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2016年5月26日 (木)

アフリカ・援助トラクターを「売る」

最近凝っているNHKラジオ第2「カルチャーラジオ 歴史再発見 アフリカは今~カオスと希望と 松本仁一」。
先日放送された「第八回 農業への無策~飢餓のアフリカ」の中で、こんなエピソードが紹介されていた。

<NHKラジオ「アフリカは今⑧農業への無策」より>

援助トラクターを「売る」

 ただの援助というのは、よほど先まで見通して実施しないと悪影響しか生み出さない。しかしちょっと頭を働かせると、すばらしい結果を生み出すようになる。
 85年、イタリア政府が西アフリカのガーナに、トラクター100台の援助を申し出た。総額で230万ドル分だ。イタリア政府はそれをガーナ政府に渡すことをせず、国連食糧農業機関(FAO)に渡して配分を任せた。
 FAOのガーナ事務所には知恵者の職員がいた。「ただのトラクター」はだれも手入れしようとせず、一年足らずで壊れてしまうケースを彼は多く見ていた。彼はイタリア政府に「トラクターを70台に減らしてほしい」と申し入れる。残り30台分の予算で、整備工場を三か所に作ってほしい。それとガーナ人の優秀な若者を送るから、半年間、トラクターの整備技術を教育してほしい――。その上で職員は、トラクターが欲しいと希望した70の地区に対し、市価の三分の一の値段でトラクターを売ったのである。払いは10年ローン、作物の物納とした。
 それから、教育が終わって帰国したガーナ人整備技術者を各地区に送り、「よく分かるトラクター」という巡回講座を開いた。使ったあとは必ず洗え。こまめに油をさせ。ネジはまず左に回し、カチッといってから右に回せ。おかしいところがあったらすぐに整備工場に連絡しろ……。字が読めない農民にも理解できるごく初歩的なマニュアルを、徹底的に教育した。トラクターは自分たちが買ったものだ。壊れてしまっても、残りのローンは払わなければならない。農民たちは必死になった。毎日きれいに水洗いする。ちょっとおかしいと思うと工場に自転車を飛ばし、「クラッチから変な音がする」「ギアがひっかかる」と報告する。物納されたローンの作物は市場に出され、代金は整備工場の技術者の給料となった。
 同じころ、隣の地域に日本などが100台の「ただのトラクター」を援助した。一年たらずで80台が壊れた。しかしイタリア援助のトラクターはFAOのアイディアのおかげですべて動いており、93年に再訪したときもぴかぴかのままだった。・・・」(
NHKカルチャーラジオ「歴史再発見 アフリカは今~カオスと希望と」テキストP108より)

なかなか含蓄のある話である。これは全てに通じる。
よくテレビで、アフリカで高級医療器具が、ただホコリに埋まっているところを見る。最初は使っていても、壊れたらそれでオワリ。修理することが出来ず、そのうち使い方も忘れ去られる。
結局は、自己満足の結果なのだろう。「オレたちは援助してやった。有り難いと思え」。
しかし使われた税金は、まったくの無駄遣い。
相手の事を真に考えた援助なら、上のFAOのような動きが模範。

ふと、新入社員の頃に担当したソ連向けのシステムのことを思い出した。あるプラントメーカーからの発注で、システムを組む時、照明器具に、ソ連規格のランプが入る事を検討させられた。日本製の照明器具に、日本製のランプ。予備ランプを付ければ、それで良いではないか、と思ったものだが、長く使う器具の消耗品は、現地調達が出来なければダメ。当然の検討だったが、当時はそこまで思い至らなかった。

「援助は相手の事を考えて」はどんな事にも通じる基本中の基本だと、改めて思った。

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コメント

NHKラジオ第2「カルチャーラジオ 歴史再発見 アフリカは今~カオスと希望と 松本仁一」のテキストを一気に読ませていただきました。目からうろこ、驚きの連続でした。もう一度、ゆっくり読ませていただきます。紹介いただき、ありがとうございました。

【エムズの片割れより】
自分もショックでした。目から鱗ですよね。

投稿: かうかう | 2016年9月19日 (月) 22:31

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