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2017年2月24日 (金)

官製ワーキングプア~進む企業への丸投げ~竹信三恵子氏の話

電車に乗って出かける度に、カミさんが駅前のホームレスさんから買ってくる「ビッグイシュー」(ここ)。
そこにこんな記事があった。
進む企業への丸投げ 官製ワーキングプアは錬金術か
“安定した仕事”のイメージが強い公務員職。しかし、その多くは非常勤・非正規雇用の人々によって賄われている。労働者派遣法の改正により、状況の悪化が予想される「官製ワーキングプア」について、竹信三恵子さん(ジャーナリスト、和光大学教授)に話を聞いた。

非常勤職員2割、国の機関。厚労省は5割超
 ハローワークの窓口を訪れると、職員が専門知識を生かしながら、転職のアドバイスをしてくれる――。公共図書館で目当ての本が見つからないと、司書が他館から取り寄せる手続きをテキパキと行ってくれる――。そんなさまざまなサービスを提供してくれる彼・彼女たちは、実は、正規の職員でない可能性が高い。求職者の相談に乗っているハローワークの職員は、雇用契約が満了となれば、来月にもカウンターの向こう側で求職者として相談を受ける立場になっているかもしれないのだ。
170224takenobu  ここ10年ほどの間に、国家公務員や地方公務員などが、非常勤、非正規職員に置き変えられている。現在、国の行政機関で勤務している非常勤職員の数は7万人。全省庁スタッフの2割、厚生労働省に限れば、約5割が非常勤職員だという。さらに地方自治体などで働く嘱託、臨時、委託職員をあわせるとその数は数十万人にも上る。また自治労が2008年に行った全国調査によれば、地方自治体の非常勤職員は28%にのぼり、時給も900円未満が5割を超えているという。
 安定した雇用条件の下で働いているイメージが強い公務員の中に、非常勤で働く職員が増えており、働いても生活が立ちゆかない“ワーキングプア”状態を強いられている人々がいる――こうした状況は“官製ワーキングプア”と呼ばれている。
 和光大学現代人間学部教授で、新聞記者時代、“官製ワーキングプア”という言葉を最初に用いた竹信三恵子さんは次のように話す。
 「2000年代前半、非常勤職員として行政と直接契約を結んでいた公立図書館の司書の方たちから、『図書館運営を委託会社が一括して行うことになったので、解雇されてしまうかもしれない』と相談されたことが“官製ワーキングプア”の問題を知るきっかけでした」
 公務員の非正規化は小泉政権時代にさかのぼる。三位一体の構造改革の流れで、地方自治体への交付金が削減された結果、人件費を抑えようと公務員定数がどんどん削減されていったのだという。さらにこの状況に拍車をかけだのが、00年前半に吹き荒れた“公務員バッシング”の機運。財政がひっ迫する中、人件費を削減し、税負担を軽減させるべきと考える人が多数派であった。
 「最初に非常勤化されていったのが“ケア的公務”。介護、窓口対応、図書館の司書など、住民と直接接してお世話(ケア)する住民にはもっとも近い公務で、女性が担うことが多い仕事でした。一方、事務所の奥に座って決裁書類を回すような男らしい“決済的公務”だけが、常勤職員の仕事として残っているに近い状況です」
 特に年金の相談員やハローワークの職員など、住民から直接苦情を言われることが多い業務に非常勤スタッフが配置される事例が頻発しているという。
「現場スタッフが大変なことは言うまでもありませんが、その数さえ正確に把握されず、賃金は人件費でなく物件費から出されています。さらに住民に最も近い現場の業務を非常勤任せにしているため、住民のニーズが行政の意思決定に反映されない結果を生み出している」と竹信さんは指摘する。

公共サービスの有料化? 図書館、児童館などで利益出す企業
 さらに“官製ワーキングプア”を巡る状況は劣悪化、不可視化してきている。当初は自治体などと直接に雇用契約を結ぶ非常勤職員が多かったが、現在では、業務全体を企業などに委託し、委託された企業などが契約や派遣スタッフを雇用する形態が増えてきている。たとえば図書館運営や児童館運営などを丸ごと外部に丸投げしてしまうため、行政はその企業などと雇用契約を結ぶスタッフの労務管理を免れることができる。スタッフもまた行政に直接雇われているわけではないので、仕事上の改善策などを資金の出し手である行政に直に伝えることが難しいのだ。
 9月末、労働者派遣法が改正され、雇用の非正規化は進み、“官製ワーキングプア”の状況も深刻化することが予想されている。この状況が進むと、国全体は深刻な事態に陥ると竹信さんは警鐘を鳴らす。
 「派遣など不安定な働き手に公的サービスを担わせる度合いはさらに増え、行政サービスの劣化が進んで住民を支えきれなくなる恐れがあります。自死、餓死、孤独死する住民が増えるでしょう。グローバル化の中での雇用の不安定化、社会の貧困化、家族福祉の弱体化などにより、保育、介護、生活保護、就労相談など、公的なサービスの需要は急速に高まっています。仕事量は増える一方なのに、人件費は減る一方――その矛盾をすべて受け止めているのが、非正規公務員なのです」
 少子高齢化が進む中、今後ますます需要が増すことが予想される公的サービスを政府はどのように担っていくのか?
「公的サービスの有料化が進むのではないかと危惧しています。行政が企業などに業務委託することで誰が得をしているのか? 委託会社の利益を出すため、現場で働くスタッフの労働条件はどんどん切り下げられていきます。政府の仕事を企業が丸受けすることで大きな利益を得る。税金で企業の利益を膨らませる“錬金術”になっていくのではないか……」
 今、何が起ころうとしているのか。巨大な流れに対し、私たちは現実を見据え、抗っていかなければならない。(飯島裕子)

たけのぶ・みえこ
1953年生まれ。朝日新聞経済部記者、編集委員兼論説委員などを経て、11年から現職。「官製ワーキングプア研究会」理事。09年「貧困ジャーナリズム大賞」受賞」(「
ビッグイシュー」VOL.274 2015.11.1号p22より)

この記事が気になったのは、実はワケがある。我が家では、あるハローワークの窓口の女性職員さんに大変お世話になった。その人たちが次々に辞めていくのだ。その原因がここにあるかも・・・と分かったから。
詳細が省くが、最初にハローワークで相談したのが、2015年の9月末だった。実は、前任者が8月末で辞め、その後任者だった。しかし、話し始めると「前任者からきちっと引継ぎを受けていますから、大丈夫です」と力強く言われた。その通りに、色々と相談に乗ってもらい、目的は果たした。
その職員さんも、昨年の12月末で辞めたという。替わってから、1年半・・・・
なぜこうも簡単に辞めていくのか・・・

そう言えば、最初に会った時に、年配の男性職員から、何やら叱責を受けていたことを思い出した。その時は、ずいぶんキツイ上司だな・・・とカミさんと話したもの。
今思い出すと、あれは男性常勤職員と女性非正規職員、と考えると、合点が行く・・・。

年配の男性職員は、奥の方でふんぞり返っている。そして窓口の女性職員は、親身になって相談に乗ってくれる。しかし、直ぐに辞めて行く。たぶん、前任者も今回も、窓口の女性は非正規職員で、契約期間が終わったために、辞めていったのだろう。

生活保護や介護など、弱者への行政の窓口の人は、市民にとっては大切な人。それが、次々に交替させられていく。なぜ交替させられるのか分からないが、ふんぞり返っている正規職員への“媚び”が足りなかったのだろうか!?

我が家の役人への評価は厳しい。良くやってくれる人もいるが、窓口に行くと、極端な縦割りなのが気にくわない。うがった言い方をすると、前にも書いたが、“役所にいる人”のために仕事を割り振って、“全員が必要”とするために、隣の人の仕事に手を出さない。よって「担当者がいないので分からない」の連発・・・
今日も、ある用事で市役所の支所に行ったのだが、事務所に入ると職員の目が一斉にこちらを向くような気がした。何となく、全員がヒマそう・・・!?

「お世話になったな~」と思う人ほど、居なくなる。そんな役所の印象。
何か、やりきれない気持ちで読んだ記事ではある。

170224saiyou <付録>「ボケて(bokete)」より

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