「戦争には絶対に近づかない」~丹羽元中国大使の話
今朝(2017/09/10)のTBS「時事放談」は、中谷元・元防衛大臣と丹羽宇一郎・元中国大使の出演。
中谷さんの話は、今までの政権の言葉の繰り返しなので、まったく面白くないが、伊藤忠の元社長であり、元中国大使だった丹羽宇一郎氏の指摘は、庶民・国民からの目線で、納得が行った。それで、もう一度聞き直して、丹羽さんの指摘をメモしてみた。
・朝鮮半島の非核化は、相当前に崩れている。現在核を保有している9カ国は今まで通りで、北朝鮮だけダメということは、国際的に通用するのか?
・核の保有は北朝鮮の生命線。それが無ければ、イラクとかリビアのようになってしまうと思っている。だから絶対に止めない、ということは、残念だが国際的にもかなりの方々が思っているのではないか。
・圧力の努力をしても、生命線として国が崩壊しても手放さないとすれば、唯一の被爆国の日本が、一時的にせよ核の保有国が実験も運用も2年間凍結するという案を水面下で米・ロにするべきではないか。
・石油の全面禁輸を行うと“窮鼠猫を噛む”ことが心配。1941年のハルノートで、日本に石油の全面禁輸を打ち出した3日後、日本は開戦を決議した。同様に、北朝鮮も何をするか分からない。そんな方向に北朝鮮を追い込んではいけない。簡単に石油を止めてはいけない。
・北朝鮮を追い込んだ時に、出口は何か?ロケット戦争になった時に一番の問題は原発。日本は1年以上稼働した原発は50以上ある。原発が1年稼働すると、広島原発の何百倍の放射能物質が出るという研究がある。北朝鮮が持っている爆弾よりも、そっちの方が怖い。50の原発を防御することは難しい。ロケット戦争は絶対に避けなければいけない。
・ロケットが原発に打ち込まれた時は、他の議論は吹っ飛ぶ。この議論無くして簡単に北朝鮮を、力と力で追い込んでいくのは、出口無き戦略。
・5年で10%と言う防衛費が少しずつ上がるのは仕方がない。しかし限度はある。
・(石破氏の“核を持ち込む”議論に対して)戦争に近付くようなことは、日本は出来るだけ避けなければいけない。それが第二次世界大戦の教訓。戦争体験者は全員「戦争だけは止めてくれ」と言う。戦争の悲惨さを知っている人がどんどん減って、イメージも湧かなくなっている。だから非核三原則も、戦争に対して前に行かないで後にさがれ。戦争に近付かないように日本は考えて行かなければいけない。」(2017/09/10のTBS「時事放談」での丹羽氏の発言より)
そう言えば、先日の朝日新聞に、丹羽さんの記事があったな・・・と思い出して、再度読んでみた。そこに同様の論があった。
「(安保考)第1部・同盟とは:下 同盟、どう向き合うか
日米同盟によって戦争を未然に防げているのか、それとも同盟がゆえに日本は危険にさらされているのか――。北朝鮮情勢が緊迫するなかで、多くの人たちが考えあぐねている命題だろう。同盟を組む意味はどこにあるのか、そしていまどう向き合えばよいのだろうか。
■戦争近づける影も直視して 丹羽宇一郎さん(元中国大使)
冷戦は終わりましたが、その後の米国による覇権も終わりました。一方、中国は世界第2位の経済大国となり、軍事費はこの間、40倍近くになった。世界情勢が変化しているのに、日本はこれまで通り日米同盟強化の一辺倒です。
沖縄の米軍基地はなぜあるのか。米国を守る盾になるためです。しかし米国のために日本があるわけではない。なぜ日本のために日米同盟が必要なのか考えるべきです。それもなく法律を変え、専守防衛を超え、トコトコついていくだけではいけないと言いたい。
同盟には光もあれば影もある。同盟の光ばかりを享受できると思い込み、日本は自国の安全保障に思考停止状態になっている。同盟の影、つまり自らも戦争に近づいてしまう部分を考えていない。
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北朝鮮が核実験をしました。しかし金正恩(キムジョンウン)氏に核を放棄しろと言っても、絶対に放棄しないでしょう。生き残る唯一の道が核だと思っているからです。米韓は軍事演習をやったり、貿易を止めたりして、どうするつもりなのか。圧力だけをかけても、出口はない。出口なき戦略の先にあるのは戦争です。
最近、北朝鮮や中国への強硬論がまかり通っています。危ないことを格好いいことだと思っている。戦争の真実を知るべきです。
戦時中、空襲に遭いました。防空壕(ごう)の入り口に焼夷(しょうい)弾が落ち、母が死ぬ思いで火を消した。いま戦争を知らない人が多すぎると思い、体験者を取材し、本にしました。
戦争の真実とは何か。それは、「狂う」ということです。普通、人は人を殺せません。だから狂うしかない。また、実際には飢えと病気で死んだ人も大勢いました。
安全保障とは、防衛力を向上させることだと思っている人が多いですが、それは違います。軍事力は安全保障の手段の一つにすぎない。軍事力より外交力、それを実現する国際政治こそが大事です。
東シナ海の安全保障を議論するなら、中国とどう敵対せず、友好関係を築き、味方に引き入れるかが重要で、国際政治の出番です。
過去に米国はぎりぎりのところでソ連との戦争を回避しました。それこそ政治家の役割です。
1962年のキューバ危機。米国のケネディ大統領とソ連のフルシチョフ首相は水面下で何度も交渉し、米国がキューバに侵攻せず、ソ連がキューバからのミサイル撤去で合意。米国はトルコからのミサイル撤去も秘密裏に約束した。核搭載爆撃機の離陸直前でした。ケネディ氏の指導力で軍事専門家の強硬論を抑えることができたと研究者は分析しています。
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中国大使として、習近平(シーチンピン)氏と十数回は会いました。そのたびに「両国は、住所変更できない間柄ですね」と言われました。隣国同士、仲良くするしかない、という含意です。日本の生き残りには中国の14億人の市場が重要です。経済格差や環境汚染など日本がかつて経験した問題に直面する中国には日本の知恵が必要です。
安倍晋三首相と会談する時、習氏はにこりともしないとメディアは騒ぎます。こっちもしかめっつらしているからでしょう。相手は、自らを映す鏡です。
尖閣諸島については、帰属の議論を2年間凍結してはどうか。その間に、漁業協定と資源開発を一緒にやったらいい。お互いが損をしない、政治の力で前向きな解決方法を考えてほしい。
北朝鮮問題の解決については、すべての核保有国が2年間、核開発と使用を一切凍結する。その間に、唯一の被爆国日本が仲介し、米朝、米中で話し合う。これが唯一の道だと私は考えます。
同盟の意味、特に影の部分が何なのかを考え、戦争には絶対に近づかないようにする。軍事力だけでなく、むしろ国際政治の力で戦争を避ける。それこそが安全保障です。政治家には、冷静で、したたかな交渉を期待したい。(聞き手・三輪さち子)
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にわういちろう 39年生まれ。伊藤忠商事社長を経て、2010~12年に中国大使。尖閣沖の漁船衝突事件や尖閣諸島の国有化問題に対応した。近著に「戦争の大問題」。」(2017/09/07付「朝日新聞」p15より)
自分は、そもそも北朝鮮から日本めがけてミサイルが飛んでくるとは思っていない。日本を敵に回すことを覚悟で、日本の米軍基地を攻撃して来るのなら分かるが、その時は、既にアメリカと北朝鮮の全面戦争で、早々に決着が付いているはず。
それに日本の高度550キロの宇宙をロケットが飛んでも、たくさんの衛星が飛んでいる日常と変わらない。それを大騒ぎしている現状に、別の意図を感じてならない。
原発への攻撃も、弾道ミサイルには原発をピンポイントで攻撃する精度は無い、という議論もある。原発も、戦闘機など小型機なら壊れない強度は持っている。しかし、2001年のアメリカ同時多発テロ事件のように、旅客機が燃料満載で原発に突っ込んだら、福島原発以上の放射能の拡散が生じたことは容易に想像出来る。
百歩譲って北朝鮮からミサイルが飛んでくる前提で考えても、「同盟の影、つまり自らも戦争に近づいてしまう部分を考えていない。」という指摘は納得できる。
中谷氏も堂々巡りで話していたが、ただただ「北朝鮮に核開発を止めさせる」という言葉を繰り返しても、何の解決にもならない。自分も、北朝鮮を追い込んではいけないと思う。理由は簡単。戦争に近付くから・・・
つまり、北朝鮮はじめ世界の紛争に対して、「日本はどうするべきか?」の解は簡単である。
理屈はどうでも良い。丹羽さんが指摘しているように、「戦争に対して前に行かないで後にさがれ。戦争に近付かないように日本は考えて行かなければいけない。」というスタンスが唯一ではないか。
平和憲法を持っている日本全体が、「戦争からなるべく離れる」「戦争に近付かない」という合意の元で、政治運営が為されることを祈りたい。
広島の「過ちは 繰返しませぬから」を思い出して・・・・
<付録>「まんがイラスト ぼうごなつこのページ」(ここ)より
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