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2016年10月16日 (日)

幼児虐待の悲劇

今朝、カミさんが新聞を広げた・・・と思ったら、泣いている。ビックリして聞くと、幼児虐待の記事を読んで、「かわいそうで・・」と。
我が家にも同じような年頃の孫の女の子がいるので・・・

「(小さないのち)奪われる未来:1 届かなかった、なっちゃんのサイン
 重大な虐待事件が起きると、自治体は再発防止のために「検証報告書」をつくる。だが教訓は生かされず、似たような事件が各地で繰り返されている。

 ■顔にあざ/家を出され7キロ歩く
 「ばあちゃん、ばあちゃん」。なっちゃんと呼ばれていた当時4歳の女の子が照れるように玄関に立っているのを見て、祖母(63)は驚いた。兵庫県三田市の自宅から祖母の家まで7キロの道を一人で歩いてきた。2009年春のことだ。
161016youji  なっちゃんは継母から「どこでも好きなところに行け」と言われたという。祖母は「小さな子を一人で出してどういうことだ」と思い、虐待の疑いがあるとして、市に相談した。
 なっちゃんは2歳の時に実母を病気で亡くし、しばらく祖父母に預けられていたが、父親の再婚を機に、父と継母のもとで暮らすようになっていた。
 親族や自治体への取材、裁判記録、県の検証報告書などによると、なっちゃんは何度も虐待の「サイン」を発していた。
 09年夏、なっちゃんのほおにたたかれた痕があるのに幼稚園が気づいた。虐待があったとして、県が管轄する児童相談所(児相)が一時保護したが、1カ月ほどで自宅に戻した。預かり時間が長い保育所に通わせて継母の育児の負担を軽くし、見守ることにした。
 その保育所も、顔などのあざや傷に3度気づいたが、日常で起こったけがだと判断し、すぐに市に知らせなかった。
 そして09年11月、なっちゃんは自宅で倒れて病院に運ばれ、5日後に亡くなった。5年と3カ月の命だった。死因は急性硬膜下血腫による脳機能障害。継母は暴行を否定したが、裁判では頭に強い衝撃を加える暴行があったと認定された。
 翌10年、県の児童虐待防止委員会が事件の検証報告書をまとめた。なっちゃんのあざや傷などの情報が市や児相に十分に伝わっていなかったとして「どんな小さなけがでも市や児相は保育所から正確な情報提供を求める必要がある」などと指摘した。
 だが、虐待の疑いがあると真っ先に市に相談していた祖母は、県から事情を聴かれることはなかった。祖母はさまざまな異変に気づき、幼稚園にも「変わったことがあれば教えてほしい」と見守りをお願いしていた。報告書はこうした経緯には触れていない。
 祖母が暮らすマンションの部屋には、なっちゃんの写真が並ぶ。「SOSを出していたのに、周りの大人たちが救えなかった。何が起きていたのか報告書で丁寧に検証してほしかった」
 報告書がつくられて1年もたたない11年6月、同じ兵庫県の姫路市で、保育所や行政の連携不足が指摘される事件が起きた。2歳の男の子が母親の交際相手に転ばされたうえ、上半身を強く揺さぶられて意識不明の重体になった。このときも、男の子が通っていた保育所が頭や足のけがの痕に3回気づいていたが、防ぐことはできなかった。

 ■情報共有課題、やまぬ虐待
 虐待事件の検証が十分に生かされていない。福岡市では09年、生後7カ月の男児が育児放棄(ネグレクト)で亡くなった。男児は乳幼児健診を受けておらず、家庭訪問でも会えていなかった。これを教訓に市は、未受診の家庭を保健師が訪問し、原則2度会えなければ情報を他の関係部署とも共有して対応するなどのルールをつくった。
 こうした改善策は全国に広がらず、未受診の子が被害に遭う事件はその後も続いた。11年に、健診に来なくなった青森県の6歳男児が父親の暴行で死亡。県は13年、未受診の子の情報収集を強化するよう市町村に呼びかけた。
 神奈川県厚木市でも14年、同じように健診を受けなくなった男児が白骨化した遺体で見つかった。父親のネグレクトで5歳ごろ死亡し、7年以上たっていた。
 一方、検証の教訓が、情報共有の新たな仕組みに生かされたケースもある。
 和歌山県で13年、父親が2歳の男児に暴行を加え死亡させた事件。父親は11年にも男児への傷害容疑で逮捕され、男児は児相に保護された後、乳児院に移されていた。だが父親が不起訴処分になった約1年半後、児相は親子関係が良くなったとみて親元に戻した。事件はその直後に起きた。
 和歌山地検は11年の事件について、「常習的に行った証拠がない」として不起訴(起訴猶予)にしていたが、児相は「虐待の事実が明らかでない」と誤って判断していた。児相は地検に理由を聞いておらず、検証報告書では「児相が適切な判断を行うには捜査情報などを得ることが望ましい」と指摘された。
 これを受け、県は法務省に虐待防止のために捜査情報を児相に提供するよう要望。同省は14年、児童虐待事件に関する捜査の経緯や不起訴処分の理由などを児相に情報提供するよう全国の検察に通知した。(五十嵐聖士郎、山本奈朱香)」(
2016/10/16付「朝日新聞」p39より)

何とも痛ましい。その他の事例も記事にある。

「(小さないのち)虐待から救うために 検証報告書187件分析
 ■死亡・重体例、大半に兆候
 「おじさんが弟を殴ったり蹴ったりした」。三重県の中学生の姉が学校で担任に告げた。
 小学1年の弟への虐待の疑いがあるとみて、その夜、学校から連絡を受けた児童相談所(児相)の職員と警察官3人が家に向かった。布団で寝ている弟の姿を玄関から見て、その場を離れた。翌朝、弟が意識不明になっていると姉が110番通報した。
 弟は児相職員が訪れた日の午前、姉が「おじさん」と呼ぶ母親の交際相手の男から激しい暴行を受けていた。男は逮捕され、弟には重い障害が残った。
 事件から半年後の2010年秋、三重県は「検証報告書」をまとめた。事件の数カ月前から弟の腕の傷痕や、姉が顔面を腫らして登校するなどのサインがありながら、一時保護などの対応が取られず、虐待を止められなかった経緯が書かれている。
 報告書では「訪問から救出までの約12時間が持つ医学的意味は小さくない」と、児相職員らが訪問時に異変に気づけなかったことで、弟の症状が悪化した可能性を示唆している。ただ、なぜ弟の安全を直接確認せずにその場を離れたのか、などの詳しい分析までは書かれていない。
 弟は今、12歳になった。障害児施設で寝たきりの生活を送っている。
    *
 死亡や重体など重大な児童虐待187事例について、全国の自治体が09年4月~16年9月に作成した検証報告書を朝日新聞が集め、専門家の助言を受けながら分析した。報告書161016gyakutai の多くは公表されているが、非公表のものは情報公開請求などで取り寄せた。
 その結果、自治体や児相などが事前に虐待の兆候をつかんでいたケースが144件あり、その4割超の64件で「家庭訪問したのに子どもに会っていない」「電話だけで訪問せず」など、虐待を受けていないかどうかの確認の不十分さが指摘されていた。
 連携不足も指摘されている。自治体内で生活保護担当の職員は虐待の当事者の親子に会っていたのに虐待担当は会えていなかったり、虐待のリスクが転居先の自治体に伝わらなかったりと、行政内の連携不足は全体(187件)のうち114件にのぼった。
 病院や学校、幼稚園などが子どものあざなどに気づいていたのに、県などが管轄する児童相談所に連絡がないなど、関係機関どうしの連携不足の指摘も全体のうち72件あった。
 「児相の専門性が乏しかった」「マンパワー不足」などの指摘も目立った。
 187事例で死亡した被害児童は少なくとも172人(年齢不明の11人含む)。児童虐待防止法では「心身に著しく重大な被害を受けた事例の分析」を自治体に求めている。厚生労働省の統計では09~13年度に虐待で亡くなった子どもは444人で、死亡事例だけみても半数超が検証されていない。

 ■<解説>教訓生かす仕組みを
 187の検証報告書を読み込むと、それぞれの虐待の経緯や防げなかった背景がある程度は分かる。だが、検証の教訓が生かされないまま各地で似たような虐待が起きており、再発防止のための検証制度が十分に機能していない現実も浮かび上がってきた。
 厚労省は11年、「死亡事例のすべてを検証することが望ましい」と自治体に通知した。ただ強制力はなく、通知後も過半の事例で報告書が作られていない。自治体側は「行政が関わっていなかった事例は検証が困難」「件数が多く、絞り込んでいる」などと説明する。
 検証の中身も十分とは言えない。遺族や子どもに関わった当事者から直接話を聞けていないケースも多い。自治体の検証に加わった岩城正光弁護士は「行政が出す情報が全然足りなかった。検証を生かそうという気持ちもない」と話す。
 教訓が広がらない実態もある。検証を受けて虐待防止の仕組みを改善した自治体があっても、ほかの自治体がそれを知らず、虐待が起きるとまた同じような報告書が作られている。
 国の虐待検証作業にかつて携わり、今回、朝日新聞の分析に協力した宮本信也・筑波大副学長は「関係者がどの時点でどう対応すれば死を防げたか、という観点で検証されるべきだ。良い対策については国が情報を集め、広げる必要がある」と話している。(座小田英史、片山健志、五十嵐聖士郎)

 ◆キーワード
 <児童虐待> 厚生労働省の最新の統計では、2014年度に虐待で亡くなった18歳未満の子どもは71人。5日に1人のペースだ。身体的虐待や育児放棄などが44人、無理心中が27人だった。虐待の可能性があっても証拠不十分だったり死因不詳だったりして事件にならず、国が把握していない死亡例が多いとの専門家の指摘もある。
 ◇子どもの命を見つめる企画「小さないのち」の新たなシリーズでは、虐待問題を伝えていきます。子どもたちが健やかに生きられる社会に向けて、私たちに何ができるのかを考えます。」(
2016/10/16付「朝日新聞」p1 より)

役所・・・。我が家では、役所に対して、あまり良い感情は持っていない。
連日テレビを賑わしている小池都知事の指示に対する都のお役人のお粗末な対応だけではない。身近な市役所の対応ひとつ見ても、極端な縦割り組織による非効率の仕事の分担に、辟易する。
何かを問い合わせても「**は**の担当だが、今居ないので分からない」。つまり、同じ仕事を、何人かで担当し、一人が居なくても分かる仕組みになっていない。仕事を細かく切り分け、一人ひとりが細かな仕事を分け合うことで、「余分な人間は一人も居ないぞ」という仕組みをわざわざ作っている。企業のように、「最初に仕事があって、それをこなす為に組織があり、その組織を運営するために人が居る」という流れではなく、「まず人が居て、その人を食わせるために組織を作り、その組織が必要とされるために仕事を作る」という逆の流れになっている。まさに税金の無駄遣い。

そして事件が起こると、一斉に責任回避に逃げる。
先日、新しいテレビドラマ「とげ〜小市民 倉永晴之の逆襲〜」(フジテレビ)を少し見たが、このお役所体質は、志村喬「生きる」の時代と全く変わっていない。
しかしこの幼児虐待に関しては、人の命に関わる。つまり、役所の「やり過ぎ」は無いのである。10やり過ぎても、それで1の命が救えれば、それが成果。しかし、上の記事のように、自治体間の連携は無く、再発防止策はその場しのぎで、横には活かされず、次々に幼児の命が消えて行く。それに対して、行政はまるで他人事・・・
(前にカミさんが本当に世話になった市役所の人がいた。そんな人も居る。しかしその貴重な人は、人事異動でどこかに飛ばされてしまった。“出る杭”だったのかも・・・)

もちろん子どもの親の問題が最大。しかしこちらは、幾ら周囲が対策をしても、親になる資格が無い人間も親になってしまう。結果、命は生まれてしまう。だから子の命を救う手立てが必要。

人の命に関わる行政の仕事については、それこそ第三者機関が事件をキチンと検証し、それを公表して、もし瑕疵があった場合は責任者に罰則を与えることが出来ないものだろうか?それ位の緊張感が必要では?
都の税金の使い方を見ても、無駄遣いは目に余る。
「税金でぬくぬく給料を貰っているのだから、人の命に関することくらいはマジメに仕事をしろよ!」とつい言いたくなる。
この朝日の連載が、少しでも社会を動かす事を祈りたい。

あまりに悲しい幼児虐待の現場ではある。

161016akann <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

エムズの片割れ様

私も奥様同様に胸が潰れそうです。

投稿: りんご | 2016年10月17日 (月) 12:00

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