Netでたまたま、STAXから7年ぶりの新フラッグシップヘッドホン「SR-009S」が発売されると知ったのが、5月2日。中野での「春のヘッドホン祭り2018」に出品され、試聴出来たと言うが、4月28~29日とのことで、既に終わってしまっていた。
それでSTAXに、どこかで試聴できないか聞いたところ、このゴールデンウィークは秋葉原の店で、5月12~13日はさいたま新都心の店(ここ)で聞けることが分かり、今日、秋葉原に行って聞いてきた。
じっくり聞きたいと思って、開店すぐの午前中に行ったが、これが正解。「SR-009S」の試聴を待っている人は他に居ず、じっくりと1時間以上も聞き比べてしまった。
もちろん聞き慣れているCDを持って行って。親切な店の人から「ご自由に」と言われて、取っ替え引っ替え存分に。
アンプは、棚に各モデルがズラリと並んでいるが、いつも自宅で聞いているSRM-007tAに、いつも聞いている「SR-009」と新モデル「SR-009S」をつないで聞き比べた。
まずは「SR-009」。まあそうだろうな。次にドキドキしながら「SR-009S」に替える。ウーン。009に戻す。ウーン・・・・
そもそも自分は、「SR-009S」は「SR-009」の振動板を交換しただけ、という認識。よって音の違いだけを聞いた。装着感や重量は、気にしなかった。
自分の好きな音は、刺激のない柔らかな音。キラキラした高域・・・・
そんな期待感で聞いてみた。最初が肝心・・・。
結論は、「SR-009S」から「SR-009」に戻すと、何か物足りない。「SR-009」は平板。「SR-009」が二次元とすると、「SR-009S」は三次元? そして「SR-009S」に替えると、「感動」という言葉が頭に浮かんだ。
振動板を薄くした、という先入観があるせいか、高域が伸びている、または解像度が高い気がした。でもやはり、「SR-009」に戻すと何か“物足りない”が総合の感想か・・・・
アンプを「SRM-T8000」に替えてもみたが、自分がT8000はあまり好きでないこともあり、差はよく分からなかった。

店の人に聞くと、6月20日発売の第一ロットは予約で埋まり、今は第二ロットがまもなく埋まる、とのこと。STAXの発表が、4月24日なので、まだ10日間なのに、予約がかなり入っているらしい。皆さん「ヘッドホン祭り」で聞いて判断したのだろうか?
ちょうど1年前の「SRM-T8000」の発売のときも、予約がたくさん入って、入手に時間がかかった人が多かった。しかし今は落ち着いている。
7年前の「SR-009」の時は、発売から1~2年経った頃に爆発し、半年待ちが普通だった。さて、今回の009Sはどうだろう?
いわゆる“音のプロ”の店の人に、009Sの印象を聞くと、「音像が広がった感じ」と表現していた。そして009Sの一般の人の評価は高く、7:3または6:4くらいで009よりも009Sに軍配を挙げるとのこと。
自分はもっぱら、「HAP-Z1ES」⇒「SRM-007tA」⇒「SR-009」で聞いているが、この組合せは、自分にとって色々試した果てに到達した不動のもの。よって変える気はなかったが、009Sは別格だな・・・・。
前にも書いたが(ここ)、最高級アンプの「SRM-T8000」の価格と音質改善のバランスについては、自分は異としているが、今回の10万円差の改善は、納得できる気がする。
この製品の最大の欠点は重量。STAX設計陣もそれは分かっているはず。それでも今回の改善は13グラム。つまりは、これが限界ギリギリなのだろう。
STAXのキャッチコピー「SR-009で主任開発者がやり残したこと。その全てを追求し、さらなる進化を遂げた新たなる009。」(ここ)が気に入った。
設計者は、何の製品もそうだが、色々な理由で“あきらめ”が付いて回る。 “こう”したいのだが、コストの点で、または大きさ、重量、形状・・・・のために、ガマンするもの。それを今回はガマンせず、思う存分に理想を追求したのだという。そんな話を聞いただけでワクワクする。
言い過ぎかも知れないが、自分にとってもはや神格化してしまった「SR-009」。その進化版が出る。手に入れるかって?? そんなこと、(家庭の事情があるので)ここには書けない。
STAXとは大学3年、1968年の「SR-3」からの付き合い(ここ)なので、今年はちょうど50周年だ。
長生きすれば、人生色々楽しいことはあるものである。
(2018/06/23追)
予定よりも早く届いた。SR-009Sである。
009を聞いて、009Sに替えてみる。確かに音が違う。最初に頭に浮かんだ言葉が「芳醇」。あれだけぞっこん惚れていた009が何と薄っぺらく聞こえることか・・・
秋葉原で聞いた時もそうだが、あまり長いこと聞き比べていると、その差が分からなくなる。最初に聞いた時の印象こそが、自分なりの評価。
そんな意味でも、009Sがより柔らかく立体的に聞こえるので、自分の好みにはフィット。
あくまで自己満足のオーディオの世界。今回も009の上を行く009Sの音、という思い込みで、自己満足の世界に浸ろう。
(2018/07/05追)~その後気が付いたこと。
・低音が009と違う。低音の解像度が増したということか・・・。
例えて言えば、009は調律不充分のピアノの低い音?もちろんちゃんと鳴ってはいるが、音程の変化があまり意識されない。それに比して、009Sは重低音(ベース)の音程の変化が良く分かる気がした。今までつい高域に気が行っていたが、低音も素晴らしい。
(2018/08/07追)~イヤーパッドの変化
自分もそうだが、従来からSR-009を使っていて、009Sに替えた方は、イヤーパッドの変化に気が付くだろう。009も009Sも、仕様はずっと同じとのこと。しかし、今年のSR-009Sの発売の頃から、イヤーパッドの製造メーカーが替わったらしい。その結果、009Sのイヤーパッドは、固いドーナツのようで、自分の場合、フィットしない。その違和感は、せっかく買った009Sは止めて、009に戻そうかと思ったほど。
旧タイプのイヤーパッドは、肌に当たる部分が平らであり、全体に柔らかいので、イヤーパッド全体が均等に頭に接触し、実にしっくりくる。そしてイヤーパッド全体が頭に密着するので、中の空気が密閉されていることが良く分かった。
それに比べて、新タイプはまさに固いドーナツ型のため(頭に接触する部分が旧タイプのようなベルト状の平面では無く、幅の狭いリング状であるため)、頭に接触する部分が少なく、頭に強く当たる(触る)部分と弱く当たる部分に分かれてしまい、強く当たった部分(特にアゴの部分)が痛くなることがある。(あくまでも自分ひとりの感想だが)
たぶん2017年の夏頃(たぶん009の製造番号で SZ-4300番台の中頃)の製造から、009も009Sも新タイプに変わったらしい。この違いは、二つを比較しないと分からないので、初めて009を買った人は分からないかも・・・
しかし、旧タイプのイヤーパッドのフィット感は、今のものと全く違うので、009Sや009の現行品は、自分にとっては残念と言うしか無い。
新タイプと旧タイプを数値で比較してみた。精密計量器(TANITA KD-320)を利用して、パッドが半分くらいに縮むほどに押してみると、旧タイプは800g程度に対し、新タイプは1400gほど。明らかに内部のスポンジの固さが違う。一般的なスポンジの標準硬度は25ということだが、手持ちの25のスポンジよりも新タイプは固いように感じる。
次にパッドの厚さだが、旧タイプは薄い部分(前部)17mm~厚い部分(後部)27mm程度だが、新タイプは22mm~30mmほど。測った旧タイプは5年ほど使用した物なので、使用に伴う縮みがあるかも知れないが、厚さも若干違いがあるのかも知れない。黒い本革の柔らかさはそれほど違わないので、両者のフィット感の差は、内部クッションに使用されているスポンジの固さの違いと思われる。(ちなみにイヤーパッドのスポンジの直径は約105mm、厚さ17~27mm:基台5mm含む)
どんな製品でも、使う部品の寿命は、それぞれ必ず発生する。それらを乗り越えて、同じ物(名機)を作り続ける難しさを、このイヤーパッドに見た思いがした。
(SR-009の旧タイプ)(SR-009Sの新タイプ)~Netより

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