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2017年1月29日 (日)

「米国大統領選挙~米国メディアの問題 露呈か」~池上彰氏の話

今日の読売新聞で、こんな記事を読んだ。先日の「トランプ大統領もあながち悪くない」?(ここ)という記事の続きである。
基調講演 米国大統領選挙を取材して~米国メディアの問題 露呈か
  ジャーナリスト 池上彰氏

 (昨年)11月の米国大統領選挙では、共和党のトランプ氏が勝利しました。厳密に言えば、ここで選ばれたのは大統領選挙人で、実際には選挙人投票が行われる12月19日の本選、1月6日の開票結果をもって正式決定です。
 当初、米国のメディアの多くは盛んに「ヒラリー氏優勢」と報道していました。確かに全米の総得票数ではヒラリー氏の方がトランプ氏よりも200万票多かったのですが、最終的に大統領選挙人の数でトランプ氏に軍配が上がりました。メディアの予測はなぜ外れてしまったのか、彼らがトランプ現象を分析し切れなかったのはなぜか―― ここに米国メディアが抱える問題があるように思います。
 私は10月にニューヨークで大統領選挙を取材し、その間は現地の報道にも注目していました。まず、テレビメディアの中立公正原則が撤廃されているため、ニュース専門放送局は局ごとに支持政党がはっきりしています。当然、報道内容も支持政党に偏りがちで、中立であろうと努めているCNNでさえ、報道の端々にトランプ不支持の姿勢がにじみ出ているように感じました。
 そしてニュース専門の局以外では、驚いたことに大統領選挙は少ししか報道されていませんでした。日本にいると全米が選挙に熱狂していると思いがちですが、実は投票率はそれほど高くなく、米国人全員が関心を持っているとは言えませんでした。
 では、新聞はどうでしょうか。影響力があるとされる3紙(ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト)は全国紙ではなく、ニューヨークやワシントンなどのローカル紙で、各街はいずれもヒラリー氏が所属する民主党の地盤です。これら新聞社は、全米ではなく地元で取材するわけですから、「ヒラリー優勢」という記事になるのは当然と言えるでしょう。日本で私たちが見ていた報道は、実はニューヨークやワシントンに住む人の視点に過ぎなかったのです。
 また、多くの人がインターネットから情報を得ていたことも一因と言えます。フェイスブック上にフェイクニュース(偽報)がたくさん流れていたことが後になって問題になりました。ネット上に流れる嘘や誤報を信じる人が多数現れたのです。
 英国オックスフォード大学出版局が選んだ2016年の英単語は「POST-TRUTH(真実よりその先)」。この言葉は、真実よりも人々が信じる嘘や誤報の方が重視される風潮を表現したものです。私は「トランプ現象」とは、まさにこれだったのではないかと思います。この風潮に対して既存メディアはどうあるべきか、私たちも共に考えていく必要があるでしょう。

いけがみ・あきら 慶應義塾大学経済学部卒。NHK入局後、社会部記者などを経て退職し、フリージャーナリストとして活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授。」(2017/01/29付「読売新聞」p6「第10回白鴎大学フォーラムin大手町」より)

ここで指摘されている大きなポイントが、2つある。一つが米国では「テレビメディアの中立公正原則が撤廃されている」ということ。もう一つが「影響力があるとされる3紙(ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト)は全国紙ではなく、ニューヨークやワシントンなどのローカル紙で、各街はいずれもヒラリー氏が所属する民主党の地盤」であるということ。
この事が分かると、これらのメディアの優勢報道と異なって「トランプ氏に軍配」が上がったことも理解出来る。

改めてwikiで「報道」の項を読んでみると、こうある。
報道の原則
報道は表現の自由に基づく、報道の自由や知る権利に支えられている。反面、報道は客観報道の原則を守らなければならないとされる。
報道は報道を受け取る大衆との信頼関係の上に成り立っている。 この為、報道は事実に基づいたものである必要があり、事実を追求するための取材が不可欠である。 憶測や推測に基づく記事は、信憑性が失われる原因となり、結果として信頼関係を失うこととなる。 取材をして裏付けを取り、事実を報道することが、報道の原則である。
よく、報道関係者が「真実を伝える」と発言することがあるが、これは原理的に誤りである。 なぜなら、ねつ造しない限り、事実はあくまで事実である。 だが、情報の送り手が真実を判断して、情報の受け手に伝えるということは、その時点で、情報の送り手側が事実に対して何らかの判断を下している可能性がある。 しかし、送り手側がどのような判断を行っているかを情報の受け手側は知りえない以上、この時点で原理的に報道の中立公正さが崩れているからである。 「報道は、事実をありのままに伝えること(事実を曲げないこと)」と言われるのは、この為である。
一方で日本における客観報道の定義は曖昧であり、客観報道そのものに疑問を呈する意見もある。客観報道の定義は人によって千差万別で、定まった合意がないからである。記者クラブが持つ問題点と併せ日本の報道機関の偏向報道体質はよく批判され、客観報道は空想でしかないとの意見もみられる。」
ここより)

つまり、日本で我々が目にしていた3大紙などの論調は、確かに“その地元”の「事実」は伝えていたが、自分などが勘違いしていた全国紙的な「真実」を伝えていたのでは無かった、ということか・・・。

幸いに日本では「放送法は4条で、事業者の番組編集につき、「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を義務として定めています。」とのことなので、いちおう安心!?
一方、新聞はそのような法律は無いため、各紙のスタンスはそれぞれ・・・

つまりは、我々は、幾つかの事実を伝えてくれる新聞や放送の報道を受けて、自分なりにその中から真実を見付けなければいけない。ということ。
何となく言われたことを無批判に信じてしまう自分など、まだまだ子供だな、と感じるこの頃ではある。

(関連記事)
「トランプ大統領もあながち悪くない」? 

170129nodokawaita <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

今まででしたら予備選の段階で淘汰されていた暴論を吐く候補が最後まで粘ったことで
普段だったら投票へ行かなかった(上から目線で失礼かもしれませんが)意識低い系の有権者の投票率が高かったのが大手メディアが予測を見誤った原因ではないでしょうか?
ヒラリーの言っていることは正しいのかもしれないけれど共感できない。
逆に言うとトランプの公約の実現可能性や、仮に実行したときのサイドエフェクトはよくわからないけれど言っいることは共感できるって層です。
長年、民主党が地盤だった州でひっくり返されたのが大きいですね。

代表的な世論調査の方法であるRDD方式そのものが
1.固定電話を持つ層とブルーカラーワーカー層の乖離
2.大手メディアの質問にいちいち答える層≠トランプ支持層
3.質問した媒体の論調・意向や誘導に影響される人間心理
という可能性もあります。

POST-TRUTH
正しいのかどうかよりも、そう信じたいことを言ってくれる人を信じたいってことですよね。

大手メディアも言うまでもなく誤報もするし偏向もあるでしょう。
しかし明らかに誤報なら訂正もしますし記名記事も多く見受けられます。
SNSのフェイクニュースに自浄作用はありません。
(そもそもフェイクなんだから)
今後さらに進化(かどうかわかりませんが)していくAIがユーザーの好みに合わせて心地よい情報だけを選んで表示していき、それを確証バイアスでより強化していくというスパイラルに陥っていくんでしょうね。

「鉄1kgと綿1kgは同じ重さだ」と主張する候補と
「鉄1kgの方が綿1kgより重い!」と主張する候補がいたとして
「だって鉄のほうが重いじゃん!」と思い込んで投票した有権者の方が多いと従わざるをえないのが多数派が常に正しい選択をするとは限らない民主主義の難しいところです。

投票数の絶対数ではヒラリーなのですがアメリカ大統領選の仕組みが選挙人争奪戦なので暫くはトランプで行くしかないのが難儀ですね。

【エムズの片割れより】
Netで見ていたら、「トランプは大統領になることが目的だったので、それを達成した今、せいぜい1年で大統領を投げ出す・・・」なんていう記事を見付けました。
まあこれも「そうなって欲しい」という願望的な予想でしょうが・・・

投稿: KTM350SX-F | 2017年1月31日 (火) 03:30

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