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2017年4月 3日 (月)

「東芝だけじゃない!海外大型案件で赤字続出」

東芝の半導体(NAND)の分社が決まり、今月から東芝メモリがスタートした。これと同じように、海外案件で赤字を出した企業は結構多い。
だいぶん前の記事だが、数々の同様事件を見てみよう。

東芝だけじゃない!海外大型案件で赤字続出
プラント建設で想定外の遅延や賃金高

東芝を債務超過に追い込んだのは、米国の子会社ウエスチングハウスが手掛ける原子力発電所の新設プロジェクトだった。安全規制の強化で設計変更を迫られたうえ、工程管理の失敗などで建設は大きく遅延。約7000億円という巨額の追加損失計上に至った。
だが、東芝の苦境はひとごとではない。発電所、造船、化学プラントなど、日本の大手企業が手掛ける大型プロジェクトでは今、巨額損失が頻発している。

重工メーカーが軒並み大損
代表例が、三菱重工業の大型クルーズ船だ。2011年に約1000億円で受注した2隻の損失は、累計で約2500億円。基本設計の遅れや資材発注のやり直し、火事などのトラブルが発生し、納期遅延の補償にも追われた。結局、この春に2隻目を引き渡した後、事業から撤退する。
タンカーやバラ積み船など一般的な商船の需要が縮小する中、造船業界は付加価値の高い市場に商機を見いだした。三菱重工は大型クルーズ船に目をつけ、実績作りとノウハウ取得を狙った。多少の損失が出ても先行投資のつもりだったが、実際は高い授業料を払っただけとなった。
他社の戦略も死屍累々だ。三井造船や川崎重工業、IHIは海洋資源の作業船や構造物などの「海洋」事業に挑んだが、そろってつまずいた。1980年代にも造船各社は海洋で大やけどを負っている。「商船は見積もりと実際の費用に差がないが、海洋は見積もりが難しい」と造船メーカー社長は指摘する。
足元で目立つのは、米国での大型プロジェクトの損失だ。ある重工メーカーの財務担当役員は「現地でのワーカー確保に苦労している」と嘆く。賃金を上げても、労働者の入れ替わりが激しく現場の生産性は悪化するばかり。「日程に余裕があったはずなのに、納期を守るための追加コストが発生した」(同)。
プラントなどの大型プロジェクトの契約は、「ランプサム(固定価格)」と「コストプラスフィー(実費精算)」の2種類に分けられる。固定価格なら、受注側は契約で決めた金額で完成させる義務を負う。実費精算では、受注側はかかったコストに一定割合の利益を加えた金額を発注側に請求することができる。
固定価格であっても受注側に過失のないコスト超過分は発注側が一部負担する場合もある。だが負担が巨額だと、当事者間で争いになることも少なくない。

受注する側の負担がかさみやすい
固定価格でも実費精算でも、実際には案件ごとに細かい条件は異なる。契約段階からのリスクマネジメントが重要だ。ただ厳しい受注競争の中、基本的に受注側の立場は弱い。とりわけ海外案件では商慣行の違いなどから傷口が広がりやすい。東芝の原発案件のように、最終的には受注側が面倒を見ることが多い。
170403kaigaianken 米国案件で苦しむ別の重工メーカーの役員は打ち明ける。「顧客との契約は固定価格。だが配管工事などの下請け業者とは実費精算なので、かかった費用は全部こちらに請求される」。
この会社が取り組むのは、プラントの設計(E)、調達(P)、建築(C)を一括で行うEPC案件。実際の工事を担うのは地元の業者だ。コストの膨張を回避すべく固定価格で請け負ってくれる業者を探して約10社に当たったが、1社も見つからなかった。
工事現場では雇用関係が複雑なため、遊んでいる作業員を見つけても同社の社員は軽率に注意できない。「何かあると裁判に訴えられ、勝っても負けても多額の費用がかかる」(前出の役員)。受注金額が固定なのに、費用は膨らむのだからたまらない。
納期やコストで余裕のないところに天候問題などが重なった。人員を増やし工事の遅れを取り戻そうとしたが、近隣の他のプロジェクトも同じ状況だったため、労務費高騰と遅延の悪循環に陥った。

仕事確保のため赤字覚悟で受注
この会社は過去に固定価格のEPC案件で大きな損失を出し、同様の条件では受注しない時期が続いたが、いつの間にか受注を再開した。
「特にEPCの“C”が含まれる大型案件は、建設コストの変動が大きいので固定価格で受けたくないのが本音。だがそれでは仕事自体が取れない。ある程度のリスクを織り込んだ価格にすべきだが、競争が激しいため、ギリギリの価格にせざるをえない」と、役員は自嘲ぎみに語る。
米国市場は先行きも不透明だ。2月28日、トランプ米大統領は1兆ドルのインフラ投資を行う方針を表明した。しかし移民を制限すれば、人手不足は深刻化する。「日本企業にチャンス到来」との見方もあるが、安易に飛びつけば大やけどを負いかねない。(山田雄大:東洋経済 記者)」(「
週刊東洋経済」3月18日号ここより)

このリストを見ると、どの案件も大企業。それ故、受注も出来るし、ロスの処理も出来る。しかし、1件の海外案件で会社の解体にまで追い込まれたのは、東芝だけ。今回のWHの事件がどれほど大きなことかが分かる。
それにしても、海外プラントがメシの種のプラントメーカーを別にすると、総合機械メーカー(重工)と総合電機メーカーだ。家電メーカーは、シャープのように、自社への投資判断を誤ったことはあっても、海外の一物件でこれだけの赤字を出すことはない。
まさに受注時の判断であり、避けられた事態である。

日本の、特に大企業では、行け行けドンドンの“前のめり”の案件について、ブレーキを掛けることは難しい。積極的な市場開拓という甘言をなかなか否定出来ない。消極的という烙印を押されるから・・・。だからこそ、トップのジャッジが重要となる。
しかし現実は、先の石原元都知事の百条委員会ではないが、「オレは下が企画してきたことを、ただ追認しただけ」と逃げを打つ。
結局、ばくち打ちの声が大きな会社は、堅実な社員の声が小さくなり、打って出て博打に負ける。その点、孫正義のソフトバンクようなオーナー会社は、そのオーナーが自分の命をかけて判断するので堅い。その対極にあるのが、東芝のようなサラリーマン社長の「オレの時代だけ良ければ良い」・・・。

先の東芝の記者会見や臨時株主総会で、経営者の淡々として紋切り型の説明の評判が悪かったのも、「オレのせいではない」という開き直りが表情に出た結果かも知れない。
その点、三菱電機は同じ総合電機としては堅実。三菱という超巨大企業グループなので、グループの協力体制もあり経営層が厚い。もちろん経営の応援体制も厚い。
今回の東芝事件は、まさにサラリーマン社長の会社の弱点が出た結果ではないかと思った。日立の経営層の人材、三菱のグループ力に東芝は負けた。再起不能な位に・・・

170403okaasan <付録>「ボケて(bokete)」より

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