってみると、誤った使い方という表現がNet上にはたくさん使われていた。参考に、たぶん正しいと思われる言葉を追記しておいたが・・・。
それにしても、このアンケート。千人以上の人が“反省”したと言うから面白い。
いかに、言葉が色々な使い方をされているかの証拠。
前に「気持ちが悪い日本語 ベスト20」(ここ)で「⑨やばいよ、この昧」という言葉があったが、「ヤバイ」が今の若者は「すごい」の意味で使っている。
つくづく(つくずく!?)、言葉は生きているな、と思いながら読んだ。
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コメント
最近違和感のあった慣用句について。一つは、先日の「NHK杯将棋対局」を見ていたら、同年代の若手棋士の対局だったのですが、二人は年齢が学年でいうと、同学年にあたるので、聞き手も解説者も「同級生対決ですね」というのです。二人は同じ中学ないし高校に通っていたのかと思ったら、一人は九州出身だし、もう一人は東京の出身で、学校が一緒になるはずがない。どうやら、年齢が同学年にあたることを「同級生」というらしい。私の感覚でいうと、「同級生」とは同じ学校のクラスメートあるいはクラスは別でも、同じ学校に通う同学年の生徒についていう。決して別の学校の同学年生を「同級生」ということはない。
もう一つは、NHKEテレの、先週(1/8)のらららクラシックという番組は「バッハの職人気質」という題でしたが、MCの二人は「しょくにんきしつ」と読むのです。たしかに、「気質」はそれだけ取り出すと、「きしつ」とも読みますが、「職人気質」という熟語は「しょくにんかたぎ」と読むのではなかったか?「しょくにんきしつ」ではピンときません!
二つの慣用表現について自分は古い頭の「昭和の人間」なのかなあ(笑)とつくづく考えさせられました(笑)。ほかの皆さんはこの二つの表現についてどう思われるでしょうか?
【エムズの片割れより】
「同級生」は、当然同じクラスでしょう。
ついでに「他人事(ひとごと)」も「たにんごと」??
投稿: KeiichiKoda | 2021年1月12日 (火) 14:43
そうですよね。「同級生」とは同じ学校のクラスメートのこと、あるいはせいぜい同じ学校の同学年生を指す言葉ですよね。でも、家内なども、最近は知人から、同じ年齢だとわかると、「わたしたち同級生ね」と言われたりすることがあると言っています。そうでない使い方も増えているようです。
他人事を「ひとごと」ではなく、「たにんごと」と読むことも増えていることはTVドラマなどで知っています。「ひとごと」を国語辞典で引くと、「ひと事・人事」とありますから、他人事と書くようになったのは最近なのかもしれません。そのうち、人妻も「他人妻」と書くようになり、「たにんづま」と読むようになるのかもしれません(笑)。
「職人気質」を「しょくにんかたぎ」ではなく「しょくにんきしつ」と読むのはおかしいではないかとNHKに指摘してあったのですが、さきほどNHKから「しょくにんかたぎ」と読むのが正しく、今後気をつける旨の返答をもらいました。
投稿: KeiichiKoda | 2021年1月14日 (木) 19:34
エムズさんは「せろん」派ですか、「よろん」派ですか?わたしは「よろん」派です。現在放送中の大河ドラマ「青天をつく」を見ていたら、盛んにドラマの中の人物たちがせろん、せろん、と叫ぶので違和感がありました。わたしは、本来、輿論と書くのが正しく、戦後、輿論の「輿」が当用漢字にないので、「輿」のかわりに「世」を当て、「世論」としたと思っていたので、「せろん」というのは非常におかしいと考えていたからです。戦後しばらくはほとんどの人は「せろん」といっていたと思いますが、最近は「よろん」という人が増えた気がして、よろこばしいと思っています(笑)。よろんを「世論」と書くと、「せろん」と読むのが正しいしいでしょう。これを「よろん」と読むと、「よ」は訓読みだが、「論」は音読みで、いわゆる「湯桶読み」になってしまうからです。しかし、当用漢字のなかった明治時代には「せろん」という言葉はなかっただろうと思っていました(したがって、明治時代に政治家たちが「せろん、せろん」と叫ぶのはおかしい、と。ただ、「輿論と世論」をネットでしらべてみると、明治時代にも「世論」という言葉はあったようです。たとえば、これ
http://www.keiomcc.net/sekigaku-blog/2014/06/post_591.html
をご覧ください。ただ、意味はすこし違うようで、明治時代に2つは区別して使われていたようです。Public Opinionを意味するときは「輿論」が正しいようです。一般庶民の感情をあらわすときは「世論」だ、と。いずれにせよ、大河ドラマの中の話の意味では「輿論」であって、「世論」ではないので、「せろん」と発音するのはおかしいでしょう。
【エムズの片割れより】
なかなか研究熱心なご様子。
自分も「よろん」でしょうが、漢字だけ見ると「せろん」と言いたくなります。
漢字も、ルーツをたどると、深い!
最近読んでいる江戸時代の時代小説に、聞いたことのある地名がたくさん出て来ます。
地名も、それぞれ永い歴史や由緒がある事が分かります。
それに比較して、何とか「アルプス市」など、自分には到底許容できません。
都市大学東京や、高輪ゲートウェイ駅も同じですね。
歴史を権力者の好みで、踏みにじらないで欲しいものです。
投稿: KeiichiKoda | 2021年12月20日 (月) 18:11