沖縄慰霊の日~相良倫子さんの平和の詩「生きる」
今日は、沖縄慰霊の日である。平和祈念公園にある「平和の礎(いしじ)」には、今年までに24万1525人の名前が刻印されているという。
この追悼式で、平和の詩「生きる」が朗読された。この中学3年生の立派な態度に感銘を受けた。
「命よ響け。生きゆく未来に。 中3、式典で詩
追悼式で「平和の詩」を朗読したのは、沖縄県浦添(うらそえ)市立港川中学3年の相良倫子(さがらりんこ)さん(14)。県平和祈念資料館が県内の小・中・高校、特別支援学校などから募り寄せられた971点の中から選ばれた。
タイトルは「生きる」。込めたのは「平和とは当たり前に生きていけること」「命の輝きの大事さを訴えたい」との思いだった。
94歳になる曽祖母は、沖縄戦で友人を亡くし、収容所に入る過程で家族と離ればなれになった。「戦争は人を鬼に変える。絶対にしてはいけない」と幼い頃から何度も言い聞かされてきた。それが平和を考える原点になった。
詩では、平和学習で学んだ戦争の情景を描いた。
〈小鳥のさえずりは、恐怖の悲鳴と変わった。/優しく響く三線は、爆撃の轟(とどろき)に消えた。/青く広がる大空は、鉄の雨に見えなくなった。/草の匂いは死臭で濁り、(中略)みんな、生きていたのだ。/私と何も変わらない、懸命に生きる命だったのだ。〉
こだわったのは「生きる」という言葉。繰り返しつつ、最後はこう結んだ。
〈鎮魂歌よ届け。/悲しみの過去に。/命よ響け。生きゆく未来に。/私は今を、生きていく。〉(山下龍一)」(2018/06/23付「朝日新聞」夕刊p13より)
<相良倫子さんの平和の詩「生きる」>
「生きる」
沖縄県浦添市立港川中学校 3年 相良倫子
私は、生きている。/マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、/心地よい湿気を孕(はら)んだ風を全身に受け、/草の匂いを鼻孔に感じ、/遠くから聞こえてくる潮騒に耳を傾けて。
私は今、生きている。
私の生きるこの島は、/何と美しい島だろう。/青く輝く海、/岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波、/山羊(やぎ)の嘶(いなな)き、/小川のせせらぎ、/畑に続く小道、/萌(も)え出づる山の緑、/優しい三線の響き、/照りつける太陽の光。
私はなんと美しい島に、/生まれ育ったのだろう。
ありったけの私の感覚器で、感受性で、/島を感じる。心がじわりと熱くなる。
私はこの瞬間を、生きている。
この瞬間の素晴らしさが/この瞬間の愛(いと)おしさが/今と言う安らぎとなり/私の中に広がりゆく。
たまらなく込み上げるこの気持ちを/どう表現しよう。/大切な今よ/かけがえのない今よ
私の生きる、この今よ。
七十三年前、/私の愛する島が、死の島と化したあの日。/小鳥のさえずりは、恐怖の悲鳴と変わった。/優しく響く三線は、爆撃の轟(とどろき)に消えた。/青く広がる大空は、鉄の雨に見えなくなった。/草の匂いは死臭で濁り、/光り輝いていた海の水面は、/戦艦で埋め尽くされた。/火炎放射器から吹き出す炎、幼子の泣き声、/燃えつくされた民家、火薬の匂い。/着弾に揺れる大地。血に染まった海。/魑魅魍魎(ちみもうりょう)の如(ごと)く、姿を変えた人々。/阿鼻叫喚(あびきょうかん)の壮絶な戦の記憶。
みんな、生きていたのだ。/私と何も変わらない、/懸命に生きる命だったのだ。/彼らの人生を、それぞれの未来を。/疑うことなく、思い描いていたんだ。/家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。/仕事があった。生きがいがあった。/日々の小さな幸せを喜んだ。手をとり合って生きてきた、私と同じ、人間だった。/それなのに。/壊されて、奪われた。/生きた時代が違う。ただ、それだけで。/無辜(むこ)の命を。あたり前に生きていた、あの日々を。
摩文仁の丘。眼下に広がる穏やかな海。/悲しくて、忘れることのできない、この島の全て。/私は手を強く握り、誓う。/奪われた命に想(おも)いを馳(は)せて、/心から、誓う。
私が生きている限り、/こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、絶対に許さないことを。/もう二度と過去を未来にしないこと。/全ての人間が、国境を越え、人種を越え、宗教を越え、あらゆる利害を越えて、平和である世界を目指すこと。/生きる事、命を大切にできることを、/誰からも侵されない世界を創ること。/平和を創造する努力を、厭(いと)わないことを。
あなたも、感じるだろう。/この島の美しさを。/あなたも、知っているだろう。/この島の悲しみを。/そして、あなたも、/私と同じこの瞬間(とき)を/一緒に生きているのだ。
今を一緒に、生きているのだ。
だから、きっとわかるはずなんだ。/戦争の無意味さを。本当の平和を。/頭じゃなくて、その心で。/戦力という愚かな力を持つことで、/得られる平和など、本当は無いことを。/平和とは、あたり前に生きること。/その命を精一杯(いっぱい)輝かせて生きることだということを。
私は、今を生きている。/みんなと一緒に。/そして、これからも生きていく。/一日一日を大切に。/平和を想(おも)って。平和を祈って。/なぜなら、未来は、/この瞬間の延長線上にあるからだ。/つまり、未来は、今なんだ。
大好きな、私の島。/誇り高き、みんなの島。/そして、この島に生きる、すべての命。/私と共に今を生きる、私の友。私の家族。
これからも、共に生きてゆこう。/この青に囲まれた美しい故郷から。/真の平和を発進しよう。/一人一人が立ち上がって、/みんなで未来を歩んでいこう。
摩文仁の丘の風に吹かれ、/私の命が鳴っている。/過去と現在、未来の共鳴。/鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。/命よ響け。生きゆく未来に。/私は今を、生きていく。
自分は、夜7時のNHKニュースで初めて見たが、その前にカミさんが別のニュースで見ていて「何も見ないで、素晴らしい」と言っていった。
確かに、前を向いてしっかりと言っている。朗読ではない。叫びだ。
この沖縄県民の戦争に対する魂の叫びと、その次に “紙を朗読”した安倍首相の薄っぺらな挨拶の違い・・・。
それと中継番組で、NHKもなかなか粋なことをするな、と思ったのが、「だから、きっとわかるはずなんだ。戦争の無意味さを。本当の平和を。頭じゃなくて、その心で。戦力という愚かな力を持つことで、得られる平和など、本当は無いことを。」という部分で、ずっと安倍首相の横顔をカメラが写していたこと。首相はただ目をつぶっていたが、首相の頭の中は・・・??
こんな詩を聞きながら、翁長知事も指摘していた沖縄という米軍の不沈空母の現状に思いをはせ、戦争への道にブレーキを・・・
詩の朗読が終わって席に戻ったときの相良倫子さんのホットした笑顔が、何とも可愛かった。
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コメント
私もNHKの夜7時のニュースを見ていて、
画面にくぎ付けになりました。
文章の素晴らしさはもちろん、原稿を見ずに
しっかりとした口調で訴える姿に感動しました。とても中3とは思えない程で、こんな中3がいることに驚きました。
ビデオ映像も公開されていたので、もう一度見てしまいました。
https://mainichi.jp/articles/20180623/k00/00e/040/310000c
【エムズの片割れより】
幾ら自分が作った詩でも、これだけ長文の詩を暗唱して、TV中継のなか、よどみなく堂々と言えるのは、たいしたものですね。
将来、国会議員となって国政に出て来て欲しいもの!?
投稿: classical.s | 2018年6月24日 (日) 14:35
相良さん!
素晴らしかったです!
涙が止まりません。
(安倍さんがかすんでしまいました。空々しく聞こえました)
投稿: 木更川 | 2018年6月25日 (月) 12:12
相良倫子さんの主張。素晴らしいです。
倫子さんの主張に感銘を受け、合唱曲がつくられたこと、素晴らしいと思います。全世界の人達に、この歌を広げて、戦争の悲惨さ、無意味さが伝わるといいですね。。マスコミの方も、応援してください。世界人類が、平和になりますように、願っています。
投稿: 小林 正直 | 2019年6月28日 (金) 18:37
今日、1年ぶりに相良倫子さんの主張を聞きました。合唱曲の一部も聞きました。原稿を見ることなく訴えた相良倫子さんの声が、叫びが素晴らしい。心からの平和の祈り、G20に集まった指導者、報道関係者の何人かが、この詩に注目してくれるとタイムリーですね。歌詞でない詩を作曲する苦労を重ねた先生、ありがとう。このブログをスマホのホーム画面に作成しました。エムズの片割れさん、ありがとう。
投稿: かうかう | 2019年6月28日 (金) 21:23