「記憶の澱」~終戦時、満州・黒川開拓団のソ連兵の性接待を命じられたある女性の詩
今朝(2018/01/30)の朝日新聞の「はがき通信」で、こんな投書を見付けた。
「もし20年早く
20日の「記憶の澱(おり)」(再放送、日テレ系)が、第2次大戦下の日本の軍人による加害証言を多く集めたことに驚いた。中国戦線で、相手を人間と思わない教育や戦場心理から、中国の民間人を殺すことを何とも感じなくなる。また、慰安所より村人を強姦(ごうかん)した方が安上がりという風潮もあったという。私も20年早く生まれて同じ環境にいたら同じ事をした可能性があると考えると恐ろしい。(日本語教師・73歳)」
タイムシフトを見たら、20日のこの番組が残っていたので見た。終戦時のソ連軍から受けた日本人女性の強姦とともに、日本軍の中国人女性への強姦についても、生々しく証言が記録されていた。
今回、第13回日本放送文化大賞 テレビグランプリを受けた山口放送制作の「記憶の澱(おり)」(ここ)。その解説にはこうある。
「記憶の澱(おり) 先の大戦において、果たして自分は、加害者なのか-、被害者なのか-。
中国戦線での加害体験と、沖縄戦での死闘の記憶。その狭間で、悩み、苦しみ続ける、元日本兵がいます。
満洲へ渡った、ある開拓団の人々も、被害と加害、両方の記憶を胸の奥にしまっていました。 満洲や北朝鮮から引揚げた人々の中には、「特殊婦人」と呼ばれた女性たちがいます。現地で、ソ連兵などから性暴力を受けた人々です。
性暴力の場面を目撃した人々の中にも、被害と加害、両方の意識を持つ人々がいます。
戦争がもたらすものとは−。
戦争体験者の心の奥底に「澱」のようにこびりつく記憶を見つめました。」(ここより)
この番組の動画は、Netに色々とアップされているようだが、中でも黒川開拓団の、生きて帰る為にソ連軍に性接待の女性を差し出した証言が痛々しかった。この事件については、前に「NHKスペシャル「 樺太地上戦 終戦後7日間の悲劇 」~今年のNHKは秀作」(ここ)という記事で、ETV特集「告白~満蒙開拓団の女たち~」(2017/08/05放送)という番組に触れた。
今日は、当時23歳でその性接待を命じられた和子さん(仮名)の詩を紹介する。TV画面からのメモなので、正確ではないが、心の叫びが聞こえる。
(ナレーター)<姉の和子さんは去年亡くなりました。妹の綾子さんが性接待のことを打ち明けてくれたのは、この悲劇を伝え残してほしいと姉に頼まれたからです。姉は、日本へ引き上げた後、理解ある夫に巡り会い、静かに暮らしました。しかし当時を知る人から、心ない言葉を掛けられたこともあったといいます。>
<姉の和子さんは詩を残しました。支配する側から、される側に立たされた開拓団。さらに、その開拓団の中でも支配は続き、最後の最後まで犠牲となった女性達の心の叫びです。>
「乙女の曲」
黒川開拓団 故・和子さん
(仮名・1922年生。当時23歳)十六歳の春の日に
乙女の夢を乗せた汽車
胸 弾ませて行く大地
陶頼昭に花と咲く大河のごとき松花江(しょうかこう)
岸辺にそびえる青柳
夕日に染まる地平線
輝く空に星ひとつ広き広野の大陸は
日本の国土と信じてた
食糧増産 国のため
朝日と共に 働きぬ何も知らない開拓の
村に聞こえる敗戦は
うそだと思う その日から
不穏な空気強くなる思えば他国の その土地に
侵略したる 開拓団
王道国土の夢を見て
過ごした思い 恥ずかしい栄華の道は 短くて
奈落の底に 引きこまれ
神の怒りか 天の罰
受けて悲しき 日はくれる隣の村のウジヤジヤンは
全員 自決で散り果てぬ
あしたは 我が身の消ゆる日か
両手 合わせて死ぬを待つ乙女の命と引き換えに
村の安全守るため
若き娘の人柱
捧げて生きる 開拓団ああ 忘れられぬ あの時の
思い出 語る 乙女達
尊き命 捧げたる
あの子の悲しみ 誰が知る莟(つぼみ)のままに 散る定め
泣いて 明かした満州の
東部の窓に残る月
今尚癒えぬ心傷傷付き帰る 小鳥達
羽根を休める 場所もなく
冷たき眼(まなこ)身に受けて
夜空に祈る 幸せを守りし命長らえて
祖国の土に五十年
あの子も今は 六十路坂
変わらぬものは 心だけ次に生まれる その時は
平和の国に生まれたい
愛を育て 慈しみ
花咲く青春 つづりたい消してはならぬ 灯を
この世に命ある限り
語り伝えよ戦争の
悲惨さ辛さ哀れさを残り少ない 老いの身が
思がをつづるこの歌は
せめてこの世の慰めに
涙で歌う愛唱歌誰が 手向けた白ユリの
花一輪に 微笑みて
静かに佇む 乙女の碑
可憐な姿 いじらしい誰が悪いわけでなく
生まれた時が運命の
別れとなったあの時代
帰らぬ青春 惜しむだけ平和の国の幸せを
世界の友に 知らせたい
悔いなき人生?永久に
続けて祈る乙女?異国に眠る あの娘等の
思いを 胸にこの歌を
口ずさみつつ置いて行く
諸夫よ?守れ 幸せを
諸夫よ?守れ 幸せを平成二年四月二十六日 66歳
<戦争がもたらしたものは。人々の記憶の奥底に、まるで澱のようにこびりついたままです。だからこそ、忘れてはならない記憶なのかもしれません。
私達一人ひとりが被害者となり、加害者となり得る戦争。戦争は今もどこかで続いています。>
そんな悲惨な歴史があるにもかかわらず、今の日本では、憲法第九条第二項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」を削除しようとする動きが続いている。
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コメント
そうですね
エムズの片割れさまが まとめられたように
今の日本では 憲法第九条第二項を削除しようとする動きが続いている
絶対に 間違いです
どうにか しないといけないですね
【エムズの片割れより】
ある意味、戦後日本のタブーだった第2項の削除を、堂々と言える時代に突入してしまったということでしょうか?
投稿: 能勢の赤ひげ | 2018年1月31日 (水) 21:50