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2017年5月17日 (水)

「痴漢冤罪」~逃げるは損だし罪になる?

最近、痴漢事件での悲惨なニュースが多い。それに伴って、ウチのカミさんのトーンも上がる。「少しぐらい触られても減る物じゃ無いだろう。死ぬほどの罪か!?だいたい、偽善者ぶって一緒に捕まえようとする男も問題だ」
前にも書いたが、カミさんは女性側に厳しい。それは前に駅のホームで、大きな声で痴漢を“摘発”している、素人とは思えない女性を目撃したからだという・・・
そして男の子を持つ母親の心情でもあるという。

Netでこんな記事を読んだ。
<痴漢>身に覚えがない場合…逃げるは損だし罪になる
 痴漢を疑われ、逃げる人が後を絶たない。線路に下りて電車にはねられたり、ビルから転落死したり、命を落とすケースも相次ぐ。もし、やっていないのに疑われたら……。長期勾留や有罪率の高さから「逃げるしかない」とも言われてきた。しかし、専門家は「逃げるな」という。痴漢冤罪(えんざい)の新しい“常識”とは?【小国綾子/統合デジタル取材センター】
 ◇弁護士へのアクセス手段
 痴漢を疑われ、逃げるケースが相次ぎ、とうとう死亡事故まで発生した。15日には東急田園都市線青葉台駅で30代男性が線路に飛び降り、列車にはねられ死亡。12日にはJR上野駅から逃走した40代の男性が近くのビル脇で転落死。死亡事故ではないが、11日にはJR新橋駅で20~30代と見られる男が線路に飛び降りて逃走し、電車を止め、約5万人に影響が出た。
 痴漢は許されない。しかし、痴漢冤罪もまた、そうだ。
 絶対に逃げてはいけない――。インターネット上のブログで強く呼びかけたのは、千葉県流山市の三浦義隆弁護士。「痴漢を疑われても逃げるべきではない理由」(12日ここ)「痴漢を疑われた場合の弁護士アクセス手段をいくつか挙げておこう」(14日ここ)の2本の記事は合計15万回以上閲覧された。
 「駅事務室に連れて行かれる前に、知り合いの弁護士に連絡し、その場を平穏に立ち去るべし」と対応を指南した記事に、「弁護士の知り合いなどいない」という声が多く寄せられた。そこで三浦さんが「住所氏名をメールしてくれれば、私の携帯電話番号を教える」と書き添えたところ、実際に約50人から依頼があったという。「多くは男性からでしたが、夫が心配という妻や『都会に暮らす息子に教えたい』という地方の母親からも。実際には、痴漢冤罪に巻き込まれる可能性はそう大きくないはずなのですが、満員電車で通勤する人にとって痴漢はもっとも身近で不安な冤罪なのでしょう」と三浦さん。
 満員電車では、疑われないように両手を挙げて“バンザイ通勤”をする男性が少なくない。ネット上では「男性専用車両も作って」「痴漢はもはや男女両方の敵」などの声も上がる。
 痴漢冤罪をテーマにした映画「それでもボクはやってない」(周防正行監督)が公開された2007年当時、法律の専門家ですら「疑われたら走って逃げるしかない」と助言したものだった。ひとたび痴漢の疑いで逮捕されれば、容疑を否認している限り、最大23日間、身柄拘束され、起訴されれば有罪率は99%以上。職場に知られ、仕事を失う恐れもある。逮捕されたら、おしまい。だから、逃げろ、と。
 「でも今は逃げてはいけない」と全国痴漢冤罪弁護団の生駒巌弁護士も強調する。「人質司法」への批判が強まり、否認しても勾留されないケースが増えてきたからだ。「私の担当した事件では、初犯で身元が確かなら、勾留されなかったり、勾留決定が取り消されたりするケースが多い。検察の不起訴や結論棚上げも少なくない」(生駒さん)
 勾留請求されなければ逮捕から最大72時間で釈放され、職場に知らせずに済む可能性も高い。
 ◇駅事務室に行く前に
 三浦さんも生駒さんも「逃げるのはかえって不利」と口をそろえる。逃走中に他人をけがさせれば傷害、他人の敷地に入れば住居侵入、線路に下りれば往来妨害などの罪に問われかねない。
 実際、運休などの被害が相次いでいることについて、JR東日本は「責任の所在が明確であれば損害賠償訴訟を起こすこともありえる」(広報部)と説明する。
 駅施設には防犯カメラが集中する。逮捕されたら勾留は必至だ。4月25日にはJR埼京線板橋駅から線路に飛び降り逃走した埼玉県の男(41)が翌日、都迷惑防止条例違反(痴漢)容疑で逮捕されている。
 痴漢冤罪で「逃げてはいけない」ならば、具体的に、どう行動すればよいのか。
 生駒さんは「逃げるのではなく、上手に立ち去れ」と助言する。駅の事務室に連れて行かれ、警察に引き渡されれば、私人逮捕(一般人による現行犯逮捕)の体裁が整ってしまい、逮捕は免れない。だから理想的なのは、駅事務室に連れて行かれる前にその場を立ち去ること、なのだ。
 生駒さんは「駅事務室に連れて行かれる前に名刺を出すなど身分を明らかにし、堂々とその場を立ち去れば、逮捕を逃れられる。知り合いの弁護士に来てもらえれば、証拠隠滅や逃亡の恐れのない人を逮捕するのはおかしいと法的に主張してもらえるので、その場を立ち去れる可能性はより高まるでしょう」と助言する。
 ◇家族や友人などに助けを
 それでも、やむなく駅事務所に連れて行かれたらどうすれば良いのか。
 生駒さんは「警察が来る前に、友達や家族に連絡し、痴漢冤罪事件に詳しい弁護士を探してもらうことも有効」という。逮捕後は家族と連絡を取ることすら困難だからだ。
 逮捕後は当番弁護士を頼める。日弁連の安武雄一郎弁護士は「当番弁護士には、駅事務室に連れて行かれる前に駅に駆けつけるような対応は難しいだろうが、勾留される前に身柄拘束が解かれるよう弁護活動はできる。最初の面会は無料。有料でその後の弁護を頼める。弁護士費用が払えない人には援助制度もある」と説明する。
 疑いを晴らすためには日ごろの人間関係も大切だ。生駒さんの知る範囲でも、妻や友人が熱心に現場でチラシを配るなどして目撃者を探し出し、無罪判決を得たケースがあったという。
 「人質司法」や推定無罪の原則の軽視など、日本の刑事司法の抱える問題を象徴しているともいえる痴漢冤罪。少しずつではあるが、「逃げるしか道がない」は変わり始めている。」(
2017/05/17付「毎日新聞」ここより)

当サイトでは、痴漢冤罪について、何度も書いている。あまりにもやるせない、理不尽な話だから・・・(ここなど)

8年ほど前に「痴漢冤罪から身を守る「理論武装」」(ここ)という記事を書いた。
当時の週刊朝日の記事では、痴漢冤罪から身を守る手段として、
①「痴漢!」と叫ばれても落ち着いて否認する
②否認した後は、その場を立ち去ってかまわない
③立ち去れない状況になったら、逃げるのではないと説明する
④駅員に指示されても立ち去ってかまわない
⑤駅員に強制力はないので従わなくてもいい
⑥警察官が任意同行を求めても、応じてはいけない

と書いていた。
それが上の記事によると、最近は事情が変わってきているらしい。

上の記事にあった「弁護士三浦義隆のブログ」(ここ)を改めて読んでみた。なるほど・・・。特にこんな指摘にも納得・・・
「どうも、「日本は女に有利な世の中で、捜査機関も裁判所も女の言うことは鵜呑みにする。他の犯罪なら決定的な物証もないのに有罪になることはないが、痴漢の場合は有罪になる」というような、陰謀論的な世界観を持っている人が少なくないらしい。
痴漢冤罪は痴漢特有の問題などでは全くない。日本の刑事司法全体の問題が痴漢事件にもそのまま反映されているだけ。
被害者供述や捜査段階の自白などの供述証拠を安易に信用し、強引な事実認定で有罪判決を書く裁判所。
あの手この手で自白を迫ったり、被疑者の供述を都合のいいように解釈して供述調書を「作文」したりする捜査機関。
否認すると逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれありとされ、長期勾留されやすくなるいわゆる人質司法の問題。
捜査機関が被疑者の氏名等をマスコミにリークするため、罪を犯したか否かはっきりしない段階で実名報道がなされてしまい社会的制裁を受けるという問題。・・・・
」(「弁護士三浦義隆のブログ」(ここより)

TBSニュースでは「【緊急取材】痴漢疑われた男性死亡~刑事に聞く、痴漢捜査の裏側」(ここ)として、こんな刑事の話が載っていた。
「【刑事】警視庁の警察官も何人も逮捕されている。俺の同僚も逮捕された。中には嫌疑なしで釈放されて、復職しているヤツもいる。でも、警察官が痴漢で逮捕されると、新聞に名前を書かれる。いくら復職しても家族の心の傷は深い。俺たちも上司から「満員電車に乗って女性が傍に来たら反対側を向け。つり革を両手で掴め」と指導されている。いつも痴漢事件があると、「また警視庁か」と言われるが、地方の県警なら満員電車はないし、自家用車の通勤も許されている。警視庁は圧倒的に不利な環境にあるよ。・・・」(ここより)

男は逃げようがない。Net上では「男女別車両の導入」求める声もここ)噴出している。
指摘されているように、鉄道会社としては費用もかからず、良い案では? 前2両を女性専用。後2両を男性専用として、真ん中の車両は制限無し。男性専用車両が混む場合は、段々と専用車両を増やしていけば良い。
自分が乗っていた中央快速線では、先頭の女性専用車両はそれほど混んでいなかった。もし男性専用車両が出来れば、混むかも知れない。
せめて、どこの鉄道会社でも良いので、一度実証試験をして欲しいもの・・・
署名運動をしてでも・・・
それほど痴漢冤罪は、都会の男にとって、いつ我が身に降り掛かるかも知れない恐怖なのである。
(昨日(2017/05/16)のTV朝日「羽鳥のモーニングショー」でも、玉ちゃんが「本当に混んでいる電車に乗るのはイヤ。ワナにはめられる可能性があるのはないかと思って・・」と言っていていたが・・・)

最後に、カミさんの言葉をもう一度繰り返す。
「身動きが出来ない満員電車で、少しぐらい体に触ったとしても、死を持って償わなければならないほどの罪か??」

(関連記事)
「「痴漢報道」―JR西日本の重役はなぜ死ななければならなかったのか」
痴漢冤罪から身を守る「理論武装」
痴漢冤罪~最高裁の逆転無罪判決に思う
映画「それでもボクはやってない」を観て

160517jyositoire <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170516-00000032-it_nlab-sci
こちらにもそういうことが詳しく載っていますね。
被疑者が否定すると「否定する証拠を出せ」と言われ、
被害者は「やられました」と言うだけでOK。
裁判では九分九厘有罪になってしまい、
たとえ無罪を勝ち取ったとしても、世間から冷たい目。
そりゃあ、逃げたくもなりますよ。
確かに痴漢は卑劣ではありますが、
それが故意なのかうっかりなのか、非常に判断が難しいですよね。
「疑わしきは罰せず」の原則が全然活かされていないようで・・・

【エムズの片割れより】
最近、死者まで出ている状況なので、これを機に、「女性が訴えれば即アウト」という状況を、“世論が変える”と良いのですが・・・。
警察の態度も含めて・・・

投稿: マッノ | 2017年5月22日 (月) 23:14

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