「3.9+5.1=9.0」は減点~小学校算数の奇習
このような理不尽な話は、どうしても許せない。怒りが湧く。
今朝(2016/11/29)のテレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」。「ショーアップ」のコーナーで「大論争 算数のテスト“減点”に異論 一方で教師の苦悩も」というテーマが“論じられて”いた。 3.9+5.1=9.0は正解ではなく、減点対象だという。何と「.0」に斜線を引き、「9」が正解だという。この話に疑問を感じた大人がツイッターに投稿したところ、ネット上で大論争になっているという。「何とバカな」を思っても、なかなか奥が深い話らしい。
番組では玉川さんが大反論をしていたが、現場にいたアナやコメンテーターも、若手は「そう学校で教わった」とのこと。
そして驚くのは、街中で取材すると、小学生はすべて「9」と解答するのである。確かに、学校教育は子供に浸透している・・・。
「有効桁数」の概念を踏み潰して、“間違ったこと”を教えているのに・・・。
番組でも、玉川さんが有効桁数を指摘するが、「それは数学の話で、ここは算数の話」と言われてしまう。
番組で、数学検定協会に聞くと、「9.0でも9でも正解」との回答。
番組が言うには、「小学3年生の教科書の中では、“9.0”の“0”の部分に斜線をして“9”とすると表記されている」とのこと。
そして、減点した理由は、「小学3年生で初めて小数点に出会う。9.0が9と同じ値だということが分からない児童がいる。だから9.0が出て来たら9と同じなんだから0を消して分かり易くしようね、と教えている。」とか・・・。
現役小学校教師の「教えたことをやっていないから減点にしたのではないか」という指摘や、「ルールは守りましょう」ということで減点しているのでは?という話がホントウなら、いやはや怖ろしい・・・。
「100点取った人間が必ず優秀とは限らない」のに・・・
この話をググってみると、確かにツイッターでの話がキッカケらしい。
@kennel_orgさんの「姪っ子の小3算数テストの採点結果。.0の有効数字に意味があるというのに全く訳がわからない。」という投稿(ここ)。
この話に、茂木健一郎氏がblogにこう書いている。
「小学校の算数にまかり通っている「奇習」は、子どもたちに対する「虐待」である
2016/11/20 08:14
昨日、小学校の算数のテストで、「3.9+5.1=9.0」と書いたら、減点されたというツイートが流れてきて、とてもびっくりした。これははっきり言って一種の子どもに対する「虐待」である。これ以外にも、小学校の算数には謎の奇習があると聞く。
かけ算の順序、足し算の順序、という「問題」があって、2×3=6は正解だが、3×2=6は不正解、同じように2+3=5は正解だが、3+2=5は不正解、という「世界」があるのだという。詳細はアホらしいので書かないが、もし興味がある方は検索してみて欲しい。
数学的には、かけ算の順序や足し算の順序などは、どちらでもいいことはトリビアルな問題で、つまりは自然言語の世界と数式の世界をどのようにマッピングするか、ということで、そんなもん、どんなマッピングが良いかは趣味の問題で一つの型を押し付けることではない。
ある程度数学がわかっている人にとっては、「小数点問題」「かけ算の順序」「たし算の順序」問題はトリビアルに意味がないから「瞬殺」の話し(議論する必要すらない)であるが、小学校の算数で、そのような奇習がまかり通っていることは国の恥と言うべきことだろう。
問題は、瞬殺されるような間違いを、現場の先生方の一部、さらに驚くことには教科書会社の一部が子どもたちに強制しているということで、本当はMen In Blackのフラッシュライトのように「はい、こっち見てください」と呼びかけて瞬間修正したいところだが、世の中は不自由にできている。
小学校算数の奇習が一部でまかり通っている現状を改善するには、そんなもん、一瞬たりとも意味がない、という観念、情報を、折りに触れ拡散する必要があるだろうし、また、文科省にも、きちんとした対応をとっていただきたいと思う今日この頃である。
ふしぎに思うのは、ぼくが小学生の頃は、「小数点」「かけ算の順序」「たし算の順序」といった問題は経験した記憶がないということで、いつからそんな奇習が小学算数の一部に広がってしまったのだろう。もしそんなものがあったら、小学生のぼくはかなり深刻な大人不信になっていたと思う。
いずれにせよ、小学校の算数において、奇妙な「正解」を押し付けるのは、子どもの精神に対する虐待であり、許されることではない。そのような、数学的にトリビアルな奇習を押し付けている小学校教育界の「権威」(笑)の人たちは、自分たちの愚鈍を恥じ、反省し、改めて欲しいと思う。」(ここより)
茂木氏は「奇習」と切って捨てたが、どっこい、教育現場ではこの奇習が押し付けられている。その背景は何か?
オリジナルのリツイート(ここ)を読むと色々な考え方があるようである。このリツイートの中に、教科書会社の東京書籍の“見解”があるというので、読んでみた。
「Q12 3下p.12 の問題6①「1.2+2.8」の筆算において,答え4.0の「0」のみを斜線で消し,小数点は残したままにしている理由を教えてください。
筆算について,正式な基準や方法が定められているわけではなく,児童の実態などに応じて柔軟にご対応いただいて差し支えないと考えています。要は,「答えは4である」ととらえることができればよいのであって,例えば,「斜線を用いて0を消去していないから誤りである」とか,「小数点を斜線で消去したから誤りである」などといったことは全く意図していません。
以下,3年下巻12ページ問題6①の小数の加法の筆算で,小数点以下の計算結果が「0」になる場合の,斜線を用いた消去の教科書上の表現の意図について説明します。
まず,末位の「0」について斜線で消去していることについて述べます。
筆算の手続きに従って計算すると,結果は4.0となります。ここでは,有効数字については考えませんので,4.0と4は同義であり,児童にとっても,筆算から得られた「4.0」から,「答えは4」とするのが自然です。「0」をそのまま残した場合,「小数の計算において,小数点以下が『0』になるときには,4.0と答えなければならない」との誤解が生じる可能性,また,小数点があることを忘れ,「答えは40」という誤答が生じる可能性に配慮し,0を斜線で消去することとしました。
次に,小数点について,斜線で消去せず,そのままにしていることについて説明します。
小数点を斜線で消去することのメリットについては,例えば,
(1) 答えは4であることから「0」を斜線で消したのだから,小数点も斜線で消すことが児童にとっては自然であるということ
(2) 「答え 4.」のような誤答が生じる可能性に配慮すること
などのことが考えられます。しかし,0を斜線で消去し,答えは4であることをとらえたならば, (2)のような誤答が生じる可能性は低いと考えます。また,(1)については,誤答や誤解が生じるというレベルのことではないことから,結果として,小数点を斜線で消去する必要性はあまり感じられないと判断しました。
以上のように,筆算には正式な基準や方法が定められているわけではありません。教科書紙面は,上述のような考え方に基づいて扱っていますが,斜線を用いた消去の表現について児童から疑問が出された場合には,その内容に応じて柔軟に対応していただくのがよいと考えます。」(東京書籍のHPここより)
正直、読んでも良く分からなかった。つまり、胸にスッと入ってこない。しかし、「0を斜線で消去することとしました。」という記述から、この問題は“教科書会社が決めた”ルールのようだ。
全ての教科書が同じように書いているかどうかは分からない。しかし、それよりも、「有効数字」を習った後は「9.0」が正解で「9」は不正解、というまったく逆のことが生じることが明白なこの話。
この教科書会社の暴論?を、教科書検定している文科省はどう考えるのだろう?
そしてもっと怖ろしいのは、「教えたことをやっていないから減点」や「ルールは守りましょう」という視点での減点だとすれば、まさに「子どもの精神に対する虐待」であり、独裁国家の洗脳教育になってしまう。
いやはや怖ろしい国、ニッポン!
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