「八王子つばめ塾」~無料の学習塾
先日の朝日新聞の東京版に、こんな記事があった。
「(こどもの未来へ 学びやの挑戦)
NPO法人「八王子つばめ塾」 無料の学習塾、有志が支える/東京都
NPO法人「八王子つばめ塾」(八王子市)は、経済的余裕のない家庭の子を支援する無料の学習塾だ。
平日の夜。JR八王子駅近くの公共施設の一室で、16人の中学生が10人のボランティア講師と数学や英語の勉強をしていた。テキストの問題を解く子、学校の授業で分からなかったことを質問する子、都立高校入試の過去問題に挑戦する子……。それぞれの生徒を講師が個別に指導する。3月から通う市内の中2の女子生徒(14)は「普通の塾は授業料が高く、母がここを探してくれた。先生は分かるまで丁寧に教えてくれるので、テストの点数が上がった」。別の中2の女子生徒(14)は「分からないところを自由に質問できて、自分のペースで勉強できるのがいい」と話した。
■運営、すべて寄付
市内5カ所の教室に、中学生を中心に小6から高3まで約80人が週2回ほど通う。母子世帯ときょうだいが3人以上の多子世帯がほとんど。年収100万円に満たない家庭から、塾代を払うのは厳しいという家庭まで経済事情は様々だ。入塾に所得制限はなく、面接で各家庭の事情などを考慮して決まる。 約60人の講師はボランティアで、予備校講師や公務員、会社員、元教師、大学生などが務める。2012年の開塾以来、56人が高校受験し、約8割の生徒が第一志望校に合格。定時制や通信制高校も含め全員が進学を果たした。
自治体が事業者に委託し、経済的に厳しい家庭の子に無償で勉強を教える「学習支援事業」が広がっているが、つばめ塾は公的な委託や助成は受けず、すべて寄付で賄う。小宮位之(たかゆき)理事長(38)は「対象生徒を限定せず、臨機応変に必要な支援をするには税金を使わない方がいい」と説明する。
塾に通う交通費や模擬試験代、参考書代を捻出するのが難しい子には、塾独自の補助制度がある。おなかいっぱい食べられない子に米やスパゲティを配る支援も始めた。「寄付だからこそ、支援のアイデアを自由に実現できる。自治体の事情に左右されず、継続的に支援できる利点もある」と、小宮さんは話す。
■全国から視察も
小宮さん自身も貧しい家庭に育った。都立高校の学費が払えなくなり、奨学金で通った。大学の学費は祖父母が出してくれたが、最初の1カ月間は教科書が買えなかった。「進学にはお金がかかると身にしみてわかった」という。親が子どもの勉強を見る余裕がなく、塾にも通えない子たちが、せめて同じスタートラインに立てるようにと塾を立ち上げ、仕事は非常勤やアルバイトに切り替えた。
生徒数人で始めた塾は口コミなどで広まり、全国から視察もあるという。最近は無料塾立ち上げの支援も始めた。小宮さんは「お金を出せる人、勉強を教える人、場所を貸せる人など地域の人が協力する無料塾が全国にたくさんできるといい。そんな大人の背中を見て、将来、自分なりに人の役に立てる大人に育ってくれることを願っています」と話す。(斉藤純江)
■私の理想図 地域の寺子屋のように 小宮位之理事長
公共施設などを教室に使い、ボランティアが講師を務めれば、無料塾の運営にそれほどお金はかかりません。小さくてもいいから、地域の大人たちが教える寺子屋のような無料塾が、各地に増えるといい。勉強を軸に地域で子どもを支援できるのが理想です。」(2016/12/10付「朝日新聞」p24より)
前に「こども食堂」について何度か取り上げた(ここなど)。
貧困家庭の子どもたちに食事を、というベーシックな活動だが、“子どもの将来に平等なチャンスを”という視点からすると、上の記事の活動も重要だ。
高校への進学率を調べてみると、94%。そして通信制、定時制を入れると98%にもなるという。そのうち30%が私立高校。
お金に余裕がない家庭では、公立高校への進学が必須。そしてそのためには塾通いが必要となる。でもお金が・・・
裕福な家庭ほど、塾などにお金をかけることができ、良い高校、良い大学に進学していることは実績が示している。つまり、子ども達に平等なチャンスは与えられていない。家庭次第なのである。
そんな視点で考えると、このボランティア活動は素晴らしい。どれだけたくさんの子どもたちの人生に、好影響を与えているか・・・
前に同じような活動をテレビで見たことがある。講師は何とか子どもを高校に入れようと必死だが、肝心の子どもが何らかの理由で、塾に来なくなる。そうなると、講師も手が無くなる・・・・。そんな苦労のドキュメンタリーだった。
この記事を読むと、理事長が38歳とある。若い・・・。普通は、時間に余裕があるリタイア後の人が中心になるような気がするが、HP(ここ)を見ても、この塾は若い人が中心らしい。つまりは、老後の時間潰しの活動ではなく、本格的な活動のようだ。
しかも、自由に活動するため、寄付が主とのこと・・・
思い起こすと自分も、学生時代のバイトの家庭教師に始まり、サラリーマン時代にも講師は色々とやった。そう言えば、息子の中学受験では、つきっきりで教えたこともあった。その時は、方程式を使わない算数の応用問題が新鮮だったっけ・・・。
子どもたちも、高校受験に合格した成功体験を持つことと、失敗してヤケになり、中学卒で終わるのとでは、その後の人生に雲泥の差が出る。
そんな子どもの未来のために、金と時間とに余裕がある我々団塊世代のリタイア組が多く支援することも、また意味のある時間の使い方かも知れない。(もっとも、塾の講師の“資格試験?”に合格しての話だが・・・)
そのうち、自分も応募してみようかな・・・
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コメント
おはようございます。
よいお話ですね。
志の高い人たちが親の資力に影響される子供たちに手を差し伸べる「無私の奉仕」胸が熱くなります。エムズの片割れ様もご自分の資質を生かすよいチャンスにぜひ挑戦なさってください。親の資力の為に夢も希望もあきらめざるを得ない状況がなくなればいいですね。
酒飲みの父親の下、7人兄弟の長兄は明晰な頭脳ながら義務教育も農作業に駆り出され形のみの卒業。農業に従事して私たち弟妹の高校進学を適えてくれました。つかの間の僥倖は20数年前に 長兄の息子と次兄の息子(関西)が東西の双璧の大学に合格したことです。特に実家では貧しく、一切の通信教育も塾も家庭教師とも無縁、裸一貫で(たとえが適切か?)赤門合格。のみならず、高校の勉強を知らない兄は
「勉強は学校の授業と教科書だけで十分」の説を曲げず184センチの息子と(160そこそこ)で取っ組み合いのけんかを繰り広げるさまでした。「ひどい親だ!勉強して怒られるなんて」もっとも184センチの息子の方で手加減をしていたはず。しかし実家の場合は特異、例外中の例外。
無料塾が増えるのは望ましい事です。
【エムズの片割れより】
やはり血統はあるのですね。「長兄の明晰な頭脳」が息子さんに受け継がれて・・・
昔、息子が日能研という塾に入った時、講師から「親が赤門でない場合、ほとんど100%赤門はムリ」と言われたことを思い出します。
教育においては、金銭は、最低限のチャンスは与えてくれますが、それ以上は本人の努力と血統。
人生、終わってみて、何が正解か・・・。学歴もチャンスは与えてくれますが、長い人生から見ると、些細なことかも・・・
しかし、まだ何もしていない若い時期に、中卒という烙印を押されてしまうのは、あまりにも哀しいので、無料塾は意味があると思います。
投稿: りんご | 2016年12月13日 (火) 09:23