柳田邦男氏の珠玉の講演「人生、生き直す道を考える」
先日NHKラジオ第2で放送された「文化講演会「人生、生き直す道を考える」~ノンフィクション作家・評論家…柳田邦男」(2017/03/26放送)が良かった。氏が生涯を通じて蓄積された、珠玉の言葉の数々である。ぜひこの放送の全部を聞いて頂きたい。
NHKのサイトには、こんな解説がある。
「文化講演会「人生、生き直す道を考える」~ノンフィクション作家・評論家…柳田邦男
病気、災害、事故、失職、倒産、不和など、身に降りかかってくる災厄は人の心を暗闇に転落させる。そのようなとき『生き直す』には、どうすれば良いか。航空機事故、医療事故、災害、戦争などを題材にドキュメントや評論を数多く執筆してきた柳田さんが、様々な人々との出会いから学んだことを通し『生き直す力』について語る。」(NHKのここより)
この放送の一部、2つの断片だが、少し聞いてみよう。
<文化講演会「人生、生き直す道を考える」柳田邦男より>
この講演で紹介された本や言葉をメモしてみる。
<大変な病気になって自分の命が短い時、どう生きたらよいのか>
・原崎百子著「わが涙よわが歌となれ」
肺がんの妻に、ご主人が悩んだ末に「残り少ない時間しかない」と告げると、「ありがとう、ありがとう、よく話して下さったわね。私の生涯はこれからが本番なのだ。これまでの一切は、これからの日々のための良い準備でもあった。」「それでもやはり私はりんごの木を植える。(ルターの言葉)」と日記に綴った。
・西川喜作著「輝やけ我が命の日々よ―ガンを宣告された精神科医の1000日」
・柳田邦男著:「死の医学」への序章
「〈死〉をタブーの世界の中に閉じこめておくべきではない。〈死〉を見つめることによって、より深い〈生〉の充足を得ることができるのである。―2年7カ月にわたるガンとの闘いの中で、自ら「死の医学」を実践して逝った精神科医・西川喜作。その雄々しくも苛烈な生の軌跡をたどりながら、末期患者に対する医療のあり方を考える。高齢化社会における医療文化への示唆に満ちた提言。」(Amazonの解説より)
<戦争や災害、強制収容などの不条理な中で人はどう生きるのか>
・大岡昇平著「レイテ戦記」
・ヴィクトール・E・フランクル著「夜と霧」
「なあ君、もしわれわれの女房が今われわれのひどい姿を見たとしたら、どう思うかね。見られたくないもんだ」・・・
時々私は空を見上げた。そこでは星の光が薄れて暗い雲の後から朝焼けが始まっていた。そして私の精神は、それが以前の正常な生活では決して知らなかった驚くべき生き生きとした想像の中でつくり上げた面影によって満たされていたのである。私は妻と語った。私は彼女が答えるのを聞き、彼女が微笑するのを見る。私は彼女の励まし勇気づける目差しを見る。そして、たとえ、そこにいなくても、彼女の目差しは、今や昇りつつある太陽よりももっと私を照らすのであった。その時私の身をふるわし私を貫いた考えは、愛は結局人間の実存が高く翔かけり得る最後のものであり、最高のものであるという真理である。
魂のコミュニケーション・・・
・辺見じゅん著「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」
敗戦から12年目に遺族が手にした6通の遺書。ソ連軍に捕われ、極寒と飢餓と重労働のシベリア抑留中に死んだ男のその遺書は、彼を欽慕する仲間達の驚くべき方法により厳しいソ連監視網をかい潜ったものだった。悪名高き強制収容所に屈しなかった男達のしたたかな知性と人間性を発掘して大宅賞受賞の感動の傑作。(Amazonから)
<愛する家族が不幸な目に遭った時、どう生きるか>
・ローレンス ブルギニョン著「だいじょうぶだよ、ゾウさん」
おさないネズミと年老いたゾウは、まいにちなかよくくらしていました。けれども、ある日、ゾウは「もうすぐ遠いゾウの国にいって、もうもどらない」とネズミにつげます。さいしょは、それをうけいれられなかったネズミでしたが、いくつもの季節がめぐるなか、弱ってきたゾウの世話をいっしょうけんめいするうちに…。(Amazonから)
人生で大きな壁にぶつかったり、難局に直面したりする時に、生き直すという道をどう拓くか、それは価値観の転換。考え方を変える。
自分が生きることを支える言葉を、自分なりにしっかりと持っていることが大事。
良寛「災難に逢う時節には災難に逢うがよく候 死ぬる時節には死ぬがよく候 是はこれ災難をのがるゝ妙法にて候 かしこ」
コメントは不要だろう。
当サイトのコンセプトのひとつ「生と死を考える」ことについて、的確なアドバイスを頂いた。
自分もいずれ“その時”が来る。
“その時”のために、柳田氏が推薦してくれたこれらの本をじっくりと読んでみたいと思う。
当サイトのお薦めである。ぜひこの1時間の講演を聞いてみてほしい。
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