柴田元幸訳「現代語訳でよむ日本の憲法」を読む
先日、「英文で読む日本国憲法」(ここ)という記事を書いたが、注文していたその本、『現代語訳でよむ日本の憲法』=柴田元幸・翻訳がやっと届いた。
付録に、現代語訳した憲法の朗読のCDが付いており、それを聞きながら本をめくっていくと、55分で全文が読めてしまう。
それにしても、今更ながら、日本国憲法は短いと感じた。
当然だが、訳は、正文とはニュアンスが異なる。
例えば、この本では、衆議院が代表者会、参議院が評議員会と訳されている。非常に素直に、予断なく英文の憲法を読むと、こうなってくるらしい。
その中から、前文、第9条、そして最近話題になる第99条を聞いてみよう。
<「現代語訳でよむ日本の憲法」柴田元幸・訳より>
これを、正文を眺めながら聞くと、なかなか面白い。
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」
「第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」
「第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」
前に「ジェームス三木の「憲法はまだか」を読んだ」(ここ)という記事を書いた。
もう9年も前である。その時にも感じたが、GHQ草案は短期間に作成された。
この本のP126にある表によると、1945年2月3日にマッカーサーが三原則(天皇を元首とする、戦争を放棄する、封建制度を廃止する)を示し、民政局にGHQ草案の作成を指示し、翌4日に作業班が設置され、2月13日に日本側にGHQ草案が提示されたというから、まさに10日間で草案が出来たことになる。しかし、全文の短さを考えると、そんな乱暴な作業だったとも思えない。もちろん手本の欧米の憲法もあったわけで・・・
改めて、全文を聞いてみて、第102条が気になった。
「第百二条 この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。」
つまり、「第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。」となっているが、最初の任期3年の人をどう決めたのだろうと・・・
Wikiによると「第1回参議院議員通常選挙」の項にこうある。
「この選挙は、日本国憲法の制定によって新しく設置された参議院における最初の選挙である。参議院議員の改選規定は日本国憲法第46条に定められているが、この選挙では第1期の参議院議員を選出したため、日本国憲法第102条の定めにより全議席の選出が行われ、当選者を当選順位に基づいて上位当選者と下位当選者の125人ずつ2つのグループに分けた。上位当選者の任期は規定どおりの6年として第3回参議院議員通常選挙における改選議席、下位当選者の任期は3年として第2回参議院議員通常選挙における改選議席とした。
なお、岐阜県選挙区では、定数2に立候補者が2名しかなく、無投票当選となった。そのため、どちらを上位当選者とするかはくじ引きで決定した。」
ま、そうだろうな・・・
もちろん日本国憲法の正文は日本語だが、世界の人たちは、日本語が分からないため、この公式な英語版を読んでいる。つまり、世界の人たちは、日本の憲法をこう理解している(読んでいる)のだ、という意味で、この訳は面白いと思った。
(英語の分かる人は英語原文(ここ)を味わえば良いが・・・)
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