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2016年9月22日 (木)

「改憲派から護憲派へ3点質問」~その2

先日(ここ)の続きである。
念のため、「問い」を再掲しておきます。

「(声 どう思いますか)8月11日付掲載の投稿「改憲派から護憲派へ3点質問」
 ■(声)改憲派から護憲派へ3点質問
 無職(愛知県 83)
 参院選の結果、憲法改正の議論が本格化しそうです。しかし、これまでの議論は改憲派と護憲派の意見がかみ合わないまま推移し、今日に至っているのではないでしょうか。
 この状況を改めるには、両派の間で質問と回答を重ねる議論が必要と考えます。「声」欄でやりとりができれば、多くの人に憲法について考えてもらえるのではないでしょうか。
 そこでまず、改憲派の私から護憲派のみなさんに質問させていただきます。
 (1)戦争放棄や戦力の不保持が9条に定められているが、それだけで日本は戦争を仕掛けられたり戦争に巻き込まれたりしないという根拠はあるか。
 (2)改憲派の「日本が第2次大戦後、戦争をせずにこられたのは、日米安保体制や自衛隊の存在のおかげ」という意見をどう思うか。この考えを否定されるなら、日本が平和を維持できた理由をどう考えているか。
 (3)日本の近隣には核武装を進める北朝鮮や、南シナ海や東シナ海で覇権をうかがう中国がいる。こうした国々の覇権主義的な行動を止めるには、対話のほか、抑止力として一定の軍事力も必要ではないのか。
 この3点について、ぜひ護憲派の方々のご意見を伺いたい。 (2016年8月11日付「朝日新聞」(声)より)」

2週目の今回は、こんな回答が載っていた。

「(声 どう思いますか)「改憲派から3点質問」 反響続々、逆質問も
 ■「ハト」の政策手段に知恵出そう
    無職 男性(東京都 84)
 「改憲派から護憲派へ3点質問」(8月11日)を拝見した。それぞれの点にお答えしたい。
 (1)は憲法9条だけで日本は戦争を仕掛けられたり巻き込まれたりしないという根拠になるかだ。
 日本は戦争の反省の上に立って、戦争放棄と戦力の不保持をうたった平和憲法を持った。この精神を体して各国と友好関係を築いてきたおかげで、70年以上も平和を維持できたと思う。
 (2)日本が戦争をせずにこられたのは、日米安保や自衛隊のおかげかどうかについて。
 護憲派も安保と自衛隊の役割を否定してはいない。必要な自衛策を用意したうえで、冷静な平和外交を展開すべきである。
 (3)は北朝鮮や中国への抑止力の必要性。
 安全保障では抑止と安心供与が車の両輪。抑止はタカ、安心供与はハトに例えうる。タカを飼う(軍事力を強化する)のは高くつくが、ハトの政策手段は無限で、知恵の出しどころ。「東アジア共同体」のような関係国が協力する枠組み作りで、覇権主義的行動を緩和できると思う。

 ■テロや紛争の流れに抗したい
    大学生 男性(東京都 22)
 護憲派と改憲派の意見交換、ひじょうに素晴らしいアイデアだと思います。
 (1)9条だけでは、戦争に巻き込まれない保証にはなりません。しかし、自らは戦争をしない、戦力を持たないと宣言するのは、相手を攻撃しないと宣言するのと同じです。だとすれば、戦争に巻き込まれる可能性はかなり低くなるのではないでしょうか。
 (2)日本が70年以上も戦争をせずにこられたのは、米国が同盟国として後ろについていたことが大きいでしょう。また日本が武力を持たず、対話による平和外交を続けてきた結果とも言えます。
 (3)近隣には、国際法に反した行動をとる国々があります。しかし抑止力として軍事力を持てば、その国々の危機感をあおり、さらに強硬な行動をとらせることにつながりませんか。力で抑えつけることは、戦争の引き金になるように感じます。テロや紛争の増加など、世界平和は遠のいているように思えます。しかし平和憲法を持つ日本こそが、この流れに逆らうべきではないでしょうか。

 ■安保法制で平和、改憲は不要
    公務員 男性(大阪府 57)
 護憲派への質問に答える。
 (1)は、成立した安全保障法制によって、憲法の範囲内で日本の防衛体制が強化されることになっている。ゆえに私は日本が世界に誇れる憲法は変える必要はないと考える。ここでもし改憲を叫ぶなら、安保法制を成立させた意味はない。安保法制で日米同盟はより強化されたため、他国は容易に日本に手を出せないだろう。
 (2)については、日本が戦争を仕掛けられなかったのは日米安保体制があったからだ。戦争放棄を叫ぶだけでは、野心の強い国にとって日本は攻めやすいだけである。
 (3)は、一定の軍事力を持っていても、核武装した国と戦って勝てるはずがない。大事なのは、日米同盟を強化し、万が一、日本が攻撃を受けたときに、防衛できる態勢を整えることだ。
 日本の平和は安保法制でよりゆるぎないものになった。政争にあおられてか、安保法制を「戦争法」などと呼ぶ人たちがいるのは残念だ。自らの勉強不足をさらけだすことにならないだろうか。

 ■隣国からの攻撃、考えられない
    作家 男性(愛知県 60)
 私も意見を述べさせてもらいたいと思います。
 (1)戦争は「このままでは他国から攻められるから、その前に攻撃しなければならない」として始められることが多いもの。攻撃を放棄している国が攻められることはあり得ません。
 (2)平和を維持できたのは、憲法で戦争を放棄したから。在日米軍は、日本にある基地を自国の戦略に利用してきただけです。
 (3)北朝鮮の核・ミサイル開発など様々な行動は、自国存続のためのものでしょう。中国の東シナ海などでの活動も、彼らからすれば主権を持つ海域のパトロールをしているだけです。日本への攻撃など考えられません。
 近隣国の脅威を針小棒大に言い立て、これを理由として憲法を改正する動きのほうが心配です。自民党の改憲草案をみると、有事の際に政府の権限を強化する緊急事態条項の導入など、全体に個人の人権、自由を制限しようとしていると感じます。日本の平和にとっては、そうした動きのほうが大きな脅威であるといえます。

 ◆担当者から
 護憲派と改憲派の間で、キャッチボールのように議論を進めたい。そういう思いから、最初のボールとなる「改憲派」の方の投稿を8月に掲載しました。
 200通近い反響があり、2週にわたって8人の護憲派の方の投稿を紹介しました。9条の意義だけでなく、その理念を具体化させる外交があってこそ平和が保てるといった意見が寄せられました。冷戦後の世界情勢を踏まえた議論の必要性を訴える方、文民統制の大切さを主張する方もいました。
 改憲派への「逆質問」もありました。「9条を改めれば平和が維持できるという根拠はあるのか」といった質問です。安全保障に関して「沖縄の犠牲の上に成り立つ安保体制でよいのか」「集団的自衛権の名の下に自衛隊が海外で活動を広げれば、結果として戦争やテロのリスクを高めないか」という問いかけもありました。
 これらの逆質問への回答も含め、「改憲派」の方々からのご意見をお待ちしています。護憲派の方も、引き続き考えをお寄せください。(山本晃一)」)
2016/09/21付「朝日新聞」p16「声」より)

(1)についてだが、先日のコメントにも書いたが(ここ)、この事実をどう捉えるか?
「欧州で第二次大戦が勃発した当初、ドイツの周辺国は選択を迫られた。ドイツ側に付くか否か、それとも中立を守るか、である。このうち、中立を守ろうとしたオランダやベルギー、ノルウェーなどの西欧・北欧諸国はドイツ軍によって軒並み中立を踏み潰され、占領下に置かれた。他の西欧諸国のうち、中立を堅持できたのはスイスとスウェーデン、ポルトガルだけである(スペインは枢軸側についた中立だったが、東部戦線に義勇兵を派遣している)。
 しかしドイツ軍は戦時中、ひそかにスイスとスウェーデンへの侵攻計画も立案していた。中立という概念が、大国の都合から見ればいかに脆いかを示すエピソードといえる。」(「
徹底図解 第二次世界大戦」P82より)」

つまり、幾ら中立を宣言していても、自衛力の無い国は、いとも簡単に侵略されてしまうという事実。このことからも自衛力はもっていないといけない。

ふと、スイスに徴兵制があることを思い出して、ググってみた。するとこんな記事が見つかった。
スイス、徴兵制廃止を否決 国民投票、伝統を支持
スイスで22日、男性への徴兵制を廃止すべきかどうかを問う国民投票が行われ、地元メディアによると、廃止は反対多数で否決されることが確実となった。
 国民皆兵制の武装中立を維持するスイスでは近年、「他国から現実の脅威にさらされているわけではなく金の無駄遣いだ」として徴兵制の廃止を求める声が出ているが、国民の多くが伝統的な制度を支持した形だ。
 政府も国防能力を脅かすとして徴兵制廃止に反対を表明していた。
 地元メディアによると、徴兵が終わった後も予備役のため銃を自宅に保管できることから、銃規制をめぐる議論も活発化している。2011年には徴兵が終わった後も自宅に銃を保管できる制度を見直すかどうかを問う国民投票が行われ、反対多数で否決された。(共同)」(
2013/9/23「産経ニュース」ここより)

「・・・結果は有権者の73%という圧倒的多数が徴兵制の廃止に反対し、26州すべてで廃止反対派が勝利。今後も一部の職業軍人ではなく、国民全体で国防を担うとの意思が示された。・・・」(「ニューズウィーク」ここより)

武装独立と国民皆兵制を国防戦略の基本に据えているスイス・・・・。こんな記事もあった。
「経済的な効果や軍事的な効率性から、軍隊を職業軍人に限定すれば、スイスが「北大西洋条約機構(NATO)に加盟することになってしまう」危険性があるというのである。日本の文脈で言い直せば、集団的自衛権に取り込まれる危険性があるということだ。
つまり、スイスは、集団的自衛権を拒否するために、市民からなる軍隊の基礎となる徴兵を求めているということである。
 他国との軍事同盟を排除して、自国防衛を貫徹させるためには、市民が自らが市民社会の防衛の責務を担うために、徴兵を必要とするという考え方である。」(
ここより)

自国の平和は、天から降ってくる訳ではない。それなりの努力が必要だということ。
スイスは、徴兵制で自国を守ることを選択。そして日本は・・・・?

このテーマは奥が深い。性善説で答えるのは簡単だが、性悪説(第二次大戦のドイツの侵略など)で考えると、あまりキレイな解は浮かばない。
重たいテーマ・・・。色々な視点から考えたいもの・・・。

(関連記事)
「改憲派から護憲派へ3点質問」 

160922kenka <付録>「ボケて(bokete)」より

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コメント

自分の意見はまだ書けませんが、
良い記事を紹介してくださり、
ありがとうございます。

前回のはコピーしてデスクトップに置いていて、
気持ちが落ち着いているときに読み返して
自分の考えをまとめようと
思っているのですが、
まだ取り組めずにいました。

【エムズの片割れより】
実は自分も、考え方がまとまっていません。理想と現実とのはざまで、思いあぐねています。

投稿: Tamakist | 2016年9月23日 (金) 15:50

今日は第五福竜丸で被爆した久保山愛吉さんの命日だそうです。テレビで焼津の反核を訴える行進をみました。いつもなら「原爆許すまじ」の歌が流れるのですが、歌われたとは思いますが、テレビでは聞こえませんでした。もうこの歌を知っている人も少ないでしょうね。
改憲をして膨大な軍備費を注ぎ込んでも、戦争に勝つとは限りません。世界中が戦争ごっこに夢中になれば地球はおしまいですね。いかに戦争を避けるかに力を注げば良いものを、人間は愚かとしか言いようがありません。宗教も教育も何の役にも立たないように私には思われます。でも、世界中の教育者が人を殺すことは悪いと教えればと、多少の希望は持っているのですが、夢物語でしょうか。

【エムズの片割れより】
戦争は、人類誕生以来の歴史があるそうですね。そう言えば、生物は全て(生きるために)戦っていますね。
でも人間は欲のために戦っています。結局人間は、そこらの動物以下?
人間だけは、もう少し頭が良いかと勘違いしていました。

投稿: 白萩 | 2016年9月23日 (金) 21:57

>人間だけは、もう少し頭が良いかと勘違いしていました。
http://www4.nhk.or.jp/tokuho/x/2016-09-23/21/20841/1503021/
この回の中で出ていた絵本作家、かこさとしさんの言葉が印象的でした。
「人間は動物の中で一番社会性があるのならば、なぜ戦争や紛争が頻発するのか」
確かに、本当に賢ければ、戦争せずに考えて解決できるはずですからね。

投稿: マッノ | 2016年9月25日 (日) 23:29

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