貴乃花落選~大相撲の理事選「記名投票」に逆戻り
昨日(2018/02/02)は、大相撲の理事選で、貴乃花が何票取るかで大騒ぎ。結果は、2票で惨敗。しかし、投票の方法が、今までの無記名投票から、実質の記名投票に変わったため、本音で投票できず、一門の計算通りになったとの報道がある。
自分は、日馬富士の暴力事件から続くこの騒動を、大組織対反骨個人の戦いとして見てきた。どんな組織でも起こり得る構図だから。
一昨日(2018/02/01)のTV朝日の「モーニングショー」でこんな話があった。理事選の、かつての記名投票から、今の無記名投票に変わった経緯である。
番組によると、2010年以前は理事選の前に一門の話し合いで理事10人を決定し無投票。そして過去行われた投票では、立会人の前で候補者を書く方法だった。それが2010年に文科省が公正な選挙の実施を指導した結果、候補者の名前に丸を付ける方法に変わった。「以前は筆跡などから誰が誰に入れたか分かっていたが、今は本音での投票は可能になった。」
それで起こったのが、“貴の乱”。 2010年2月1日に行われた理事選で、立浪一門から造反が出て、貴乃花親方に投票した結果、貴乃花親方が当選し、立浪一門の大島親方が落選。直ぐに造反者捜しのため、立浪一門で緊急会合。安治川親方が造反を告白し、選挙翌日に退職声明。「協会に変化があればとい思い貴乃花親方に入れた。この人ならなんとかしてくれる」。会見場所は貴乃花グループの大嶽部屋。その翌日退職表明を撤回し、6ヶ月後に貴乃花部屋に移籍したという。
当時の「スポーツニッポン」の記事が今でも読める。
「貴当選と引き換えに造反の安治川親方廃
貴乃花親方(元横綱)が当選した日本相撲協会理事選挙の結果が、親方の退職という前代未聞の事態に発展した。2日深夜、安治川親方(36=元前頭光法)が東京・江東区の大嶽部屋で会見し、突然の退職を表明した。立浪一門の宮城野部屋の部屋付き親方だったが、前日1日の理事選では一門外の貴乃花親方に投票した。その結果、同一門が擁立した前理事の大島親方(元大関旭国)が落選。同親方は同一門の「反省会」で造反を告白し、責任を感じて角界を去る決意をした。造反者追及の動きは厳しく、今後も退職者や一門離脱表明者が出てくる可能性もある。
何か吹っ切れたような表情だった。日付が変わりかけた深夜、安治川親方が突然の退職を表明した。「選挙で、貴乃花親方を支持して1票入れました。大変迷惑をかけて、相撲協会を退こうと思いました」。立浪一門の宮城野部屋付き親方が、貴乃花グループの大嶽部屋で行った会見。横綱白鵬の兄弟子でもある同親方は「自分のけじめで退こうと思った」と言った。89年春場所初土俵。22年目の角界生活に、別れを告げた。
立浪一門は1日の理事選に、現職だった大島親方(元大関旭国)友綱親方(元関脇魁輝)を擁立。一門の総票数は20で、当選ラインの10票を2人に振り分けていた。だが、同親方は同世代の貴乃花親方に共鳴。「勇気、心意気という言葉を聞いて、この人ならなんとかしてくれると思った。迷う部分もあったが、最後は頭より心が動いた」。一門の縛りと、相撲界改革への熱意に迷いながら、貴乃花親方に1票を投じた。
その結果、大島理事が落選した。予想外の出来事に、同一門は選挙直後と、この日午前に緊急会合を開いた。目的は貴乃花に流れた「2票」を投じた“造反者”を捜すこと。約1時間半の会議で、同親方は自ら名乗り出た。「自分から名乗り出た。かなりの波紋を呼んだ。自分の気持ちに正直に、協会に変化があればと思って、入れた。個人の気持ちとしてはいいかもしれないが、一門という家族を乱すのはどうかと思った」。
同親方は07年九州場所で引退後、年寄安治川を襲名した。「安治川」は同じ立浪一門になる伊勢ケ浜部屋の幕内安美錦所有の株。それだけに「借株という立場。借りている人に迷惑をかけた」という。借株の場合、選挙で誰に投票するかは、所有者に委ねるのが原則。安美錦の師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は、大島親方の弟子だ。自身の意思による投票が、一門の理事を2から「1」へと減少させた。造反告白に、大島親方は「気にしなくていいよ」と言ったという。
一門の存在意義が問われた今回の選挙には、貴乃花グループの「破門」もあった。貴乃花親方の波乱に満ちた「改革」への道は、1人の親方の人生まで変えてしまった。安治川親方によると、電話で退職の報告を受けた貴乃花親方は「びっくりしてました」という。造反者の追求は続いているだけに、今後も同じように退職や一門離脱を表明する親方が出てくるかもしれない。
血を流さないと、旧態依然の体質を変えることができないのか。相撲界の将来を思って投じた1票。安治川親方は「いろんなことに変化を与えてくれると思う。徐々にという形で。支持して良かった、最後まで」と、すがすがしい表情で言い切った。1人の男が人生を懸けてまで託した思い。絶対に無駄にすることは許されない。【近間康隆】」(2010/02/03付「スポーツニッポン」ここより)
今回も、貴乃花は無記名投票ゆえの積み増しを期待したのだろう。しかし、現実は違った。上の例のように、一門の意志に逆らっては相撲界では生きては行けないという現実。そして、相撲協会が従来の無記名投票から、実質記名投票に変更したのだから、この時点で貴乃花の惨敗は決まった。
昨夜(2018/02/02)のTV朝日の「報道ステーション」ではこう報道していた。
「先日、投票用紙に記載された候補者の名前に丸を付けるとお伝えしましたが、そうではなく投票用紙に名前を書き込む形でした。」
結果、「筆跡で誰が書いたかバレちゃうよね。日本出身でない親方もいるし・・・」
投票方法を変更してまで貴乃花親方排除に向かった相撲協会。まさになりふり構わずの突進。それだけ貴乃花が怖かった、とも見える。
そして、これも彼の首相ではないが、「時間が経てば沈静化するさ・・・」という読み。
それにしても、マスコミがこの投票方法の変更のことを報道しないのは、なぜか・・・。TV朝日の他には、NHKが報道したらしいが、他の局は分からない。
もし、従来通りの無記名投票だったら、貴乃花にもう数票入って、もう少しインパクトがあったかも知れない。貴乃花の他の1票は、親戚の親方が入れたのだろう。つまりは、白日のもとにさらされる記名投票に変更された結果、キケンを犯す人は居なかった。これは当然の結果だ。
結局、政界と同じく、数が勝ち。少数意見は、踏み潰される、ということ。
「沈黙は金」という言葉がある。今回の貴乃花の沈黙は、果たして金だったのかどうか・・・
心情的には、多人数の隠蔽体質の協会に一矢報わさせてあげたい気もあったが、記者の取材を一切無視するあの姿勢は、あまり感じの良いものではない。投票前日になってHPにコメントを挙げたが、あまりに遅い。
これで、一連の話題は急速にしぼむだろう。後に残ったのは、後味の悪い嫌悪感だけ。
栃ノ心のようなフレッシュな力士が、今後も活躍する場所を期待しよう。安倍首相ではないが、白鵬ももう飽きた。
(関連記事)
貴乃花親方のテレビでの反論
| 0
コメント