「監視国家」にひた走る日本
今日(2016/08/04)の朝日の夕刊を見ていたら「素粒子」の「こんなところで何をにらんでいたか。警察のカメラが選挙運動拠点の労組の建物を。ここまで来ている監視社会」という言葉が目に入った。
昨日報道された、ニュースだ。
「大分県警別府署 隠しカメラ、「民進党」関連建物敷地内に
参院選の選挙期間中に設置 人の出入りなど録画
7月10日に投開票された参院選大分選挙区で当選した民進党現職らの支援団体が入居する大分県別府市の建物の敷地内に、同県警別府署員が選挙期間中、隠しカメラを設置し、人の出入りなどを録画していたことが、3日分かった。カメラの設置は無許可で、建造物侵入罪などに該当する可能性があり、県警の捜査手法に批判の声が出るのは必至だ。
県警や関係者によると、隠しカメラが設置されていたのは、別府市南荘園町の別府地区労働福祉会館。連合大分の東部地域協議会や別府地区平和運動センターなどが入居しており、参院選の際には大分選挙区で立候補した民進党現職の足立信也氏(59)や、比例代表に出馬した社民党の吉田忠智党首(60)の支援拠点になっていた。
カメラは参院選公示前の6月18日深夜から敷地内に2台設置され、同会館の玄関と駐車場の出入りを録画していたとみられる。公示翌日の同23日、敷地内で草刈りをしていた別の施設の職員が発見した。1台は敷地内の斜面に、もう1台は木の幹にくくりつけられていたという。
内蔵のSDカードを確認したところ、別府署員がカメラを設置する様子も映っていたため、同会館の関係者が同署に連絡。署幹部が謝罪に訪れ、同24日にカメラを撤去したという。県警によると、カメラを仕掛けたのは別府署刑事課の署員2人。同署が設置を決め、場所も同署で判断したという。設置した署員は「雑草地だったので、(同会館の)管理地だとは思わなかった」と話したという。
県警は「個別の事案について、特定の人物の動向を把握するためにカメラを設置した。対象者が誰かは言えない。不特定多数を対象にしていたわけではない」と説明。「刑法上の処置が必要なら厳格に対応する。調査がいつまでかかるかは分からず、公表や処分の必要性はその後判断する」とした。捜査上のカメラの設置は警察署の判断でできるため、県警本部に設置の報告は上がっておらず、過去に同様の問題が報告されたこともないという。
大分県内の野党関係者は「無許可で監視カメラを設置するなど言語道断で、許されない。選挙活動への不当な介入だ」と話す。
大分県警の小代義之刑事部長は3日、「捜査活動の一環としてカメラを設置したが、他人の管理する敷地内に無断で立ち入ったのは不適切な行為であり、関係者におわび申し上げます。今後は適切な捜査について指導を徹底します」とのコメントを発表した。
参院選大分選挙区では、民進、共産、社民の野党3党が支援した足立氏が、1090票差という大接戦の末に自民党の新人候補を振り切って3選。吉田党首は比例で落選した。【西嶋正法、田畠広景、大島透】」(2016/08/03付「毎日新聞」ここより)
昔は刑事が張り込みをやった。それが今はカメラだ。しかも、対象が犯罪の容疑者ではなく、選挙活動中の労組の出入りの人だという。昔の赤狩りを彷彿とさせる事件。
また先日、こんな記事もあった。
「(耕論)通信傍受の拡大
批判の渦の中、通信傍受法(盗聴法)ができて17年たち、盗みや詐欺など身近な犯罪も対象になる。通信の秘密と背中合わせの捜査手法の拡大。どんな社会につながる道なのか。
■いきつく先は「監視国家」 青木理さん(ジャーナリスト)
通信傍受法(盗聴法)が成立したのは1999年のことです。世論の反対や不安は根強く、野党やメディアが強く批判し、与党の公明党にも慎重論がありました。
そのため、対象犯罪を暴力団などの組織が絡む組織的殺人、薬物・銃器犯罪など四つの類型に限定し、実施は通信会社の施設でその社員の立ち会いを義務づける、それなりに制約のある仕組みになりました。
当時、共同通信記者としてこの問題を取材していましたが、捜査当局がねらっていたのはもっと強力な盗聴法でした。それがついに実現したのが、今回の法改正なのです。
改正の最も大きな問題は、盗聴への通信会社社員の立ち会いが不要になり、裁判所の令状さえあれば、警察の施設内で盗聴できるようになってしまう点でしょう。心理的な歯止めがなくなり、外部からのチェックもきかなくなりかねません。
しかも対象犯罪が傷害、窃盗、詐欺といった、より一般的な犯罪に広げられた。友人や知人がそうした嫌疑をかけられ、組織性を疑われれば、ごくふつうの市民の通話も盗聴されてしまうのです。 かつて違法な盗聴に手を染め、いまもそれを認めない公安警察は大喜びでしょう。監視対象者が軽微な傷害や窃盗をして、それが組織的に行われたという疑いをかけるだけで正々堂々と盗聴できるのです。冷戦終結後は自らの組織の存在感を維持するため、与野党を問わない政治関連の情報収集にまで手を広げているようですが、その手段にも悪用されかねません。
これを許したのが、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件などの不祥事に端を発した刑事司法改革だったのはあまりに皮肉です。警察と法務・検察は、一部の事件で取り調べを可視化(録音・録画)することと引き換えに、盗聴法の強化と、これも念願の司法取引なども合わせて実現させました。したたかというより、「火事場泥棒」とでもいうべきです。
取り調べの可視化とセットとなったためか、かねて盗聴法に批判的だった野党や日本弁護士連合会、メディアも真っ向から批判せず、問題点の指摘さえしませんでした。
かつてのような大きな批判もないまま、このように問題の多い法改正がされたのは、日本社会全体に自由や人権、プライバシーの保護より、治安の維持を優先させる「安心・安全」志向が強まっていることも大きいと思います。
お上に任せておけば安心という発想ですが、そのいきつく先に待っているのは自由もプライバシーも制限された「監視国家」です。後から振り返ると「あれが転換点だった」ということになるかもしれません。(聞き手・山口栄二)
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あおきおさむ 66年生まれ。共同通信社記者を経て、06年にフリーに。著書に「日本の公安警察」、「ルポ 国家権力」。」(2016/07/21付「朝日新聞」p15より)
昔、自分が準現役の時、あるキャリアから、口の堅い人材の派遣を要請された。それで、社内で一番の堅物、つまり応用が利かないので有名な男を派遣した。業務は、警察などから要請される、携帯電話の位置情報確認などのキャリアとしての窓口・受付・連絡。
案の定、その男から実際の業務についての話は一切聞けなかった。厳格に秘密を守った結果。
そうなのだ、もうこの仕事は必要なくなった。警察が自分たちだけで携帯の位置情報、通話内容を知ることが出来る・・・。
日本はあらゆる所で、国家権力が個人の情報を捉える動きが加速している。街角の監視カメラから、携帯電話による個人の行動の記録、そしてマイナンバーカードによる財産の把握・・・
既に銀行や証券会社では、マイナンバーの登録が口座開設や取り引きの必須条件になっている。
だんだんと当たり前になっていく国家による個人の管理。
そして、それらの恐ろしさが、日常の中で段々とマヒしつつある我々一般国民・・・。
2年前に書いたフランク・パブロフの「茶色の朝」(ここ)を、また思い出した。
マヒが一番怖い。後で、我が家でも、家の周辺に監視カメラが設置されていないか、見回ることにしよう・・・。
●メモ:カウント~920万
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コメント
何だか戦争前の昔に少しずづ近づいてくるような雰囲気が広まってきていますね。最近とても気になる言葉があります。平和憲法を擁護しようとする人たちを自虐と言った若い女性の防衛大臣の言葉です。戦争も知らず、あの焼け野原から必死で働き、2度とこんなみじめな思いをしないようにと、平和を語る人たちの事を、ぬくぬく育った戦争を知らない大臣の傲慢な言葉にあぜんとしました。勝ち目のない戦争を始め殆ど都市と言う都市が壊滅状態になっているのに自分たちのメンツの為に戦争を終わらせなかった軍人に罪はないのか問いたいです。私の両親も戦争がなかったら早死にすることはなかったでしょう。家も家財も全て戦火に焼かれ、何の保証もなく必死で働いて平和を希求する人を自虐と呼ぶのは傲慢と言う以外言葉がありません。あの大臣の顔を私は2度と見たくありません。
【エムズの片割れより】
同感です。今日の広島市長の平和宣言に「絶対悪」という表現がありました。人を殺すのは、理屈抜きで絶対悪。戦争は絶対悪。
人を殺しても良いと言う理屈を考える政治家は、不要です。
投稿: 白萩 | 2016年8月 6日 (土) 14:10
エムズさま
国家権力が、だんだんと恐ろしい方向に舵取りし始めているように感じているのは、私だけではありませんね。
江戸川憲法を読む会が発行された、目の前の危機「緊急事態条項の恐怖」のパンフレットを見て、マスコミ情報だけではダメだということを強く感じています。
白萩様のコメントをみて、パンフレットに載っていた文を転記させて下さい。
秘密警察(ゲシュタポ)を創設したゲーリングは、「国民を戦争に駆り立てる秘訣について、こう言っています。
「簡単なことだ。自分達が外国から攻撃されていると説明するだけでいい。そして、平和主義者については、彼らは愛国心がなく国家を危険にさらす人々だと公然と非難すればいいだけのことだ。この方法はどの国でも同じように通用するものだ。」
【エムズの片割れより】
ご紹介のサイトを見ました。
https://nagaikaow.wordpress.com/2016/07/02/1245/
自分も1冊手に入れようかな・・・
投稿: 風雅 | 2016年8月 6日 (土) 17:38
エムズさま
現役時代のお話 とても興味深く、しかし 怒りを感じながら読ませていただきました。
そして 今も たくさんの人が 疑問を感じながらだけども声を上げられずそれぞれの現場でに黒い仕事に従事させられているのでしょう。
しかし かのスノーデンさんはたった一人で「告発」を決意しました。そのことに驚きながら ただ尊敬します。
8月3日 私は 作家 澤地 久枝さんのよびかけで 国会前の「安倍政治を許さない」というスタンデイング・アピールに参加してきました。朝4時半に自宅を出て7時間かかって国会前にたどり着きました。 小さな集まりですから
澤地さんにも直接お話が出来て 4月に 大阪城公園で反戦川柳作家 鶴 彬の句碑の前で
一人でアピールしてきたことなどもお伝えしました。
そこから 千鳥ヶ淵墓苑まで歩いて参拝してきました。真夏の東京の暑さを体感してきました。
投稿: todo | 2016年8月 9日 (火) 20:41
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160814-00010001-bfj-pol
「監視」とは少し違うかもしれませんが、こんな記事を。
大本営発表の当初は、むしろ正確な情報を出していたんですね。
それは知らなかったなぁ・・・
【エムズの片割れより】
なかなか面白い記事ですね。
投稿: マッノ | 2016年8月14日 (日) 22:30