大和混声合唱団の混声合唱組曲「三つの山の詩」
自分にとっては“まぼろしの名曲”、石井歓作曲「三つの山の詩」を、何と半世紀ぶりに聞く事が出来た。
先日、“伊勢生まれの下総人”さんから「2012年7月に神奈川県の大和混声合唱団がこの組曲を定期演奏会で歌っているようです。」(ここ)というコメントを頂いた。
ビッグニュースである。早速、図々しくも大和混声合唱団のHP(ここ)に載っているメールアドレス宛に、「もし音源があったら聞かせて欲しい」旨のお願いをしたところ、広報担当の方が会に諮ってくれて、今日譲って頂いたCDが届いた。
2012年7月28日に神奈川県立音楽堂で開かれた、大和混声合唱団「第42回定期演奏会」の「三つの山の詩」である。楽譜は(ここ)。
<大和混声合唱団の「三つの山の詩」>
混声合唱組曲「三つの山の詩」
作詞:中田浩一郎
作曲:石井 歓
Ⅰ.ともしび
山は緑にくれて
ひかり映す湖
岸辺にさざめく波の音
すべては深い闇に沈む
ともしびのまたたきは
誰れを待つ家の燈(ひ)か
秋の空 すみわたり
月は登る 月は登る
草色に輝いて
山を森を照して
ともしびひかる家の内
娘がひとり住んでいた
はた織る機の音もかなし
誰れ知らぬ物語り秘めた
――みずうみ
Ⅱ.祭 り
今宵祭りだ
湖祭りだ
燃えろ かがり火
神の火祭り
みんな 踊ろう
今宵祭りだ
湖祭りだ
遠い光りは
水に映って
赫く燃えるよ
今宵祭りだ
神の火祭り
燃える かがり火
遠く輝く
みんな 踊ろよ
赫い光りは
空に輝く
燃える光りを
囲んで踊ろよ
今宵祭りだ
燃えろ かがり火
夜空にひろがり
夜空を染めて
今宵祭りだ
湖祭りだ
燃えろ かがり火
神の火祭り
山の娘も
共に踊れば
若い男が
そっと ささやく
みんな輪になり
踊る火祭り
恋の夜は夢とふけて
かがり火 消えてゆく
遠く消えてゆく
消えてゆく
Ⅲ.別 れ
朝のひざし明るく
湖とおく琿くとき
朝のひかりさし 山脈映えわたり
鳥は森に眼覚める
山の娘はいとしい人と別れゆく
――かえらぬ愛を
舟は若者のせて遠く消える
遙かに遠く消える
手を振る君(ひと)の姿も見えぬ
岸に娘はたたずむ いつまでも
真実(まこと)の誓いと
優しい愛の想いに
まことの愛を
かわらぬ誓いを……
思えば、この曲について、「混声合唱組曲「三つの山の詩」を聞きたい」(ここ)と、「混声合唱組曲「三つの山の詩」のテープを見つけた」(ここ)という記事を書いたのが、2007年夏の事であった。この時の演奏は、某大学混声合唱団の第17回定期演奏会(1968年1月10日)の録音だった。
これらの記事には、「昔、歌ったことがある」という人からのコメントを多数頂いた。しかしレコードやCDは見つからなかった。それから11年・・・。
この名曲を取り上げた「大和混声合唱団」について、HP(ここ)の「団の紹介」を覗いてみる と、書いてある客演指揮者がすごい。蒼々たる作曲者が、自らの作品をこの合唱団で指揮指導している。前に八王子市(ここ)や日野市(ここ)のも合唱祭に行ったことがあるが、こんな例は聞いたことが無かった。合唱団のレベルの高さを象徴しているのかも知れない。
そして、今日送られて来たCDの完成度にビックリ。2枚組のCDだが、ジャケットの印刷など、市販品と同じ。CDそのものはCD-Rだが、60人の団員の中には、このような道に長けておられる人も居るらしい。そして、オーケストラを含めてさすがに音が良い。市販CDと違って、音源をあまりいじっていないので、オリジナルの原音の音質の良さが残されているのだろう。
ともあれ、半世紀ぶりに「三つの山の詩」を聞くことができた。
まさに、完全に忘れ去られ、もう歌われることは無いと思っていた石井歓のこの名曲が、今でも生きていた!!ということが嬉しい。
合唱曲に時代の流行があるかどうかは知らない。たぶんに指揮者や指導者の選曲に寄る所が大きいのかも知れない。しかしその結果、この演奏は、数十年ぶり演奏された?貴重な演奏(録音)なのかも知れない。少なくてもNetで検索する限りは・・・・
半世紀前、一度だけ聞いて一目(耳)惚れした「三つの山の詩」。半世紀を経て今回再会した結果、まだまだ美人だということを確認した。
Netを経由して、いつまでもこの歌が生き残ることを祈りたい。
今回このCDの入手に関し、丁寧に対応して頂いた団の正副広報担当の方に感謝します。
(追)
送られて来た2枚のCDを順に聞いているが、オーケストラとの共演が、これまた素晴らしい。まだ途中だが、自分の好きな、ベルディの歌劇「アイーダ」から「凱旋の合唱」(凱旋行進曲)がまた素晴らしかった。前澤均:指揮/湘南アルス室内オーケストラ・大和混声合唱団の演奏である。
<湘南アルス室内オーケストラのヴェルディ「凱旋の合唱」>
演奏が終わったとき、観客から「ブラボー」という声がかかったが、自分も一緒に叫びたくなった。
規模が小さいオーケストラだということは音で分かるが、逆に演奏者の一人ひとりが見えるような演奏だ。何よりも、音が良い。CDで聞くフルオーケストラとはひと味違う。(ここ)によると、会場は神奈川県立音楽堂だという。どんな録音機材を使っているか知れないが、たぶん天井からのワンポイント録音なのだろう。(それに比べると、上の合唱の録音は、ソフトでノイズを取ったときのような歪みが少しあるのが残念)
それにしても、このオーケストラのレベルにはビックリ。今まで、ほとんどフルオーケストラしか聞いてこなかった自分だが、室内オーケストラを見直した。このCDは、オーディオマニアの目からも面白い。
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