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2017年11月19日 (日)

野党の質問時間削減~大政翼賛会への道へ?

今朝(2017/11/19)の朝のTBSの番組「サンデーモーニング」で、青木理さんが、毎日新聞の記事の紹介をしていた。興味があったので、それを読んでみた。

特集ワイド 野党の質問時間削減 大政翼賛会への道、歩むのか

政府・与党が出す予算案や法案を、野党の異なる視点でチェックするのが国会質疑の意義。その野党の発言が封じられれば、国会が大政翼賛会と化してしまうのだが……

 もしかしたら日本の運命を大きく変えることになるかもしれない。開会中の特別国会で、与党・自民党が、野党が国政をただす場である委員会審議の質問時間を削ってしまったのだ。「与党議員の質問機会が少ないから」が理由らしいが、それは事実か。大政翼賛会へと歩んだ戦前の国会でも、同じ動きがあったのだが……。【吉井理記】

 「国会が自ら、国会の権能を低下させる愚挙です。日本を破滅させた戦争の時代にも、国会の力を封じる動きがありました」と怒りが収まらないのは、「国会質問制度の研究」などの著書がある千葉商科大の田中信一郎特別客員准教授だ。
 歴史を振り返る前に、おさらいしておこう。問題になっているのは、衆議院の委員会審議などで、与野党の質問(正確には質疑。決められたテーマに限り問いただすこと)時間をどう割り振るか、ということだ。
 国会法や衆院規則、実務手引きである「先例集」にも明示がないが、野党の時間を多くするのが長年の慣例で、この特別国会まで「野党8、与党2」の割合だった。ところが自民党は衆院選での大勝を背景に野党の反対を数で押し切り、まず15日の文部科学委員会で「野党2、与党1」とした上で、国会審議の中心となる予算委などでも配分を見直す方針なのだ。
 「2対1」なら一見野党が多そうだが、「それは錯覚です」と田中さん。
 「注意すべきは、この時間は質問だけでなく、首相や閣僚ら政府答弁の時間も入っている点です。与党から政府閣僚が選ばれるのですから、事実上は政府=与党です。するとどうなるでしょうか」
171119tvasahi  例えば、野党の持ち時間を4時間として、質問2時間に対し、政府が答弁を2時間したとしよう。「2対1」だから、与党の持ち時間が2時間で、質問1時間、政府答弁も1時間とする。発言時間を単純計算すれば、野党の2時間に対し、与党+政府の発言は4時間、つまり「2対4」と逆転する。
 政治学が専門の明治大教授、西川伸一さんも嘆息する。「そもそも、国会は野党のためにあるといっても過言ではありません。なぜなら国会で議論される予算案や内閣提出法案は、全て与党が事前承認したものしか提出されないからです。だからこそ国会質疑を通じた野党のチェックが重要なのですが、その野党の質問封じは、国会の否定です。少数意見を聞かず、多数決ですべてを決めれば、国会の意味がなくなりますから。議論が政府協賛の与党色に染められ、『大政翼賛会』『戦前回帰』という指摘も、あながち絵空事とも言えなくなってきます」

帝国議会ではゼロの時も
 では、その戦前の国会である帝国議会で、何があったのか? 田中さんが解説する。
 「帝国議会では最初、議員が政府に国政全般をただす『質問』は制限されていました。それでも田中正造ら自由民権運動を率いた先人の努力が、政府をただす機会を広げていったのです。しかし軍国主義が高まる時期から、議員が政府に質問する場が再び制限され、国会の力が失われていきました」
 当時は書面質問が原則だったが、議員は内容や理由を議場で演説することが慣例になっていった。田中正造はこうした質問を通じて足尾鉱毒事件を社会に問うことができた。
 慣例は「先例集」にまとめられ、国会運営のマニュアルとなっていたが、1935年前後に慣例が改められ、議員の演説時間や、政府答弁に対する再質問を制限する改定がなされた、という。残された「先例集」からは、改定を誰が言い出したかわからないが、議会多数派(当時は立憲政友会)の可能性が高い、という。
 「この時期は、満州事変(31年)で国際的孤立が深まり、天皇機関説事件(35年)など、思想弾圧が激しさを増す時代です。そんな風潮を反映し、国会で議論することに疑いを持ったり、政府批判は許せないと考えたりする議員が増えたための改定でしょう。つまり国会自ら、国会の力を弱めたのです」
 この結果、政府への質問そのものが国会から消えていく。田中さんによると、大正デモクラシー期の第31回帝国議会(13~14年)では衆院で計100件の質問があったが、各政党が大政翼賛会に合流した後の第76回帝国議会(40~41年)では18件。日米開戦後は質問ゼロという国会もあり、43年6月~44年9月の4回の国会は、1件の質問もなかった。国会が、政府の追認機関に堕した結果である。
 「国会の監視機能が働いていれば、無謀な戦争をしたり、続けたりすることはなかったかもしれない。でも結局、国会が機能しないがために、国を滅ぼす政策を止められませんでした」
 そもそも今回の問題は、自民党の若手議員が「自分たちの質問する機会が少ない」と訴えたことが発端とされるが、この理由には裏付けが乏しい。
 なぜなら、本当に政府をただしたいなら、時間もテーマも制限されない書面質問(質問主意書)が可能だからだ。例えば、「森友・加計(かけ)学園問題」で揺れた今年の通常国会では、衆院で438件の質問主意書が出されている。さて、与党分はどれだけか?
 「ゼロ」である。政府をただすのは与野党を問わず、国会議員の責務だ。質問主意書が出されれば、答弁書を作る各省庁の職員の負担は増えるから、主意書の乱発は論外だが、本来なら与党議員も出すべきものだ。実際、旧民主党政権時代は民主党議員も出していた。
 立憲民主党の川内博史衆院議員もその一人だ。旧民主党議員時代の2010年、鳩山由紀夫政権に官僚の天下り規制のあり方を問う主意書を出した。
 「規制のあり方が甘いと感じ、政府をただしました。政府をチェックし、政策を良いものにするために、必要と思えば出すべきです。自民党の若手議員の活躍の場がないというなら、もっと政府内に若手を登用すればいい。そもそも与党は、自分たちが国会に提出する法案を自分たちで承認しておいて、国会で何を問うつもりか。『安倍1強』と呼ばれる状況で、政府のチェックがきちんとできるのか」
 その自民党のベテラン議員によれば、かつては与党議員の依頼で、各省庁が質問を作り、答弁も書く「自問自答」が横行していたらしい。さすがに最近は少ないようだが、この議員は「今でも『貴重な質問の機会を頂いて』とか言いながら、『○○大臣のご決意をお聞かせください』『××に行かれたご感想は』なんて、恥ずかしい質問をする若手がいる。時間をくれと言う前に、質問力を磨くべきだ」と首を横に振るのだ。
 では、野党の質問時間を削ることは何を意味するのか? 田中さんがまとめた。
 「今のまま質問時間を減らせば、国権の最高機関として政府をチェックする機能は確実に低下する。これは間違いない。厳しい監視にさらされてこそ、健全な政権や政治が実現するんです。国会が機能しないことが、この国に何をもたらすか、72年前に私たちは経験済みです。与野党の政争とか、そんな小さな話ではないんです」
 自民党の選挙スローガンは「この国を、守り抜く。」であった。今からでも遅くはない。この国を守るためにこそ、野党の声に耳を傾けるべきだろう。」(
2017/11/16付「毎日新聞」夕刊より)

与党の質問については、同じ毎日新聞で、こんな記事もあった。
与党の質問、時間増必要? 国会論戦、政府と一体 英独は野党尊重
 自民党が国会の質問時間について、議席数に応じて与党分を増やすよう要求している。政府と一体のはずの与党の質問時間を増やすことは、どれだけ妥当なことなのだろうか。【和田浩幸】
 「首相は答弁に立つたびに必ず(スーツの)ボタンをお掛けになる。礼儀を尽くしておられる姿、本当に好ましい」。今年3月の参院予算委員会で自民党の堂故茂氏がこう発言し、ネット上で「ヨイショ質問の最たる例」と話題になった。昨年11月の衆院内閣委では同党の谷川弥一氏が質問時間をもてあまし、般若心経を唱えて批判を浴びた。
 衆院での質問時間は自民党政権の2008年は「与党4、野党6」で配分していた。同党は09年に野党に転落すると増枠を要求。旧民主党政権の下で「与党2、野党8」に見直し、安倍政権でもこれが続いてきた。
 見直し要求は10月の衆院選で大量当選した若手に活躍の場を与えるのが名目だ。ただ、与党は予算や法律案を国会提出前に「事前審査」している。議席数通りに配分すれば「与党67%、野党33%」。議院内閣制の国会で政府に対するチェック機能は一義的に野党にあり、自民党内でも「フェアではない」との意見がある。
 「議会の母」と呼ばれるイギリスはどうだろうか。政府が国会運営に影響力を持つなど政府・与党の一体性が強い半面、野党第1党の党首は法律で「国王陛下の政府に反対する最大野党の党首」と定義される。議員歳費のほかに給与も支給される特別な存在だ。
 英国議会を特徴付ける首相への「クエスチョンタイム(質問時間)」は毎週1回で、与野党の議員が交互に質問する。
 13年の国立国会図書館の調査によると、特に野党第1党の党首には6回の補足質問が認められ、与野党のトップが力量を競う事実上の「党首討論」とされる。
 1985年以降は会期ごとに20日間の「野党日」を設定。野党が議題を決めて閣僚に質問できる。成蹊大の高安健将教授(比較政治学)は「イギリスでは政府・与党の力が強いが、野党も尊重され、意見表明の機会が重視されている」と語る。
 ドイツ連邦議会には外交など大きなテーマを文書でただす「大質問」▽関心の高いテーマを聞く「質問時間」▽答弁が不十分な場合の「時事討論」など多くの質問の機会がある。05~09年では大質問と時事討論は9割以上、質問時間は8割以上が野党だった。
 首相の権限強化など90年代以降の日本の政治行政改革は、イギリス型のスピーディーな国家運営を目指してきた。それだけに高安教授は「本来は野党議員の質問を重視して民意のバランスを取るべきだ。政権の都合の悪い質問は受けたくないという意思の表れではないか」と指摘した。」(
2017/11/06付「毎日新聞」ここより)

野党の質問時間の中には、与党の答弁時間が含まれているので、実質の与野党に与えられた時間は違う、という指摘は他でも聞いた。しかし、「本当に政府をただしたいなら、時間もテーマも制限されない書面質問(質問主意書)が可能だからだ。例えば、「森友・加計(かけ)学園問題」で揺れた今年の通常国会では、衆院で438件の質問主意書が出されている。さて、与党分はどれだけか? 「ゼロ」である。」という話は初めて聞いた。

まさに「政権の都合の悪い質問は受けたくないという意思の表れ」が、堂々と行われており、誰も止められていない。
それによって「国会が機能しないことが、この国に何をもたらすか、72年前に私たちは経験済みです。与野党の政争とか、そんな小さな話ではないんです」・・・

バカバカしい大相撲の暴力事件にかき消されて、日本の将来に関する重大事が矮小化されているようで心配だ。良く見たい。

171119soochi <付録>「ボケて(bokete)」より

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