「茶色の朝」迎えないように~「共謀罪」法施行
今日の「朝日新聞」夕刊にこんな記事があった。
「茶色の朝」迎えないように 仏寓話、日本でも注目続く 「共謀罪」法施行
「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が11日、施行された。犯罪を計画段階で取り締まることが可能になるが、国会での議論は深まらず、一般の人への適用や政府の監視が強まる懸念は消えないまま残った。施行後の社会とどう向き合えばいいのか。フランスでベストセラーとなった一冊の本がSNSなどで注目を集めている。
ファシズム(全体主義)に染まっていく社会を風刺した臨床心理学者フランク・パブロフ作の寓話(ぐうわ)「茶色の朝」。1998年にフランスで発売されると、ジャンマリ・ルペン氏率いる極右政党・国民戦線が勢力を拡大していくことへの懸念に後押しされるように、100万部を突破するベストセラーになった。
物語は、茶色以外のペットを飼うことを禁じる「ペット特別措置法」が施行された社会が舞台。主人公の「俺」は疑問を感じながらも、法律に従い白黒の飼い猫を殺してしまう。親友は黒い犬を殺す。やがて法律に反対していた新聞が廃刊に。「俺」はしぶしぶ唯一残った「茶色新報」を読み、茶色い猫を飼い始めた。
そんなある日、同じく茶色い犬を飼うようになった親友が逮捕された。その理由は――。
日本では2003年12月に大月書店から出版された。その頃始まった自衛隊のイラク派遣、特定秘密保護法、集団的自衛権の閣議決定、安全保障法制……。国民を二分する議論のたびに話題となり、各地で朗読劇も上演された。現在までに25刷りを重ね、6万4千部に。担当者は「政治や社会の状況と連動しながら息長く読まれてきた」と話す。
作品には、「国家と犠牲」などの著書がある高橋哲哉・東大教授(哲学)がメッセージを寄せた。「日本社会も茶色が濃くなっている。『共謀罪』だけではない。『自分には関係ない』とやり過ごすうちに、取り返しがつかなくなるかもしれない」と話す。
例えば原発。東京電力福島第一原発事故の前にも危険性を訴える人はいたが、福島県出身の高橋教授も「大丈夫だろう」と思いこんでいたという。「実際に『茶色の朝』が来てしまった。『共謀罪』ではありえない、と言い切れるだろうか」
物語では、「俺」が「茶色に守られた安心、それも悪くない」と思う場面がある。だが、ラストシーンで「抵抗すべきだった」と悔やみ、「仕事」や「毎日やらなきゃならないこまごましたこと」を言い訳に挙げる。
「共謀罪」法が施行された社会にどう向き合うか。高橋教授は「思考停止になるのはやめよう」と呼びかける。「例えば『一般人は対象にならない』という政府の説明を『本当か』と疑ってみる。『茶色の朝』を迎えないためには、自分の頭で考え、意見を表明するエネルギーが必要です」(岩崎生之助)
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菅義偉官房長官は同日午前の記者会見で、「極めてテロ防止のために有意義」と評価し、「犯罪成立要件が明確で、厳格なものになっている。恣意(しい)的運用は行われないと、国民の皆さんに説明していきたい」と述べた。」(2017/07/11付「朝日新聞」夕刊p11より)
フランク・パブロフの寓話「茶色の朝」については、3年半ほど前に「今だからこそ読んで欲しい寓話~フランク・パブロフの「茶色の朝」」(ここ)という記事を書いた。
何度か、その後の当サイトの記事で、この寓話を読んで欲しいと記したが、今日も改めてこの記事を紹介する。
(ここ)に全文を載せてあるので、ぜひご一読を!
そして、高橋教授の「『茶色の朝』を迎えないためには、自分の頭で考え、意見を表明するエネルギーが必要です」という指摘を改めて噛み締めたい。
<付録>「まんがイラスト ぼうごなつこのページ」(ここ)より
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