憲法改正の国民投票“過半数が支持”
政府・自民党が憲法改定案を検討しているが、今日(2018/02/26)のTV朝日のニュースを見ていて、タカをくくれない、つまり国民投票の実施も“有り得る”と感じた。
「憲法改正の国民投票“過半数が支持” ANN世論調査
憲法改正について、国会で発議して国民投票を行うことに賛成と答えた人が56%だったことがANNの世論調査で分かりました。 調査は24日と25日に行いました。憲法改正について、改正案を国会で発議して国民投票を行うことに賛成と答えた人が56%で、反対と答えた人が31%でした。9条については「変えずにその理念を守る」と答えた人が22%、9条は「変えずに解釈で可能な範囲の対応をすることで良い」と答え
た人が21%でした。また、安倍総理大臣が目指している「9条は維持したうえで、自衛隊を作ることを定めた方が良い」と答えた人が31%、自民党の石破元幹事長が考える「戦力を持たないと定めた第2項を削り、自衛隊を軍隊として定めた方が良い」と答えた人は14%でした。また、裁量労働制で働く職種を広げる法案について、今の国会で成立させることに賛成と答えた人は21%、反対と答えた人は59%でした。」(TV朝日のここ・ここより)
先月の日経が、各紙の世論調査の違いについて書いていた。
「憲法に自衛隊明記、9条2項維持が47% 日経世論調査
日本経済新聞社とテレビ東京による26~28日の世論調査で、憲法への自衛隊明記について3つの選択肢で聞くと「(戦力不保持を定めた)9条2項を維持し、明記すべきだ」が47%で最多だった。「9条2項を削除し、明記すべきだ」は15%、「そもそも憲法に明記する必要はない」は24%だった。報道各社の自衛隊明記をめぐる世論調査の結果に違いが出ている。
9条2項を維持し、自衛隊を明記する憲法改正案は、安倍晋三首相が昨年5月に提案したもの。自民党内には戦力不保持を定める2項を削除し、自衛隊を戦力として明確に規定すべきだとの意見がある。立憲民主党や希望の党は首相案に反対している。
日経調査では、自民党支持層では「2項維持」が55%と過半に達し「2項削除」は24%、「明記の必要ない」は11%だった。無党派層は「2項維持」が44%、「2項削除」が8%、「明記の必要ない」が27%。立憲民主党支持層は「明記の必要ない」が5割を超えた。
憲法改正の国会発議はいつが望ましいかも聞いた。「いまの通常国会」が20%、「今年秋召集の臨時国会」が14%で、あわせて34%が年内の発議に賛意を示した。これに対し「2019年中」が14%、「20年以降」が13%、「そもそも発議する必要はない」が19%で、あわせて46%が年内の発議に否定的だった。
自衛隊明記に関する世論について、自民党憲法改正推進本部の保岡興治特別顧問は日経の取材に「『戦力不保持』を削ることに抵抗感が強い人が多いのだろう。2項を維持して自衛隊を明記する案が現実的な落とし所だ」と話した。
ただ、報道各社の調査をみると質問文や選択肢の微妙な違いで異なる結果が出ている。日経で「明記する必要ない」とした選択肢について、NHKは6~8日の調査で「憲法9条を変える必要はない」とした。すると38%がこの選択肢を選び、2項維持と2項削除をおさえて最多だった。
「2項を削除し自衛隊を明記すべきだ」の選択肢についても差が出た。読売新聞の12~14日の調査では「2項は削除し自衛隊の目的や性格を明確にする」としたところ、これが34%で最多だった。毎日新聞は20~21日の調査で「2項を削除して自衛隊を戦力と位置付ける」としたところ、12%にとどまった。
埼玉大の松本正生教授(政治意識論)は聞き方の違いに加え「憲法改正の質問の直前にどんな内容を聞いたか、という点も結果に影響する」と話す。例えば安倍政権の経済政策に関する質問を聞いた後に憲法について聞くと、経済政策に比べれば憲法改正の優先順位が低いと思われ、改憲に慎重な意見が増える可能性があるという。
調査結果の違いに関しては「まだ憲法改正について明確な主張を持っていない国民が多いのだろう」(公明党幹部)との見方もある。松本教授は「各社の結果の違いは、有権者のなかにまだ憲法改正のリアリティーがないことを示している」と分析する。」(2018/01/29付「日経新聞」より)
ここでは「有権者のなかにまだ憲法改正のリアリティーがない」と指摘しているが、どっこい現実は、どんどん動いている。
いつもの数の力で国民投票に突入した場合、どうなるのだろう。これも先月の朝日だが、経験国からの警鐘について書いていた。復習である。
「(憲法を考える)国民投票、経験国からの警鐘 首相退陣に追い込まれた英伊を視察、衆院議員団報告書
■憲法を考える 視点・論点・注目点
今年の国内政治の焦点は、安倍晋三首相が執念を燃やす憲法改正に向け、国会が改正案を発議できるかどうかです。発議されれば、憲政史上初めてとなる国民投票で、その賛否が直接私たちに問われることになります。衆院憲法審査会(森英介会長)の議員団は昨年、ともに2016年に国民投票を経験した英国、イタリアを視察しました。国民投票を主導した首相がいずれも意図せぬ結果で退陣に追い込まれた両国の経験から、どんな教訓をくみ取れるのでしょうか。審査会がまとめた報告書をもとに考えてみました。(編集委員・国分高史)
■感情に左右される危険性ある 英国―僅差でEU離脱
欧州連合(EU)離脱か、残留か――。英国が国民投票を実施したのは、16年6月。両派の激しい運動の末、わずかの差で離脱派が上回った。
国民投票の実施を決めたのは当時首相で保守党党首だったデービッド・キャメロン氏。残留派だったキャメロン氏は、国論を二分する論争に敗れて退陣した。
キャメロン氏が得た教訓は何だったのか。
キャメロン氏はまず「最も注意を払うべきは、国民投票が政府に対する信任投票になってしまったり、他の政策的な問題に対する投票になってしまったりするのではなく、『投票用紙に書かれた質問文』に対する投票となるようにする点だ」と議員団に語った。
さらに日本で憲法9条が焦点になっていることを念頭に「英国のような島国では、EUから離脱するか残留するかは、感情的な問題になってしまいがちだ。日本にもよく似た問題があるように思う」と指摘。「憲法改正では、『理論的な側面』と『感情的な側面』の両面に訴えることが大事だ」と助言した。
自民党の自衛隊明記案を疑問視したのが労働党のヒラリー・ベン下院EU離脱委員長だ。自民議員の説明に対して、「いままで自衛隊が活動できたのであれば、自衛隊が憲法に明記されていないことは、それほど大きな問題ではないように私には見受けられる」と話した。
一方で、政府にことさら反対するために国民投票が利用される危険性も指摘。「何をテーマに国民投票を行うかについて、よく注意しなければならない。国民投票を行って負けた場合、もう議論の余地がなくなってしまうから」。やはり労働党で英日議連会長のロジャー・ゴッシフ下院議員も「国民投票の危険な点は、国民はそれがどんなテーマの投票であれ、自らの望むことについて投票する点だ」と同様の見方を示した。
国民投票の正統性を担保する方策について語ったのは同議連副会長のポール・ファレリー下院議員だ。「例えば賛成票が全有権者数の50%以上でなければならない、といった最低ラインを設けなければ、国民投票の結果に正統性がないのではないか。次に、最低投票率を66%とか70%とかに設定するべきではないか」と述べた。
英国では国民投票の後、EUへの負担金がなくなれば多額の資金を福祉に回せるといった離脱派の主張に誇張があったことなどが問題視された。選挙委員会が投票後に実施した世論調査では、52%が「投票運動が公平に行われたとは思わない」と答えた。
ケンブリッジ大学のデービッド・コープ教授は、過熱した運動が展開された投票をこう総括した。
「いま英国の政治家、産業界、学会の有識者に聞けば、ほぼ100%の人たちが『もう国民投票などすべきではない』という強い意見を持っているだろう」
■全国民による改革でなくては イタリア―上院権限めぐる改憲、大差で否決
上下両院がまったく同じ権限を持つため、両院で多数派が異なる「ねじれ」がたびたび生まれ、政治の停滞を招いてきたイタリア。16年12月の国民投票で、上院の定数や権限を大幅に削る憲法改正への賛否を問うたが、大差で否決された。
イタリアの国民投票から得られる教訓は明確だ。
「自己批判的にかえりみると、国民投票は多数派が自己の権力を強化する手段として使ってはいけないということを指摘できる」。民主党のアンナ・フィノッキアーロ議会関係担当相は振り返った。
イタリア政府は国民投票に先立つ13年、憲法改正に対する国民からの意見聴取をインターネットで実施。約20万人の回答から、上下両院の権限が対等な「完全二院制」を支持しているのは約9%にすぎないことがわかった。
レンツィ首相(当時、民主党)は14年に改憲案を国会に提出。下院だけでなく、権限が縮小されることになる上院の賛同も得た。ところが、自らの足場を固めようと、改憲の成否に進退をかけるとレンツィ氏が表明すると、その後の政治情勢の変化もあり、国民投票は政権の信任投票の様相を帯びた。レンツィ氏は退陣を余儀なくされた。
ステファニア・ジャンニーニ前教育・大学・研究相は「残念であったのは、国民投票の段階でレンツィ政権に対する賛否を表すという政治的な内容と、国家の機能の簡略化、効率化及び透明性を図るという憲法改正の純粋な内容とを、明確に分離することに失敗したことだ」と総括した。
一方、野党側の見方はこれとは少し異なる。
憲法改正に反対した新興勢力「五つ星運動」のダニーロ・トニネッリ下院憲法問題委員会副委員長は、改正の範囲が幅広く、国民投票が複雑になった点を問題視。日本へのアドバイスとしてこう語った。
「憲法は国民すべての財産であり、憲法改正は『だれかの改正』であってはならない。国会の勢力を含めて、国民すべてが共有する改革でなくてはいけない」
国民投票には、たいへんな時間とコスト、エネルギーが要る。野党フォルツァ・イタリアのレナート・ブルネッタ下院議員はこう言って苦笑いを浮かべた。
「国民投票によって賛成派も反対派も本当に疲れてしまっている。国会で採決されるまでに2年間の議論が続き、さらにその後の国民投票に向けての活動があり、本当に疲れた。その時々の政治的な多数だけに頼るような憲法改正は不可能だ」
イタリアでも英国と同様、社会に疲労感が広がっていた。
■大多数の納得が前提。政権信任投票ではないですぞ――ケンポウさんに聞く
英国とイタリアの国民投票の経験を私たちはどうとらえるべきなのでしょうか。日本国憲法を擬人化した当欄のキャラクター「ケンポウさん」と考えました。
◇
――両国の経験から、どんな教訓が得られるのでしょうか?
まずは憲法改正についての与野党を超えた幅広い合意を得ること。それと時の政権に対する信任投票にならないように注意することですな。
――でも自民、公明の与党と改憲に前向きな姿勢の野党を合わせれば、改正の国会発議に必要な3分の2以上の勢力はすでにありますよね?
国会の議席数と憲法についての世論の分布は必ずしも一致していない。幅広い合意というのは、大多数の国民が「なるほどこれなら改正すべきだ」と納得できるような内容でなければ、やるべきではないということだ。
仮に国民投票が51対49の結果になれば、49の側には大きな不満が残る。国の最高法規の改正でそんなことになっては禍根を残す。実際、僅差(きんさ)でEU離脱を決めた英国では残留派の不満が渦巻いた。
――「政権の信任投票にならないように」とは?
イタリアでは今回の改憲案は上下両院でそれぞれ2度可決された。ただ、3分の2以上の賛成を得られなかったため、レンツィ前首相はあえて投票を実施することにして「その成否に進退をかける」と表明した。実はレンツィさんは与党の党首だったけれど、選挙で選ばれた国会議員ではなかったんだ。そこで国民投票で承認を得られれば、自身の政治基盤を強化できると思ったようだ。その思惑が裏目に出た。
――自業自得というわけですか。
ただ、それによってイタリア政治の長年の懸案を解決するための二院制改革がつぶれてしまった。改革そのものにはイタリア国民の9割が支持していただけに、もったいなかったという見方もできますなあ。
■視察報告書、サイトで公開
衆院憲法審査会の議員団は昨年7月11日から同月20日まで、英国とイタリア、スウェーデンを訪問。スウェーデンでは教育無償化などに関して調査した。森会長以外の参加議員(前議員を含む)は中谷元、上川陽子(以上自民)、武正公一(民進)、北側一雄(公明)、大平喜信(共産)、足立康史(維新)の各氏。議員団が昨年11月にまとめた報告書は約400ページ。衆議院ウェブサイトで公開されている。」(2018/01/30付「朝日新聞」p5より)
自衛隊の存続について、上の記事で「国民投票を行って負けた場合、もう議論の余地がなくなってしまうから」と指摘されているように、存在そのものが否定されてしまう、という懸念に対し、安倍首相は「自衛隊は何も変わらない」と答弁。勝っても負けても、自分の身の安全を図っている。
それを国民が見透かしているかと思うと、先の世論調査の結果を見ると、そうでもないらしい。ここが怖ろしい。先の衆院選のように、結果は自分の“期待”とは違う結果に・・・
今朝の朝日新聞の一面、「中国国家主席 任期撤廃へ」という見出し。習近平国家主席が憲法を改正して「2期10年まで」とする憲法条文を削除し、毛沢東時代の反省から生まれたルールも、「1強」で踏みつぶし、自らを“終身国家主席”実現に向かって突き進んでいる。
日本の現首相も、さっさと総裁3選へルールを変えた。ロシアも同じ。長期独裁者の誕生を許していない大国は、アメリカくらい??
日本だけでない。世界中が悪い方向へ激変しつつある。これはどうしてだろう?先の大戦の記憶が薄れてきたことと関係があるのでは?
そして、世界が“怒り”から“あきらめ”の境地に移っているようにも見える。確かに国民の“あきらめ”は権力者にとってはタナボタ。あきらめの先には、怖ろしい世界が待っている・・・。
国民投票についても、勉強しておこう。(先日の記事とは真逆だな~~)
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コメント
かって岸信介など一部の政治家がGHQの創った憲法を改憲するべきとした時代がありました。同じ無条件降伏をしたドイツは自分達の手で憲法を定めたとの事、当時、私はなるほどと思いました。また小泉純一郎のあと安倍晋三が政権を引き継いだ時,憲法改憲を念願としている事にも、さほど考えもしませんでした。
しかしここ10年足らずで世界情勢があれよあれよと変動していき、自衛隊の在り方も変わっていきました。2016年に安全保障関連法が制定され、9条を改憲するべきか否かを身近な問題として考えるようになりました。
安保法によって自衛隊の機動範囲が広がりを見せる中、9条2項で歯止めがかかっていると思っています。確かに北朝鮮の核ミサイル、中国の海路拡大への軍事力は大きな問題であり、それは自衛隊の機動力への問題でもあるでしょう。
安倍政権がそれを大義名分にして国民投票を振りかざしていることが恐ろしい。めぐるましく変動している国際情勢を盾に国民投票を安易に行なうことは断固としていけないとおもっています。
投稿: patakara | 2018年2月28日 (水) 18:53
私は予てより 阿部はプーチンに対し憧れにも似た親近感を抱いていてそれはかのパク・クネ,周 近平、トランプに対しても同じだと推測しています。
また立憲民主党が坂田試案に飛びついたり内側から山尾試案のような形で呼応することに危機感を覚えます。
フアシズムは民主主義の仮面をかぶってやってくるーーー日本でもアメリカでも危険性は同じだと覚悟しています。
自分で考え自分で判断しよう。茨城のり子さんの「寄りかからず」という言葉が身に沁みます。
投稿: todo | 2018年2月28日 (水) 19:50
最大多数の最大幸福という言葉は中学の社会科の教科書に載っていました。それは多数の国民が正しい情報を知らされているかどうかにかかっています。金儲けをしたい軍需産業業者とそこから賄賂を貰う政治家がオオカミ少年のようなデマを飛ばして国民を騙して脅かせば、おそらく安倍政権がまた政権を取ります。最大多数は正直者です。すぐ騙されます。イラク戦争の時のアメリカを思えば明白です。正しい情報を抑えようとする政治を正しく導くのは誰か。官僚が本当の仕事を正しく国民に知らせる法律があればいいのにと思います。歯がゆい現在の日本の官僚と野党です。正義をかざして突き進む人がいないのでしょうか。
投稿: 白萩 | 2018年3月 1日 (木) 00:01