原発ゴミを10万年間国が管理?
少し古いが、朝日新聞にこんな記事があった。
「(いちからわかる!)原発ゴミを10万年間国が管理するんだって?
■放射能レベルが高い物を深く埋める。コストは未知数だ
コブク郎 原発のゴミは10万年間、管理すると国が決めたんだって?
A 廃炉になった原発を解体するときに出る制御棒などの廃棄物は放射能レベルが高い。放射能が半分になるまでに2万4千年もかかるプルトニウム239などを含んでいる。健康に影響を与えないレベルまで下がるのに10万年はかかるんだ。原発1基あたり100~200トンほど出る。
コ どう処分するの?
A 地震や火山、海の浸食などの影響を受けにくい場所を電力会社が選び、70メートルより深い岩盤にコンクリートなどで覆って埋める。 コ 誰が管理するの?
A 放射能レベルが高い最初の300~400年間は電力会社。放射能漏れがないかチェックする。会社が倒産して放置されないよう、国は電力会社にお金を積み立てさせることも考えている。その後は国が引きつぎ、立ち入りや掘削ができないような対策をする。
コ もっと放射能レベルの高いゴミもあるの?
A 使用済みの核燃料から出る廃液などはさらに放射能が強い。ガラスで固めて10万年間、地下300メートルより深く埋める。処分地選びから国が関わっている。
コ 10万年は長いね。
A 数千年を超える管理が国際的な標準だ。今から10万年前というと、現人類がアフリカから世界に広がり始める前だ。10万年後、文字や言葉も変わっているかもしれない。欧米では、危ないゴミが埋まっている目印として石碑に各国の言葉や絵文字、数式などを刻むことが検討されている。
コ それでも原発を使うのは安いからだよね?
A 原発は安定して発電でき、コストが最も安いとされる。ただ、新設した原発でも稼働できるのは最長60年。廃炉後は長い期間、廃棄物を管理しなければならず、それらも含めると本当に安いのか、正確には分からない。(杉本崇)」(2016/09/21付「朝日新聞」p2より)
そして今朝の朝日新聞の「耕論」に「国家10万年の計」という記事があった。それぞれの立場の人からこんな意見が・・・
「(耕論)「国家10万年の計」
原発のごみを10万年間、国が管理するという。原子力規制委員会が基本方針を示した。10万年前はネアンデルタール人がいた時代。この途方もない年月をどう考えればいいのか。
■原発ごみ、隔離し安全確保 杤山修さん(原子力安全研究協会技術顧問)
「10万年の管理」という言葉が、誤解を招かないか心配しています。実際の処分は、人の管理の手を離れても安全が確保できるようにするのが基本的な考え方です。人の生活環境から離れた地下深くに隔離し、閉じ込めるのです。
電力会社などの組織が続くのはせいぜい数百年でしょう。いつまでも管理し続けると言っても、空約束にならざるを得ません。だから、数百年を超えて危険が残るものは、人の手による管理が不要になるようにします。
原子炉内の廃棄物は地下70メートルより深く、使用済み燃料から生じる高レベル放射性廃棄物は300メートルより深くに埋め、坑道も閉鎖します。普通は人が近づきませんが、将来、誰かが偶然にボーリングで掘ってしまうことも絶対ないとはいえません。そこで国が続く限り、掘削などを制度で制限していくべきだというのが原子力規制委員会が求める国の「管理」です。
かつては様々な処分法が検討されました。宇宙への処分は、打ち上げに失敗したら廃棄物がまき散らされ、費用もかかります。海底に捨てれば海を汚すかも知れません。地下への処分が国際的に妥当とされています。変化が激しい地表に比べ地下深くは安定しています。酸素が少なく地下水もほとんど動きません。人工の閉じ込め機能が損なわれても、こうした天然の閉じ込める仕組みで地表に放射性物質が届かないようにします。
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10万年は地球の歴史でみれば短い時間です。プレート(岩板)が沈み込み、地震や火山活動が活発な日本列島で、地下に処分できるかという声もありますが、活断層や火山がある場所を避け、具体的に検討していけば処分に適した場所はあると考えます。・・・
■人の姿、劇的に変わり得る 海部陽介さん(人類進化学者)
10万年という時間にどれくらい意味があるかは生物ごとに異なります。たとえばチンパンジーは、過去10万年それほど大きく変化していないと考えられます。しかし、人類にとっては、非常に劇的な時間でした。ホモ・サピエンスが生まれ、進化して、今にいたるまでのほとんどが10万年の中に詰められています。
アフリカ大陸に現れたホモ・サピエンスが、現生人類と同じような存在になったのは10万~15万年前と考えられます。地球規模に広がったのはこの5万年の間です。日本列島には3万8千年前に到達しました。10万年前は、ヨーロッパには僕らの直接の祖先ではないネアンデルタール人が、インドネシアにはジャワ原人がいました。そういう原始的な、しかも多様な人類がいた時代です。
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次の10万年がどうなるかはまったく分かりません。何しろ人間はこの10万年間ですっかり変わりましたから。生物学的な存在としては変わっていませんが、自らをとりまく環境を激変させました。医学が発達しましたし、豊かになったのに子どもを産まなくなりました。もはやダーウィンの自然選択論をも超越しており、普通の生物が経験している進化のルールが当てはまりにくくなっています。むしろ、遺伝子操作やサイボーグの技術で自らを変えるかもしれません。・・・・
■託されるのは「誰」なのか 小川一水さん(小説家)
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とはいえ、実際は10万年といったら日本列島の形が変わるほどの時間です。議論している方々が百も承知のことでしょうが、生き物も変わるし、人類がいまと同じ姿とも限らない。ですから放射性廃棄物を10万年管理するという話は、現実的には意味はありません。この問題がわれわれのものだと言える期間は長くて数百年でしょう。
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日本にある高レベル放射性廃棄物をガラス固化体にすると、2020年までの分で4万個、2万トンほどの量になると言われます。大型カーフェリー1隻分です。単純に「どこかに2万トンの船を置く」と考えれば、ことは小さな問題になってしまいます。ですが、生身の人間にとっては非常に大きな量です。その船が及ぼす影響も無限に広げて考えられるでしょう。形の異なる想像力がぶつかりあって問題を形成しています。
整理した方がいいのは、放射性廃棄物を管理する「われわれ」とは何か、それを誰に向けて管理するのかという問題です。千年後にある国土、政府、そして人間は、「われわれ」でしょうか。私たち日本人は、自国の過去と未来、自分とその周りの環境を、一体になった「われわれ」だと捉えようとしますが、その形は常に変化し、周辺は他のものと混じり合っています。私たちが影響を与える相手は、私たち以外の誰かであることを忘れてはなりません。
放射能を帯びたごみを千年後に管理しているのは私たちではありません。それは忘れてよいものではなく、誰かに渡すものになります。私たちが考えるべきなのは「その方法で他人に渡せるのか」だと思います。」(2016/10/12付「朝日新聞」p15より)
前にテレビで、スウェーデンの地下最終処分場のドキュメンタリーを見たことがある。既にトンネルを掘って、10万年後の人類のことまで検討していた。(参考ここ)
それにしても、遠大な話だ。
宇宙に持って行くのが最も分かり易いが、確かに「宇宙への処分は、打ち上げに失敗したら廃棄物がまき散らされ、費用もかかります。」
ちなみに、試算してみた。
今日本が持っているロケットで、一番大きいのは、H2A204型で、低軌道(LEO)=高度300 kmに、15トンの衛星を上げることが出来るそうだ。すると、2万トン÷15トン=1,330回・・・。ひと声、1回100億円かかるとすると、13兆円。
福島原発の廃炉費用が8兆円とか言っていたので、そう手の届かないお金でもない。
しかし、打上失敗を前提とするので、どこかインド洋や太平洋の真ん中に人工島を作って、そこから打上??これもSF・・・
しかし、上のスウェーデンの記事で、『ここは地下420m、人が運ぶことができない高レベル廃棄物を遠隔操作で運ぶための車両の開発が行われています』という文字を見ると、これも不安をかき立てる。
長いトンネルを、全て遠隔操作で、ちゃんと動くのかどうか。もしトンネルの途中で運搬車が故障して立ち往生したら、トンネルがふさがってにっちもさっちも・・・。誰が直しに行く?
機械は必ず故障する。
つまり、どう考えても、原子力は人知の及ばない領域。人間が御せる対象ではない、ということ。
では“人類のエネルギー問題”はどうする??
10万年という、日本に人類が到達(3.8万年前)してからの3倍もの時間単位で考えるのだとしたら、幾らでも知恵は出ると思うのだが・・・
そして、先ずは、これ以上の核のゴミを増やさないことが先決では?
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コメント
地球があとどのくらいこの宇宙に存在できるのかわかりませんが、ブラックホールに吸い込まれる前に、人は人類を破滅させるような気がします。原子の核が発見されてから破滅の危機は急速な勢いで進んでいるように私には思えるのです。安全にといっても人間の脳には善と悪とが存在しています。そのうち核よりもっと恐ろしいものが出来るのかもしれません。地球最後の日はいつか。死に絶えた地球は不気味なほど静かでしょうね。愚かなる人間!!
投稿: 白萩 | 2016年10月16日 (日) 13:12