国や自治体はどう動く? 姫路のこども園問題
最近は、特にやりきれないニュースが多い。中でも、姫路のこども園問題は、言語を絶するやりきれなさを覚えた。
少子高齢化に対する国の対策や、1年前の「保育園落ちた、日本死ね」(ここ)でもクローズアップされた保育園不足問題だが、そんな背景をも尻目に、こんな悪徳保育園もあるのだ。
「悲惨な保育実態とは? 姫路・認定こども園問題
定員を大幅に超える園児を自治体に隠して受け入れ、しかも園児らに食事を十分に与えなかったという劣悪な環境。兵庫県は全国初の認定取り消しとする方針です。
「(同行した)保育所長経験者は監査後に涙を流していました。あまりにもでたらめだと」(市の担当者)
19日急遽開いた会見。姫路市の担当者も驚きの表情を見せました。認定こども園の『わんずまざー保育園』。外観はきれいで、遊具も真新しいものが設置されています。しかし、異常な保育実態にあったことが判明しました。
市によりますと園の定員は46人。しかしこれとは別に、私的に保護者と契約した22人を市に隠し勝手に受け入れていたのです。これは抜き打ち監査で発覚しましたが、その前の訪問日を事前に知らせる定期監査では、該当する園児22人全員を休ませるなど、隠蔽工作も図ったとみられます。
「こんな園に生後8か月から2年間も通わせていたのかと思ったら、自分が子どもに申し訳ないというか情けない。誰も死ななかったのが不思議なくらいだと思います」(園に通わせていた保護者)
保護者が「死ぬ危険性」もあったと訴える園の実態とは?20日、現役の保育士が答えました。
「人手が足りない時に、子どもがケガをしてしまって、その時はかなりきつかったです」(現役の保育士)
1.不十分な給食
約70人の園児に対し園が発注した給食は約40人分。2歳児の給食は、白ご飯のほか、カレースプーン1杯ほどのわずかなおかずがあるだけです。一方、0歳児の給食です。ごはんもおかずも一つの器に盛られ、固形の具も入っています。少ない時は、必要な食事量の3分の1程度しか与えられていなかったといいます。
「体重がなかなか増えないってことも連絡帳に書いてましたし。1歳半のときからずっと10キロ台で。給食でちゃんと栄養が取れてるなら大丈夫かなという思いもあったんですけど、それもあってすごく悔しいやら情けないやらです」(園に通わせていた母親)
食事量について園長に取材すると、こう話しました。
「70人全員が食事をとるわけではなく、給食が余ることもあった」(園長)
2.保護者が来る直前だけ暖房
「市によりますと、朝、保護者が来る2時間くらい暖房して、あとはまったく暖房をつけていなかったということです」(山根淳綺記者リポート)
厚労省のガイドライン。室内を20度以上に保つべきとしていますが、監査の際、暖房はつかず、室温は14度ほどだったといいます。室温について市が園長に尋ねたところ…。
「暖かくなってきたので空気を入れ替えていただけです」(園長)
3.保育士の水増し
書類上、園では保育士が13人働いていたことになっていましたが、3人に勤務実態はありませんでした。その一方で園児を勝手に増やしたため、働く側にとっても過酷な環境だと現役の保育士は話します。
「何かを園長先生に言うことが難しい職場。休憩が取れない、まったく取れない。それくらい仕事に追われている。残業代がつかないけど、子どもが多いので時間通りにあがれない」(現役の保育士)
浮き彫りになる劣悪な運営実態、専門家は…
「今回は特異な例で、定員を1.5倍も超えて受け入れるとか、明らかに子どもに危害が及んでもおかしくない」(奈良女子大学生活環境学部 中山徹教授)
「わんずまざー保育園」は、姫路市などから運営費として年間約5000万円を受け取っていて、市は刑事告訴も検討しています。」(2017/03/21付「毎日放送」ここより)
地元の神戸新聞の記事がより詳しい。
「給食のおかずスプーン1杯 姫路のこども園
園児40人余りで発注された給食を約70人で分け、おかずがスプーン1杯だけの子も…。兵庫県と姫路市の特別監査で、異常な保育実態が明らかになった私立認定こども園「わんずまざー保育園」(同市飾磨区加茂)。定員を大幅に超える園児を受け入れる一方、保育士の人数を水増しし、虚偽の報告でつじつまを合わせていた。
県と市が抜き打ちの特別監査に踏み切ったのは2月23日。関係者の情報提供がきっかけだった。
市などによると、施設の面積などから算定された同園の定員は46人。だが、園内には0~5歳の約70人がひしめいていた。
特別監査があった日、同園が外部発注した給食は42人分。おかずを取り分けたが、0、1歳児にはスプーン1杯分しか行き渡らなかったという。
給食の不足は常態化し、土曜日に限っては10食のみに固定し、これを園児40人前後に分配。おやつは午後1回だけで、4、5歳児は「ビスケット3枚」もしくは「かっぱえびせん6本」に制限した。
余った給食は冷凍保存し、足りない日に解凍して提供。1カ月以上過ぎても使うケースがあったという。
また、給付金を水増し請求するため、架空の保育士3人を計上し、給与分は園長が個人的にプール。同じ敷地内で運営する学童保育の小学生らの送迎を保育士にさせたり、夜間のベビーシッターを兼務させたりしていたことも確認された。
同園はこうした実態を隠すため、市への報告書類などを改ざんしていたという。
小幡育子園長は神戸新聞の取材に対し、特別監査で指摘された項目を認め「(認定を受ける前の)認可外保育所だった時代の感覚で運営していた。プールしたお金は遊具購入などで園児に還元するつもりだった。認定こども園としての自覚が足りなかった」と謝罪した。
県こども政策課の担当者は「認定以前の問題で衝撃を受けている。厳しく対処したい」としている。(金 旻革、木村信行)」(2017/3/19付「神戸新聞」ここより)
「姫路のこども園 保育士欠勤や遅刻で罰金、無給勤務
不適切な保育実態が明らかになった兵庫県姫路市の私立認定こども園「わんずまざー保育園」が、保育士と不当な雇用契約を結んでいたことが20日、市などへの取材で分かった。給付金を受けるため市に提出した雇用契約書とは別に、欠勤や遅刻をすれば罰金や無給勤務を科す“裏契約”を交わしていた。市は労働基準法違反などの疑いもあるとみている。
同園はこども園の認定を受けた2015年度以降、運営のため、年間約5千万円の公費を受給。保育士の人件費も含まれている。
市などによると、同園はこども園への移行に伴い、市に雇用期間や賃金を記した契約書を提出。一方で一部の保育士と内容の違う契約書を交わしていた。
“裏契約書”には、欠勤や遅刻、早退をした月は給与から1万円減額すると記載。無断欠勤すれば無給のボランティア勤務7日間、30分以上の遅刻なら2日間などとした。保護者を待たせた場合は「10日間のボランティア勤務、お客さま宅に謝罪」ともあった。
また、祝日などで保育士の休日数が園の規定よりも多い月は、日数に応じて給与がカットされていたという。
裏契約書は16年度になくなったが、その後も雇用状況は変わらなかったという。
同園の保育士は「1日働いても無給で理不尽に感じたが、園の方針で従うしかなかった」と証言した。
同園を巡っては、兵庫県と市の特別監査で、保育士数を実際よりも多く報告して給付金を水増し請求するなどの不正行為が判明した。県は近く、こども園の認定を取り消す方針。(金 旻革、木村信行)(2017/3/21付「神戸新聞」ここより)
この問題は、今朝(2017/03/21)のTV朝日の「モーニングショー」でも取り上げていた。そこで今も働いている現役保育士の話によると、「外部に言えなかったのは、園長が怖かったから」。
ある4歳児の保護者は「体重が4月に量って5月に量ったら1Kg近く減っていた」。
抜き打ち監査をした市の説明によると、「ちょっとショッキングな話なんですが、ご飯を残しますよね。冷蔵冷凍保存しますよね。後日、残っているものを解凍して出すことをしていた」。本来、破棄すべき食べ残したおかずを後日食べさせるとは・・・
しかし入園希望者は後を絶たなかったという。
認定こども園とは、幼稚園と保育所の2つの機能を備えた施設。よって、幼児教育を受けながら保育時間を延ばすことが出来るので、共働きの家族から人気の施設だった。そして午後7時半まで預けることが出来た。
1歳の娘を通わせている保護者は「私も負い目がある。どこにも行くところが無くて、それでも私は仕事復帰しなくちゃいけなくて、どこも受け入れてくれなくて、ここに電話したら「じゃあ見てあげます」って言われて・・・。市を通していないから悪いことは分かっているけど、そんなふうに言ってくれているから、お願いしますと・・・」。その後ろめたさから、回りのママ友にも相談出来ずに自分ひとりで抱えてしまって、今回の問題発覚で、自分ひとりではなかった、22人も同じような人がいた、とビックリしていたという。
そして、園長は「親御さんが大変で受け入れてあげたかった」と言っているが?という問いに対して、現役保育士は「そんなことはなかったと思います。お金もうけと思っていました」。
そして、保育士が園長に意見を言うと、子ども達の前で叱責されてしまい、子ども達が怯えてしまうので言えなくなった、とのこと。
現在いる保育士10人も、3月末で8人が退職予定だとのこと。
そして番組では、こんなコメントがあった。「待機児童の問題が根本。保育園を増やして、競争させるしかない」「少子高齢化で日本は大変だと言いながら、実際に子どもを育てているお母さんや子どもがこんな状態の国って、いったいどうするの?」・・・
まさに文句を口に出せない障害者、老人、幼児を食い物にしている経営者たち。
しかし、それでもなお「預かってくれるだけで有り難い」と思う親たちがいる。
調べてみたが、この件を社説などで取り上げている新聞はまだない。全国のメディアがこの問題をどう取り上げるのかを注視したい。
そして、出来るならこの事件が、昨年の「日本死ね」のような、待機児童に対する国の無策を糾弾するキッカケになれば良いな、と思う。
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コメント
胸の痛くなるような話が続いて表に出てきましたね。この際、不正をして国民の税金を懐に入れている人種を徹底的に調べて貰いたいと思います。弱者を食い物にする社会を正すようにするのには、国民が「何かおかしい」という目を持つことも大切ですね。
学校でクラスの平均点を下げると言って勉強の出来ない子の腕を先生が紫色に腫れ上がるほどつねっていたという話を聞いたことがあります。弱者いじめはこういう所から始まると思います。教育者の資質のない人が先生になってはいけませんね。すべての始まりがここからです。ついでに官僚の資質も調べられると良いですね。議員の読み上げる原稿を書く人たちですからね!
【エムズの片割れより】
“麗しい防衛”の稲田大臣もひどいですが、でも答弁はしています。しかし金田法務大臣は、答弁でまったく当事者能力が無く、ひどいの極みですね。
こんな人が大臣を・・・
調べてみたら、大蔵官僚だったのですね。とにかく日本の大臣の質の恥を世界にさらしてみっともない。早々に退陣するべき。本人も針のむしろ。石原元都知事と同じく、大臣になったおかげで、“晩節を汚す”???
投稿: 白萩 | 2017年3月21日 (火) 22:10
それでも不思議ですねぇ。これだけボロが出ている自民党内閣が瓦解しないことが・・・
吉田さんは「バカ野郎」発言で池田さんは「貧乏人は麦を食え」で辞職したのに、自民党議員の中で大臣たちが恥をさらしている事に、恥ずかしいと思う人がいないとは何たる堕落、政治家に骨が無くなっているのでしょうね。国民に全く目が向いていない内閣に私は不安を感じています。「この内閣反対」という旗を作ってデモをしたら「共謀罪」で牢屋にいれるつもりでしょうか。おおー怖!
【エムズの片割れより】
今日(2017/03/23)は、籠池国会喚問と、夜の外国特派員協会での記者会見をノンストップで、見てしまいました。(目が疲れた~~)
その辺りのテレビドラマよりもよっぽど面白い・・・
全編を通しての印象は、彼は自分の記憶によって誠実に答えている印象でした。記憶違いはあるかも知れないが、必死に・・・
回答にブレがないので、ウソは付いていないという印象。
それに引き替え、自民党や維新の質問の仕方は、警察の被告の尋問のようで、聞いていて不愉快でした。
政権は、全力を挙げて潰しにかかるでしょうが、開き直った喚問の言質が、今後どう展開するのか?
さてさて・・・
投稿: 白萩 | 2017年3月22日 (水) 21:24