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2018年6月27日 (水)

「平成落首考 2018年前半」~まとめはひと言「やりきれない!」

先日の朝日新聞にこんな記事があった。
平成落首考 2018年前半 西木空人
 「お仕事は一に隠蔽(いんぺい)二に改竄(かいざん)」「『膿(うみ)を出す』などと患部が言う茶番」「延々と底が割れても猿芝居」
 半年間の「朝日川柳」をまとめて読み返しました。
 やりきれなさに、とても疲れました。
 日本はどうなるのだろうと、あらためて思いました。
 川柳という文芸の本領は、熟達のウィットと悠然たるユーモア、意表を突く風刺にあります。
 我が意を得たり、と思わず膝(ひざ)を打つ。読者のそんな反応を期待して、川柳子は日々句作にいそしみます。「膿」なんて禍々(まがまが)しい言葉は、できれば使いたくありません。
 ところがこの国では、総理大臣が国会で膿、膿と繰り返し叫ぶのです。「ウミ出さず海の外にはすぐに出る」
    × × ×
 半年ごとの「平成落首考」が始まったのは、1993(平成5)年のこと(最初は東京本社版のみ)。前任の選者・故大伴閑人が担当しました。以来、掲載は50回に及びますが、半年間の掲載句に「ウソ」とか「ウソつき」といった忌むべき言葉がこれほど頻出したことはありません。「ウソつきはウソつきの顔記者会見」「堂々とウソ言える人の多いこと」
 川柳における「嘘(うそ)」は、たとえば「送別会きれいな嘘で送り出す」のように、姿が整っているのがふつうです。しかし今回は「こんなにもウソつく政府見たことない」「この一年審議重ねたウソの上」などと、ど真ん中への直球。末世、という表現が、決して大げさでなく響きます。
    × × ×
 それでも国民は、今年の初め頃は、けなげにも政治にいくばくかの希望を寄せていたのです。「愚かにも熱い議論を期待する」。1月、今国会が召集されたときの句です。
 朝日新聞が〈森友文書 書き換えの疑い 財務省、問題発覚後か〉と報じたのは3月でした。4月、「『愛媛文書』で加計(かけ)も炎上」します。
 「現実にあったオーウェル『真理省』」。未来小説「一九八四年」に出てくる真理省は、独裁者に都合がいいように歴史を改竄する中央官庁です。
 佐川宣寿前国税庁長官、柳瀬唯夫元首相秘書官が相次いで喚問・招致されました。モリカケ問題ふたたび沸騰、です。
 彼らは「訴追の恐れがあるので」とか「記憶の限りでは」と真相を明かしませんでした。「官僚になって人間やめにする」
 そこへ福田淳一前財務次官がセクハラ疑惑で参入しました。
 「火の中に栗投げ入れる事務次官」「恐れ入る言葉遊びというセンス」。彼はセクハラ発言を、あろうことか「言葉遊び」と説明したのです。
 重ねてあろうことか、麻生太郎財務相も参戦した。連日の放言、妄言は記憶に新しいところです。「存在がセクハラになる財務相」。もしかすると「パワハラも差別もヘイトも罪じゃない」。
    × × ×
 「『骨太』という命名の場違いさ」。安倍政権は、言葉を弄(もてあそ)ぶことに長(た)けています。「歴史的使命」だの「働き方改革」だの、気恥ずかしいような語彙(ごい)を次々に繰り出します。
 けれども「言わば正にその中に於(お)いて何も無し」と、答弁の空疎なこと。「舌先の上に真摯(しんし)を載せている」のです。
 その態度物腰が政官に伝染している。「便利だが娑婆(しゃば)じゃ使えぬ『記憶なし』」「日本語でいえばいいのに賭博場」。カジノとごまかすのです。
    × × ×
 初めて作りました、という投句が春頃から目立って増えました。みんな、我慢も限界なのでしょう。「この国をどこへ曳(ひ)くのか『安倍・麻生』」も初掲載。
 日大アメフト部の暴力タックル問題が起こりました。仕掛けた選手が記者会見を開きました。「真実を正直に語る潔さ」が多くの人を感動させました。
 対照的に「真実を隠す卑怯(ひきょう)な大人ども」の姿も浮き彫りになりました。
 政治が乱れれば、言葉が乱れる。無体に扱われている日本語がかわいそうです。
 「風に舞う木の葉のような言の葉よ」「以前なら幾つ政権倒れしや」」(「朝日川柳」選者)」(
2018/06/24付「朝日新聞」p8より)

この半年の川柳の世界も、振り返ってみれば「やりきれなさ」だけが残ったようだ。
上のどの句を見ても、今の日本の政治が、どうしようもない底なし沼に陥っており、簡単には浮上できない悲惨な状況を表している。

上にある「川柳という文芸の本領は、熟達のウィットと悠然たるユーモア、意表を突く風刺にあります。我が意を得たり、と思わず膝(ひざ)を打つ。・・」
そう、それを読者は期待している。しかしどの句を見ても、爽やかさが無い。あえて挙げると、「真実を正直に語る潔さ」位だろうか。

新聞を見ると、安倍三選は固いという。こんな状況が続く中、ワケが分からない。小泉進次郎への世論の期待も大きいが、たぶん親父が怪我を避けるために、まだ早いとブレーキをかけるだろう。
国民にとって、救いが無い状況がまだまだ続く。政権にとって最も怖い「国民の怒り」が、時間という渦の中で、萎えてしまっている。まさに政権の思うつぼ。
子供(ガキ)の国、日本ではある。

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