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2018年2月12日 (月)

基幹送電線の利用率は2割

よくニュースで、太陽光発電に参入しようとしたら、送電線増設の莫大な費用を要求され、断念した、という話を聞く。その現実がこれだ。

基幹送電線、利用率2割 京都大特任教授、大手10社分析
 風力や太陽光発電などの導入のカギを握る基幹送電線の利用率が、大手電力10社の平均で19.4%にとどまると、京都大学再生可能エネルギー経済学講座の安田陽・特任教授が分析した。「空き容量ゼロ」として新たな再生エネ設備の接続を大手電力が認めない送電線が続出しているが、運用によっては導入の余地が大きいことが浮かび上がった。
 基幹送電線の利用状況の全国調査は初めて。29日に東京都内であるシンポジウムで発表される。
180212soudenn  50万ボルトや27万5千ボルトなど各社の高電圧の基幹送電線計399路線について、電力広域的運営推進機関(広域機関)が公表しているデータ(2016年9月~17年8月)を集計した。1年間に送電線に流せる電気の最大量に対し、実際に流れた量を「利用率」とした。
 分析の結果、基幹送電線の平均利用率は東京電力が27.0%で最も高く、最低は東北電力の12.0%。一時的に利用率が100%を超える「送電混雑」が1回でもあったのは60路線で東電が22路線を占めた。
 一方、「空き容量ゼロ」とされた基幹送電線は全国に139路線あったが、実際の平均利用率は23.0%で、全体平均と同程度。大手電力がいう「空き容量ゼロ」は、運転停止中の原発や老朽火力も含め、既存の発電設備のフル稼働を前提としており、実際に発電して流れた量ははるかに少なく、大きな隔たりが出たとみられる。
 電気事業連合会の勝野哲会長は昨年11月の会見で、送電線に余裕があるのに再生エネが接続できない状況を指摘され、「原子力はベースロード電源として優先して活用する」と述べた。
 ある大手電力は「空き容量は、送電線に流れる電気の現在の実測値だけで評価できるものではない」と説明する。だが、欧米では、実際の電気量を基にしたルールで送電線を運用して、再生エネの大量導入が進んでおり、経済産業省も検討を始めた。
 「空き容量ゼロ」路線の割合は、東北電、中部電力、北海道電力、東電で高く、西日本の電力会社は少ない。東北電、北海道電などでは、空き容量ゼロの利用率が、管内全体の基幹送電線より低かった。
 安田さんは「本来は利用率が高く余裕がないはずの『空き容量ゼロ』送電線が相対的に空いているのは不可解だ。『なぜ空き容量をゼロというのか』『なぜそれを理由に再生エネの接続が制限されるのか』について、合理的で透明性の高い説明が電力会社には求められる」と指摘する。(編集委員・石井徹、小坪遊)

送電線、巨額の「請求書」 大手電力、接続希望業者に
 再生可能エネルギーの導入に重要な基幹送電線が有効に利用されていない実態が明らかになった。一方で、接続を希望する事業者に、新たな送電線建設に向けた巨額の「請求書」が送りつけられている。再生エネの受け入れは大手電力で取り組みに差が出ている。
 再生エネ事業者の「レノバ」(東京都)は秋田県沖で洋上風力発電を計画している。最大出力は原発1基並みの100万キロワット。2021年度に着工、26年度に運転開始を目指す。
 ところが、東北電力は、基幹送電線が「空き容量ゼロ」だとして、総額1千億円以上とみられる送電線増強費用の負担を前提に、新規接続希望を募集した。280万キロワット(当初)の枠に1500万キロワット以上が殺到、9割以上が再生エネで8割が風力だった。
 入札は来月の予定。既存の発電所も新しい送電線を利用するが、費用のほとんどを新規事業者が出す。レノバの木南陽介社長は「送電線への接続可能量などについて情報公開を徹底してほしい」と言う。
 京都大の安田陽・特任教授の分析では、東北電は基幹送電線の約3分の2を「空き容量ゼロ」とし全国で最も割合が高いが、管内の平均利用率は最も低い。「空き容量ゼロ」路線で利用率が一時的に100%を超えた「送電混雑」は1路線だけだった。
 一方、既存送電線の有効利用を探る動きもある。
 九州電力は14年度から6万ボルトの送電線に流せる電気を従来の2倍に増やした。故障の際の出力抑制が条件だが、再生エネの接続は増え続け、昨年4月には、一時的に電力需要の76%を太陽光が占めた。送電線の運用を工夫し、離島以外では再生エネの出力抑制も出ていない。
 安田さんは「九州では原発も再稼働し、太陽光が大量導入されつつあるのに、空き容量ゼロの送電線が少なく、興味深い。電力会社で運用方針に違いが出ている可能性があり、適切に運用すればさらなる再生エネの導入拡大が可能であると日本でも実証されつつある」と話している。(編集委員・石井徹、小坪遊)」(
2018/01/28付「朝日新聞」p3,4より)

この記事を読んでいると、まさに電力会社のエゴが丸見え。そして東北電力と九州電力の違いのように、電力会社のスタンスも色々あるようだ。
それにしても、この電力会社の“官僚が知恵を絞ったような”考え方の背景は何だろう? 採算性の良い原発を再稼働させるための言い訳? 送電線を高く売り付ける儲け主義?・・・
そもそもこれらの送電線も、我々の電力料金で作られたもの。電力会社の努力で作られた物ではない。つまりは国民の財産。福島の事故の費用を電力料金に上乗せして国民が負担しているが、負担だけ国民に回して、いったん完成すれば、その設備は電力会社の私有物のような身勝手な扱いに違和感を覚える。

キーは「発送電分離」だと思うが、日本の発送電分離はどうなっているのか?電気事業連合会のHPによると、
「発送電分離
2015(平成27)年6月に、電力システム改革の第3弾として、電気事業法が改正され、2020(平成32)年4月より、送配電部門の中立性を一層確保する観点から、法的分離による発送電分離が行われます
」(ここより)
だという。
そして資源エネルギー庁のHP(ここ)には、詳しい解説がある。
発電、小売改革の次は送配電部門の改革
1995年以降、数回にわたる制度改革を行い、発電部門は原則参入自由となり、競争原理が導入されました。小売部門についても段階的な自由化を実施し、2016年4月、全面自由化が実現しました。
しかし、発電部門と小売部門が自由化されても、電気を各会社や家庭に届ける送配電部門が、これまでの電気事業者と新しく参入した事業者を平等に扱わないと、健全な競争が行われず、改革は進みません。発電した電気を各会社や家庭に販売するためには、自分で発電した電気を消費するのでない限りは、電柱や電線などの送配電網を利用する必要があるためです。送配電部門の改革は、発電や小売の改革を進めるための鍵だといえます。」(
ここより)
これを読むと、2020年からは、上の例のような接続希望業者へのイジワルは減るかも・・・

とにかく、日本の制度は大組織の思うがまま。既存の利権の温存だけが優先。
国会で、野党がこんな誰もが疑問に思うような事柄を問題にすれば良いのに、と思う。
官僚もそうだが、大組織は頭の良い人がたくさん居る。その人たちが、明晰な頭脳で自己保身の屁理屈を考える。
それらを打ち破るのは、この分析のような証拠を突きつけるしかない。
この分析が、現場にどの位のインパクトを与えるのか?または無視されていくのか?
見守っていこう。

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